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2001年の東京オートサロンで発表された「ロードスターMPS」。当時のマツダは、事実上の新車が2002年の「アテンザ」まで待たなければならなかった中、ラインナップ拡充ためにエボリューションモデルの要望が市場にあるのか、反応を見ていた側面があると思われます。
MPSシリーズの背景
クルマの分かりやすいヒエラルキーは「馬力」です。
21世紀当初の国産ハイパワーモデルはGT-R、スープラ、NSXを筆頭にランサーエボリューションやインプレッサなどの280馬力メンバーが花開いた時代。
一方、マツダRX-7はハイパワー化を達成足したものの生産終了が控えており、残ったロードスターはオープンカーのキャラが被っていた、ホンダS2000が話題をさらっている状況でした。つまり、仮にもスポーツカーであるロードスターですから、ハイパワー化の白羽の矢が立つのも当然の流れだったのです。
一方、マツダのチューニング・ブランドといえば「マツダスピード」ですが、かつてルマンを席捲したマツダオート東京をベースにした組織は消滅し、1999年に正式なマツダ内の事業部として再出発を始めました。
そのようななか発表された「MPS(マツダ・パフォーマンス・シリーズ)」は、マツダスピードの名前も控えめながら記載され、その復活の狼煙(のろし)を予感させるものでもありました。
2001/1 「ロードスターMPS」初期コンセプト
「ロードスターMPS」の開発は、当時のプレスリリースによるとおなじみ貴島孝雄主査に加え、マツダスピードグループ商品開発部の立花啓毅氏(※M2シリーズやマツダスポーツカーセッティングの担当で有名)、デザインが田中俊治氏(※NAロードスターのデザイン主査)といった、とてつもなく豪華なメンバーが関わっていました。
しかし、当時の扱いはとても小さく、今ほどマツダ・ロードスターがブランド化していなかった事が伺えます・・・正直、RE雨宮の方が、目立っていました。
さて、気になる「ロードスターMPS」のスペックですが、排気量1839ccの200ps/7000rpm、トルクは20.0kg-m/6000rpmとNAエンジンとしてリッター100馬力を達成するカリカリのパワーユニットを採用しました。F4カテゴリーBPエンジンをチューニングしている・・・とされていますが、走行している写真が残っていないので、あくまで目標値かもしれません。
黄色いボディカラーは「サンバーストイエロー」ではなく、マイカの入ったメタリックイエローで、おそらく海外のNBロードスターで採用されていた「ブレージングイエローパールマイカ」と思われます。
フロントバンパーは一見ノーマルに見えますが開口面積が50%UPされ、慎ましいオーバーフェンダーはサイドステップまで流れる造形になっています。また、分かりづらいですがボンネットも「1006」並にパワーバルジが設けられています。
フロントブレーキはアルミ4ポットキャリパーで5穴、17インチです。大径タイヤはハイパワーのアイコンだったのです。
リアビューはフラップ調整式GTウイングが目立ちます。サイドステップも一見NB後期のオプションパーツと同一に見えますが、よく見ると前後フェンダーアーチに併せたボリュームのある形状へ。また、何気にセンターマフラーです。
リアバンパーも新規造形で、そのままリアフェンダーにまで一体感のある形状です。お気づきかも知れませんが「MPS」のフェンダーはモールになっています。車幅は1700mm以内なので、かろうじて5ナンバーサイズを守っています。
そして、一見ハードトップに見える屋根ですが、実はボディと一体造形になっています。つまり、純然たるクーペとして発表されているのです。なお、屋根にもスリットが設けられていますが本物かは不明です。
インテリアは比較的落ち着いています。バフがけのロールバーやセミバケットシート、そして4点式のシートベルトを装備しています。
そんな訳で、メーカーの威信をかけた素敵なハッタリを垣間見ることができた素敵な仕様ですが、この時点ではあくまでコンセプトの位置付けでした。
2001/5 「マツダスピードロードスター」※NB限定車
なお、初期MPSが発表された時点で「マツダスピードロードスター」は既に企画されていました。マツダスピードブランドのアフターパーツをフル装備して同年の夏にリリースされ、NBロードスターとしては即完売という異例のヒットを飛ばしました。
こうなれば、コンセプトをさらに進化させて市場の反応をみたいというのも頷けます。
2001/9 「MX-5 MPS」
同年9月の欧州フランクフルト・モーターショーにて「MX-5 MPS」が市販化前提という触れ込みで発表されました。
黄色い「ロードスターMPS」と違いエクステリアは一新され、同時期にはすでに発表されていた「初代アテンザ」や「RX-エボルブ(RX-8)」と同じ、アスレティックデザインのラインを拾う造形に進化しています。