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今回はNAロードスターのオーナーからも評価を頂いている、NBロードスターのインテリアに関わるエピソードです。
NBロードスターには開発エンジニアが「あぁ、ロードスターだ!という感覚を残しておきたい。アフターパーツで改善できる部分はあるが、収納や質感はメーカーでしか作りこめない」という言葉を残しています。つまりNBロードスターへフルモデルチェンジするにあたり「質感」の向上がひとつのキーワードになっているのです。
NAロードスターを振り返る
<NA6CE AT>
NAロードスターのインテリアを確認してみると、ところどころ他車種の流用パーツがあり、マツダ乗りにとっては「ネタ探し」が楽しい構成になっています。有名どころではオートザムレビューのメーターとか、RX-7(SA)の灰皿とか・・・
ただ、コンセプトはまとまっていて、シンプルな「丸と直線」で構成される、スポーツカーらしい「茶室のタイトな緊張感」を表現しています。コスモスポーツから続くマツダスポーツカー伝統のT字構成インテリアがベースになっているのもポイントです。
<NA6CE V−Special>
シンプルだからこそメーカーも多様なアレンジを見越しており、「Vスペシャル」のカラーリングはデビュー以前からバリエーション展開を想定していたとの事です。なおダッシュボードが黒いままなのは映り込み防止のためで、マツダ社内規定によるものです。
なお、当時のユーノス役員が自宅にNAロードスターを乗って帰った際、家族から「グローブボックスの隙間から向こうが見える!こんなクルマを売っていいのか!?」と、ツッコまれたそうです。ユーノスは高級車ディーラーを志していましたがお構いなし。イッツ、ライトウェイトスポーツですね。
NBロードスター インテリア・アイディアスケッチ
ここからはNBロードスター開発時のアイディアスケッチを紐解きます。
初代からの継承ということで、基本構成は「T字」「インパネからドアへ続く形状」「丸型ルーバー」というモチーフを引き継ぎ、「Vスペシャル」をイメージしたものから、ボディ同色のパネルのもの、ロールバーが付いているものまで様々な案が生み出されました。
当時は実現せずとも、後年のロードスターで採用されているアイディアも散見できます。
<インテリア A案スケッチ>
最終候補として残ったA案がこちら。
NB独特のエクステリアと同じく「曲線・曲面」を活かしたデザインで、インパネやドアパネルをセパレートしながらも、ブロックごとに連続性を感じる繋がりがあります。ある意味でクセのあるイタリアンスポーツな出立(いでたち)です。
<インテリア B案スケッチ>
こちらは先代から正常進化と謳われたB案です。
大きな特徴は大型のセンタークラスター(DIN+スイッチ)で操作性向上を図っていることと、ルーバーの立体造形によるクラシカル・スポーツなイメージを踏まえながらも、初代の雰囲気を継承していることです。
ちなみに両案とも安全規定対応のため、エアバッグのディティールが入っているのも見逃せません。
インテリア ディティールスケッチ
<ドアトリム スケッチ>
ドアトリムは立体的に魅せていると共に、ドアハンドルの位置を調整しながら収納スペースの確保も行いました。赤内装はイラストのままだと騒がしいですが、NB後期になって一部グレード(RS2や限定車)で「指し色」として実現しています。
<メーターグラフィック スケッチ>
ゼロ指針のメータのこだわりは、トルクがピークになった際に針が真上に来るようになっていることです(1800ccに採用されました)。なお、サブメータの針を逆さま(左右反転)にする案も有りましたが、量産車は初代準拠になりました。
<メーターフード スケッチ>
メーターの文字盤は単純な黒ではなく「ブルー」がかっていて、専用の文字フォントが採用されました。もちろん量産車にも、このままの案が反映されています。
<バケットシート スケッチ>
シートは初代に次いでセミバケット方式を採用しています。
ベースはコンパクトカーのものとされていますが、軽量化に大きく貢献したパーツでした。NAロードスターは「茶室」のイメージに沿ってシートが「畳柄」になっていましたが、NBロードスターではフォーマルなファブリック生地になりました。少々残念ではありますが、これでコストが抑えられるならアリだと思います。
最終クレイモデル
<1/1クレイモデル B案/A案>
こちらが1/1クレイモデルです。実物に落とし込むと、A案(右)はスポーツカーというよりも、セダンとかサルーンのような落ちついた感じであり、丸いルーバーも重たさを感じてしまいます。警告灯ボタン配置などの微妙さは、某H社っぽい・・・
<最終モックアップ B案>
そして更にブラッシュアップされた「B案」がこちらです。
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