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2015年のロサンゼルスモーターショーで発表された「Fiat124spider」。こちらはNDロードスターをベースにしたクルマ、いわゆる兄弟車でしたが、2019年の生産を持って販売終了のアナウンスがありました。
販売終了の理由は
既に、欧州のFiatサイトでは「Fiat124spider」「Abarth124spider」ともに表示されない国もあります。
実際、124シリーズは利益の出ていないモデルではないようです。しかし、販売終了の大きな要因は(他メーカーでも)急務な対応が課せられている環境規制(WLTP排ガス規制)です。搭載されているマルチエア・ターボエンジンはフィアットグループで長年使われ続けているユニットですが、さらに厳しい排ガス規制に対応する改良は、費用対効果が見合わないと判断されたようです。
同社CEOのインタビューによると「124の市場は非常にニッチであるが、我々に取って有益なビジネスである。しかし、フィアットの将来において特に重要ではない」と語っているようです。
実際、専用スポーツカーよりも「500(チンクチェント)」シリーズがヒットしているので、ホットハッチバージョンも含め、Fiatはこちらの路線でブランド構築を図るようです。なお、500シリーズは2021年にフルモデルチェンジが予定されています。
Fiat124spiderを振り返る
NDロードスターが開発されていると噂された2012年、小型スポーツカーをロードスターベースで提供する【アルファロメオとの協業プログラム】がプレスリリースされました。実際、スポーツカー総本山の欧州が日本のロードスターを指名したことは、衝撃的なビックニュースでした。下記、当時の私の「みんカラ」ブログです。
寝耳に水というか、喜ばしいことなのか。フォードと関係が薄れていたマツダが選んだパートナーはフィアットですか・・・フィアットといったら、個人的には家族が乗っていたプントとか、ロードスターのライバルだった(?)バルケッタを思い出しますが、今回の提携ブランドはアルファロメオ。
次期MX-5・・・つまりNDロードスター(仮称)と、フィアットの2座オープンが兄弟車になるそうです。生産開始は2015年ってことは、3年後です。内外装の差別化も図るそうですが、何よりも最大の違いは兄弟車でも違うエンジンを載せることになるそうです。(ちなみに生産はマツダの工場になるそう)
次期ロードスターは超軽量化されるとか、エンジンはスカイアクティブのテンゴーになるとか噂は多いですが、NCまでこだわり抜いたライトウェイトという軸がブレないことを祈ったりしますが、もはや4代目になって迷走することもないですかね・・・
どちらにしましても、開発中のアナウンスだったNDが、ほぼ発売決定になったことは喜ばしいです!なによりヨーロッパの名門ブランドがロードスターを認めたことが何よりも驚きです。マツダ、やったね!
2013年1月18日
マツダ株式会社
フィアットグループオートモービルズ
マツダとフィアット、アルファ ロメオ車の生産に向けた事業契約を締結
マツダ株式会社(以下、マツダ)とフィアット グループ オートモービルズ(以下、フィアット)は、2012年5 月23 日に合同発表した協業に関して、本日、正式に事業契約を締結したことを発表しました。これに伴い、マツダは2015 年よりフィアット傘下のアルファ ロメオ向けオープン2 シータースポーツカーをマツダの本社工場で生産します。
アルファ ロメオ向けの新商品は、グローバル市場をターゲットとして、次期「マツダ ロードスター(海外名:Mazda MX-5)」のアーキテクチャをベースに開発されます。この合意によりマツダとフィアットは独自のデザインでそれぞれのブランドを代表するFR アーキテクチャの2 シーターオープンカーを導入することになります。また、それぞれの商品は独自のエンジンを搭載します。
この契約締結により、マツダは、オープン2 シータースポーツカーの開発および生産効率の向上を目指します。また、フィアットとの協業により、このセグメントの活性化への貢献も期待しています。フィアットは、この協力関係によって伝統あるアルファ ロメオの2 シーターオープンカーに最新技術を通じてモダンなテイストを吹き込んだ商品を提供できるようになり、同ブランドがすでに公表している2016年の目標達成を促進できるようになります。
以 上
実際、本件において2010年にアルファロメオから発表されていたピニンファリーナデザインの「2uettottanta(デュエットタンタ)」がついに市販化されるのでは・・・と、期待値が高まりました。
