NCロードスターの量産工程

NCロードスターの量産工程

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今回はマツダ・ロードスターの第三世代、通称NCロードスターの量産工程をご紹介します。2005年5月17日、マツダ本社宇品第1(U1)工場でNCロードスターは生産を開始しました。

NBロードスターモデル末期の生産にも影響が出た工場火災から一転、同年の4月末に塗装ラインの稼動を再開した宇品第1工場で、NCロードスターはマツダの新型車として初めて量産開始するモデルになりました。なお、量産第1号車は北米向けMX-5でした。

NCロードスター、ボディ塗装


NCロードスターは基本骨格が組まれた後、マツダの誇る「スリー・ウェット・オン塗装技術」(※当時)にて塗装されていきました。これは電着塗装された下塗りに「中塗り」「着色ベース」「クリア」の3層をそれぞれ【乾燥させないまま】塗り重ね、1回の焼き付け乾燥で仕上げる塗装技術です。

従来と比べて工場から発生する揮発性有機化合物(VOC)排出量を45%、CO2排出量を15%削減することができました。

なお、NCロードスターデビュー時のカラー選択は8色+1色(限定車)が可能で、内装色も3色からチョイスできるなど、最も華やかなロードスターでもありました。

NCロードスター パワートレインの組付け


サブフレームに組まれた新型MZRエンジンを、フロント・ダブルウィッシュボーンサスペンションとミッション共に組付けていきます。


ヨー慣性モーメント低減のために、極力余分な空間を作らないようにラジエターは角度をつけて取付けているのがNC型の特徴です。この写真を見ても、基本的にはホイールベース内に重量物を収めていることが分かります。なお、この時点でPPF(パワープラントフレーム)は装着されていません。


塗装済みのボディにフロントのユニットを装着していきます。写真では分かりづらいですが、ヘッドライトなどの灯火類は既に装着されています。また、北米仕様なのでポジション灯のソケットがフォグランプ横にあります。


リアから写真です。リアのサブフレームには新型マルチリンクサスペンションと排気系ユニットが装着されています。


駆動ユニット装着後、パワーユニットとデフを繋ぐ、マツダ・スポーツカー伝統の「パワープラントフレーム(PPF)」を手作業で組付けていきます。


また、NC型はクロスメンバー補強をしっかり行っているのも特徴です。また、この段階では作業性を高めるために、左右のドアを外しています。


そして、組付に間違いがないか確認をしていきます。見えない部分も芸術的な美さ、まさに機能美を誇ります。余談ですが、フジミのNCロードスター・プラモデルでも補強パーツは同じ工程で組付けていきます。

NCロードスター インテリアの組付け


ロードスターのアイデンティティである幌の組付けです。NC型以降はNA/NBからアップデートされ、Z型に幌を畳めるのが大きな特徴になります。手動ではもちろん世界一の構造(※当時)でした。なお、NC型の幌でもNDロードスターと同じく、車内から片手で幌を閉じることが可能です。


この段階では、リアの灯火類は装着されていません。北米仕様なのでペダルも左側にあるのがわかります。また、前方に第二世代DY型「デミオ」の後期型が見えるのも、マツダ混流生産の特徴です。


フロントガラスと内装系を組み込んでいきます。ちなみにこの車両は「Mazda MX-5 3rd Generation Limited」なので、赤いシートが装着されます。


キャビンの組み込みが終えると、最後にドアを組みつけていきます。傷がつかないよう、後付けのパーツにはラッピングが施されています。


電装部品や幌の開閉など、インテリア類をチェックします。この段階「3rd Generation Limited」の特徴であるドアノブやグリルのメッキパーツが装着されています。後ろに見えますのは、日本市場のみに販売されたデミオの兄弟車「ベリーサ」が見えます。


ボンネットを閉じると、見知ったNCロードスターの姿になりました。後ろに見えますのは「マツダスピードアクセラ」ですね。


量産1号車ラインオフ、ぴかぴかのNCロードスター誕生の瞬間です。

「自動車メーカーにとって新車の導入はいつも大切で、わくわくすることであるが、MX-5のようにブランドを代表するクルマの場合はその想いもひとしおである。今日はすべてのマツダ社員にとって、また世界中の自動車エンスージアストの皆さんにとっても素晴らしい日となった。」

 マツダ井巻久一代表取締役社長(当時)

NCロードスターの量産、まとめ


ロードスターの累計生産台数は、2004年12月末までに718,954台にのぼっており、小型オープンスポーツカー生産台数のギネス記録を更新し続け、NCロードスターでは100万台達成も視野に入っていました。しかし、これからという時にリーマンショック(2008年)による世界的な景気低迷がおこり、スポーツカー冬の時代が訪れます。

他の自動車メーカーでは、新たなスポーツカーの開発中止や撤退が行なわれていくなか、マツダ自体もフォード資本の撤退により窮地に立たされます。そこで、今日に至るスカイアクティブ(コモンアーキテクチャ)思想を企画していくと共に、すでに開発をすすめていたNDロードスターの計画を白紙撤回し、ブランドピラーとして「新たなNDロードスター」を作る決断をしています。


その結果、NCロードスターは計画よりも延命されることになり、2005年~2015年と約10年間販売されました。なお、日本国内では約2万台しかデリバリーされていませんが、おかげで熟成を重ねることのできたNCロードスター(MX-5)は海外の評価が高く、累計90万台のデリバリーになりました。

なお、NCロードスターの累計生産台数は231,632台となりました。

次世代に繋がる偉大な一歩を残したNCロードスター。職人の手で愛情を込めて組まれる姿は、カッコ良さをこえて、個人的には感謝の気持ちさえ感じてしまいます。

関連情報→

新世紀のロードスター(NC1ロードスター)

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