市販化前提?ロードスターMPS(MPS-3)

市販化前提?ロードスターMPS(MPS-3)

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2001年9月21日、日経産業新聞にひとつの記事が掲載されました。

高出力エンジンの機種追加?


掲載された記事は、マツダは「ロードスター」に2.0リッターエンジンを搭載した試作モデル「MX-5 MPS」を制作し、量産化の検討に入った・・・という内容でした。

当時、「MX-5 MPS」はフランクフルトショーに参考出品されましたが、高出力エンジンを搭載した機種追加による顧客開拓などを検討する・・・と具体的に記載されれおり、市場動向を探っていたのが改めてわかります。

マツダは「MPS」シリーズを本気で展開しようと考えていたのか、コンセプトカーの割には資料が比較的豊富に揃っているのも特徴です。

 
<報道資料より>
心ときめくドライビングプレジャー“Zoom-Zoom”をオープン・ライトウェイトスポーツにおいて際立たせたハイパフォーマンスバージョン、それが「マツダ ロードスターMPS」。ロードスターをベースに、マツダスピードのレーシングテクノロジーを傾注。性能、機能、デザインをチューンアップし、マツダのダイナミックDNAを特化させました。


フランクフルトショーの後、10月の東京モーターショーに展示された「ロードスターMPS」は、マツダブースに参考出品されていた「初代アテンザ」「RX-8デザインモデル」と同じく、当時のマツダデザインテーマ、アスレチックデザインのテイストを反映させた造形になっていました。

ざっくりいうと、プロミネントフェンダーという足周りを強調したエクステリアが特徴です。

2001 「ロードスターMPS」/「MX-5MPS」


実車を観察するとクルマの方向性が見えてきます。

最初に目に付くのはフロントのエクステリア。専用ヘッドライトから、開口面積を拡大したフェイシアデザインのバンパー。マツダマークの脇にはダクトも開口しています。

サイドにエアバルジが付いているフロントフェンダーも新規造形、オーバーフェンダーは初期コンセプトのモールから、全体を強調した造形に変更されています。ヘッドライトにあわせて車幅を広げたフェンダーも新規に作成しています。


リアをみると初期モデルのGTウイングから現実的なトランクリッド・スポイラーに変更されています。リアバンパー自体も幅を広げた造形に変更され、リアのオーバーフェンダーは鋼板を組み替えるのは厳しいからか、大型モールで対応しているようです。なお、トレッドも拡大されていて(F+50mm、R+60mm)、3ナンバー仕様になっています。


サイドステップは比較的おとなしめな造形になっていますが、前後フェンダーをスムーズに繋いでます。

スペック表を読むと「車高調装備」「大型ブレーキと共に5穴の17インチホイールを採用」とあります。また、固定ルーフだった初期モデルと違いハードトップに変更されていることからも、ベースになるNBロードスターを活かした現実的なモデファイであることが判ります。


また、フロア下にはフロントからリアまで一体となったラダー型のアルミ製レインフォースメントを追加してシャシーの剛性を上げ、中央にはセンター出しマフラーが鎮座しています。


インテリアではブラックの内装色を基本に、ブラックアルマイト仕上げの金属パーツや、ブラック・バックスキンとアルカンターラのコンビネーションを用いたレーシーなデザインで、NBロードスターの「VSコンビネーションA」と近しい方向性になっています。


パワーユニットは自然吸気直列4気筒2.0ℓ BP-VE型。アクセル操作に対するレスポンスと高出力化を実現するため、4連独立スロットルとハイリフトカム設定を採用し、最高出力147kW(200PS)/7,000rpm 、最大トルク196N -m(20.0kgm)/6,000rpmのハイパフォーマンスを実現・・・だそうです。


せっかくなので、NB後期RSとスペック比較をしてみます。「MPS」の全長が短いのは、前後バンパーでオーバーハングを削っているからです。実車では車幅とトレッドの拡大により、数字以上にワイドに見える印象のはずです。なお、このサイズはホイールベース以外はNDロードスターに近しかったりします・・・

しかし、このままではエミッション(排出ガス)とコストの問題があり、対応をおこなうと単純に300万円を超える価格設定になってしまう・・・ということで、市販化は厳しいと経営判断されました。参考までに、登場が控えていたRX-8のベースグレード(210馬力)は240万円に設定されているので、セールス的にも悲惨な結果がみえていたからです。

2002 「ロードスターMPS CLUBMAN」


翌年の東京オートサロンで、より現実に近づけた「MPS」モデルが参考出品されました。

ハードトップは取り外され、サンライトシルバーのボディカラーにNR-Aを彷彿とさせる牽引フックとサイドデカール。また、ホイールは4穴に変更されています。


注目なのはリアビューで、前期型のテールライトに変更されています。これはシンプルなカラーの中にクラシカルなイメージを狙ったものと推定されます。


そして最大の変更はエンジン仕様であり、NB前期1800cc(可変バルブタイミング機構(S-VT)のBP-ZEエンジンのチューニングに変更されており、185psと若干トーンダウンものになりました。

しかしこの後、「ロードスターMPS」が表舞台に登場することは全くなくなりました・・・が、その火が消えることはありませんでした。

2004 「ロードスターターボ」


MPSクラブマンのパワーユニットに近しい仕様の「ロードスターターボ」、海外名「MX-5 MAZDASPEED」が、ついに発売決定したのです。マツダスピードブランドのエボリューションモデル市場投入が、ついに始まるのです。

続きます

市販化が実現したロードスターターボ(MPS-4)

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