しかしアルファロメオのブランド方針転換でこの企画は破局、紆余曲折を経て親会社のフィアット・ブランドから「Fiat124spider」としてデビューすることになりました。
実際「NDロードスターになる予定だったもの」自体も2008年のリーマンショックにより白紙撤回されており、この協業プログラムにより開発の見通しが立ったという背景があります。NDロードスターのエンジンルームに余裕があるのは、欧米の「2リッタースカイアクティブ」ではなく、フィアットの「マルチエア・エンジン」を置くマージンのためという噂さえ聞こえてきました。(そのせいでNDロードスターの着座位置がリア寄りになったとか・・・)
そしてついに発表された実車は、オリジナル・スパイダー50周年記念モデルという位置付けで、イタリアっぽいエクステリアをまとって登場しました。
Fiat124spiderのスペック
エンジンは1.4リッター・マルチエアエンジン。4気筒ターボなので、近年のトレンドであるダウンサイジング・ターボです。馬力は160ps、トルクが25.4kgmなので、NDロードスターの2リッターエンジン(※当時)よりもスペックは上になります。(ちなみに1.5NDは131ps、15.3kgm、初期型2.0NDは155ps、20.0Kgm)
注目の車両重量はMTが1,105kg、ATは1,123kgになります。1.5リッターNDロードスターと比較すると70〜80kgほどの重量増ですね。(2リッターNDロードスターだとプラス40kg)。ホイールベースはNDロードスターと同一ですが、GT(グランドツーリング)寄りのトルクでも走れるセッティングです。
ボディサイズは4,055mm×1,740mm×1,240mm。対NDロードスターで(+140mm、+5mm、+2.5mm)になります。前後オーバーハングが増しているので、トランク容量もアップしています(+8.5リッター)。ホイールは16インチと17インチ(グレードによるらしい)ともに4穴です。
インテリアは、マツダコネクトまで含めてNDロードスターとほぼ同一です。イタリアにも認められるほど完成度が高いということでしょうか。デビュー当時からサドルタン内装などが設定され、日本ではマイナーチェンジで府フォローしていくことになります。
そして注目のボディカラー。デビュー時は全7色設定で、ソリッド赤、ソリッド白、黒メタリック、グレーメタリック(銀)、ダークグレーメタリック、ブロンズメタリック、アズールメタリック(青) だそうです。なんと、NDロードスターで待望されていた「スカッとする青」が存在していました。
そして2019年現在は9色設定。何気に純色の「赤」は広島塗装(現行マツダ車)では珍しい色なんですよね。
NDロードスターの兄弟車として
サイドビューの写真でNDロードスターと比較してみます。
分かりやすいのはオーバーハングの差ですが、ヘッドライトの位置とトランクの容量アップで124spiderの方が歴代ロードスター(NA/NB/NC)に近しいプロポーションです。ちなみにサイドマーカーと幌はNDロードスターと互換性があります。
ちなみに、こちらが偉大なる初代「Fiat124 Sport Spyder(1966)」です。アフォータブル・オープンカーのオリジナル世代のひとつで、このような偉大な先輩がいたからこそ、今のMX−5が存在するのです。その現代版を日本車が担えたのは嬉しいものです。
124spiderがあったからこそ、コストをかけて開発できた噂もあるNDロードスター。広島で作られるイタリア車は今年いっぱいで終了ですが、10年後、20年後はどのような評価になっているのか・・・思いを馳せてしまいます。
アバルト124スパイダーの純正オプションマフラー「レコード・モンツァ」は車検非対応とか、国内販売でもなかなか攻めてくれました。
また、すでに開発が始まっているNE型ロードスター(仮称)は、トヨタとの協業プログラムも噂されています。ハチロクのコンバーチブルはデビュー当時からカタログにまで登場予定が示唆されていましたが、NDロードスターの完成度を見て白紙撤回したなんて話もありますからね(S-FRも同様)。
トヨタ版ロードスターが実現すると、いよいよもってロードスターの継続は盤石なものになりますね・・・
<追記>
2020年9月現在で124系の生産は終了し、在庫のみの注文になるそうです。新車購入をご検討される方は、お早めに!
なお、124スパイダー系の累計生産台数は45,532台、国内販売台数は2,688台になるそうです。
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