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前回に引き続き、NBロードスターをベースにしたキットカーのご紹介です。
キットカーの文化とは
現在、日本国内においてキット状態で輸入したパーツを使って「車両登録」を行うのはハードルがとても高いようです。それは衝突試験などをクリアするため、多くの実験車と分析データを用意する必要があり、現実的には個人の範疇を越えるコストになってしまうからです。
しかし、この状況はお国柄によって違います。米国はカスタマイズ文化という背景があるおかげでその辺が寛容で、比較的自由にキットカーが取り扱われています。レストア作業で普通にFRP外装のフルスクラッチや、他車の大排気量エンジンを積むのをおこないますが、きちんと保険も適用されるそうです。
一方、英国では国内産業の振興のため「年間200キット未満」であれば厳しい規則もなく、ビルダーは製造販売をすることが可能です。完成車と比較すると税金が安くなるメリットがあることから、「自社工場を持つ専門メーカー」から「個人の趣味に近いビルダー」まで、多数の業者が参入しています。
ロータスやTVR、ケーターハムなどは、ビルダーからメーカーにステップアップしたことでも有名です。
だからこそ、ビルダーたちがお手軽な中古価格になっているNB型「Miata(MX-5)」の優秀な(=壊れない)コンパクトなFR素材を活かしたくなるのは当然の流れになります。
今回も、クルマの楽しみ方として「突き抜けた」進化を遂げたキットカーをご紹介します。
MEV Replicar / DBR1(米国)
Made by Mills Extreme Vehicles (MEV)
こちらは1958年に5台のみ制作され、ル・マンなどで活躍した「アストンマーチンDBR1」のレプリカキットです。ドナーは「Miata(1990-2005)」、NA/NBロードスターです。
グラスファイバー製のボディは、オリジナルの図面、写真、測定値から忠実にコピーされ、その下に軽量のフレームシャーシを備えて軽量かつ高い剛性を保ちます。
サブフレームまで含めた下回りは大胆に流用します。この写真を見るとロードスターはホイールベース内にメカが詰まっていることが実感できますね。
ボディカラーはもちろんブリティッシュ・レーシング・グリーン。コークボトルシェイプなスピードスターは「見た目」から速そうでカッコいいです。
CATFISH(米国)
Made by Bauer Limited Production
このクルマも「Miata(1990-2005)」ベースであり、「CATFISH」とは鯰(ナマズ)を指します。まさにビルダー理想のスポーツカーといった感じで、エッジの効いたエクステリアがとても魅力的です。
基本的な構造は、パワートレインと足周りをパイプフレームに組み合わせていきます。外装はFRPですが、キャビンはアルミ隔壁を採用して安全性と剛性を確保します。
スピードスター・ルックの小さなフロントウインドも素敵ですが、なによりドアが存在しない割り切った仕様なので、ダイナミックなキャラクターラインが目を引きます。
ロングノーズ・ショートデッキなプロポーションは「BMW Z4」や「NDロードスター」のバランスにも近しく、素直にカッコいいです。
MX-250(英国)
Made by Tribute Automotive
こちらも「MX-5(1990-2005)」をドナーにしたキットカーです。フルカウル仕様で、魅惑のクーペボディにする事が出来ます。ドアノブに、NBロードスターの名残がありますね。
キット状態を見ると、まさに原寸大のプラモデルでワクワクしてしまいます。余談ですが、このビルダーは「BMW Z3」や「MR-S」をベースにしたフルカウルキットも販売しています。
リアビューは英国車よりも古き良きイタリア車を連想するコーダトロンカです。トランク容量も確保しているようです。
ちなみにオープン仕様は「MX-250C」というネーミングで、ベースのロードスターを生かしてトランクルームが存在しています。
ITARIA2(米国)
Made by SIMPSON DESIGN
こちらは「Miata(1998-2005)」、つまりNBロードスターをベースにしたキットカーです。そのモチーフは「Ferrari 275 GTB」になります。
圧倒的な完成度はキットカーの領域を超え、スポーツカーとしての艶っぽさ、オーラを感じます。なお、こちらは標準モデルの「ITARIA2 GTB」。B(=ベルリネッタ)ということで、固定ハードトップとしたいところですが、モチーフ車へのオマージュとして脱着式ハードトップ仕様になります。
もうひとつのバリエーションが「ITARIA2 GTC」。違いはリアスクリーンの処理で、「GTC」はロードスターRFでも採用されたリアウインドウがバットレス処理になっています。やばいカッコよさです・・・
さらに、もうひとつのクーペボディ「ITARIA2 GTO」といったバリエーションが存在します。
こう見るとNBロードスターの純正サイドミラーやドアノブもデザインに溶け込んでいて、なるほど名前のとおりイタリアンルックであり、所有欲を擽(くすぐ)ります・・・
圧倒的完成度のおかげでキットカーとはいえ、クルマ持ち込みで個別に仕上げる形式でデリバリーされました。
ちなみにこちらのビルダー、NAベースの「Blue Ray3」(写真)や「Manta Ray」と
NCベースの「ITARIA3」などで、これまた圧倒的な完成度を魅せてくれます。
ロードスターという素材の良さ
国内でキットカーを合法的に乗るには、組立済の車体を輸入する手段が有効だそうです。輸入車として適切な手順を踏み、保安基準をクリアすれば新車登録が可能になるのです。
なお、NBロードスターという枠を超えてキットカーを探してみると本当に選り取りみどりで・・・海外における自動車文化の懐の深さを感じずにはいられません。
また、国内に目を向けてみると光岡自動車がビルダーからメーカーになったことが有名です。現在でも販売されている「卑弥呼(※NC/NDロードスターべース」や、かつては「ゼロワン(NAロードスターベース)」が存在しました。
また、近年ではロードスターガレージ社から「トヨタ2000GT」や「ミウラ」のスーパーレプリカ(※NAロードスターベース)が発表されていて、完成度もさる事ながらロードスターという素材の良さも実感せずにはいられません。
ドナーという表現は「素のロードスター」に重きを置くならば、気になる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、趣味車として誕生したロードスターは多くのFun(=愉しさ)を提供してくれる存在です。見て、触って、走って、イジって・・・の究極が、キットカーなのだと思います。
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