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「自動ブレーキ」の義務化は2021年から
一般的に自動ブレーキといわれる衝突被害軽減ブレーキ。
今までは自動車メーカーの思想により性能・機能のバラつきがありましたが、国土交通省から新基準が制定され、2021年11月には新車販売をおこなう全ての国産車に義務化されることになります。
その背景には、安全性能が求められるうえで有効な技術であることと、自動車レギュレーションのベンチマークになっている欧州連合が2020年において義務化を決定していたこと、そして頻繁に報道で目にするシニア層のブレーキ踏み間違い事故・・・つまり、高齢化社会になりつつある国内事情もあるようです。
当初、自動ブレーキを搭載していないことで安全基準(ユーロNCAP)の評価が星ひとつ欠けていたNDロードスターも、2018年7月末のマイナーチェンジにて「サポカーS・ワイド」が実装され、現行車では衝突軽減ブレーキが機能することになっています。
スポーツカーに自動ブレーキ!?
実際、NDロードスターデビュー時に書店に並んでいた「新車ガイドブック」などの「〇×項目」を眺めてみると、マツダに限らずスポーツカーは「×」・・・自動ブレーキが装備されていない事があげられていました。
スポーツカーを乗るユーザーがそこに「×」を付けるのだろうか?と、個人的に疑問に思っていたのですが、マツダユーザー向けのイベントディスカッションに参加した際、ユーザーからは安全基準、とりわけ安全ブレーキの要望(機能強化)が多くあったことに、とても驚きました。
つまり自動ブレーキ・・・「安全性能」は一時期騒がれた燃費(環境対応)とともに最重視される時代になっているのです。
レギュレーション対応がロードスターの歴史
「環境対応」「安全性能」といった観点で振り返ると、素うどんのような約30年前のNAロードスター時代から、エアバッグとABSが義務化されたNBロードスター、サイドエアバッグとDSC、ロールバーが義務化されたNCロードスター、アクティブボンネットが全車装備されたNCロードスター後期、環境対応(燃費改善)のNDロードスターといったモデルチェンジを重ねてきた歴史があります。
シンプルで軽く、そしてアフォータブル(手に入る価格)でありたいライトウェイト・スポーツですら、グローバル展開をするにはレギュレーション対応が必須です。つまり、自動ブレーキが装着されないことがスポーツカーとしてのアイデンティティである、なんていうのは世相を見ていない偏った意見ともいえます。
数字で分析すると、ロードスターの年間販売台数はグローバルで約3万台、約160万台売る全マツダ車からみるとシェアは約2%です。ロードスターはブランドピラーとはいえ、ここに継続販売するためのリソースをかけてくれるのは、メーカーの心意気を感じます。
わずか数%の市場に対し、電子制御はいらんからダイレクトな操作感を重視してくれとか、自動ブレーキやるならブレーキ自体を強化しろ・・・なんていっても、量産効果を鑑みると「付けない方が高い」なんて事が十分考えられます。
話は逸れるかもしれないけれど、パワステレス、パワーウインドウレス、マニュアルトランスミッションの方がコストがかかるなんて昔と違う状況もあるようです。
昔は良かった?今の方が良いこともあります
正常性バイアスという心理学用語にもありますように、ヒトは基本的に「自分にそんなことは起こるはずがない」と自分都合に生きています。運転が上手くなったと錯覚させてくれるロードスターに乗っていれば(特に旧オーナーであれば)「余計な装備は必要ない」と常々感じているはずです(私もそうです)。
しかし、子供や両親(シニア)が運転するのならばどうでしょうか。客観的に考えれると「自動ブレーキ」は圧倒的に欲しい装備という、非常に都合のいい話でもあります。何がいいたいのかというと、自分がいいと思っていても、正しくない事は世の中に沢山あるという認識は大切だという事です。
マツダイベントでブレーキ担当の方と立ち話した際「実際に自動ブレーキの恩恵を受けるのは一生のうちに一度か二度かも知れません。それでも、その万が一に対応するための技術なんです」という言葉に感銘を受けました。
流石に「自動運転で人馬一体のロードスター」が発表されたら迷走しすぎと笑いますけれど、電子制御の介入が少ない旧モデルの「楽しさ」というのは、今の社会では危ういものであるということを、改めて認識しておく必要があるのです。
「昔の方が良かった」はわかるけれど、このように今の方がいい事も多いです。安全なロードスター、素敵ではないですか!
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