鼓動(魂動)ウインカーに思う

鼓動(魂動)ウインカーに思う

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規格ヘッドライト・シールドビーム


かつて、北米の自動車市場においてヘッドライトは約44年間(1940年~1983年)、角形・丸形の共通規格ライトが義務付けられていました。したがって、欧州や日本のメーカー製のクルマもグローバル展開が前提であれば、その規格サイズ(=シールドビーム)を順守していました。


シールドビームは、大型の電球そのままといえるシンプルな構造から信頼性も高く、共通規格としてどこでも「同じもの」が購入でき、大量生産によるコストダウンという大きな利便性がありました。


その反面、構造上レンズの材質がガラスに限定されるため、時代が進むとともに保安基準に適合しなくなっていったことや、大きさや形状が限定されることによるデザインの没個性化・・・といったデメリットがありました。

より個性的なフェイスにするために、「目」が隠れるリトラクタブルヘッドライトが積極採用されていったことも、当時の時代背景にはありました。

その後、高輝度・長寿命なハロゲンバルブが開発され、さらに米国の規格規定も撤廃されたことから、自由なヘッドライトデザインが促進され、シールドビームは徐々に淘汰されていきました。

シールドビームの代替品


シールドビームのクルマがいなくなったことは、もともとメリットとして享受できたことと逆の状況になっていきます。部品メーカーも採算が合わなくなり、ほとんどの企業がシールドビームを始めとした規格サイズの生産を修了していったのです。

ニッチな市場になってしまったとはいえ、放置されたわけではなく救済もされました。シールドビームと外部形状は同一で、バルブのみハロゲンに交換できる「セミ・シールドビーム」や、構造上はシールドビームであってもフィラメントを白熱電球からハロゲンに置き換えた「シールドビーム・ハロゲン」といったものが提供されていったのです。


なお、1989年にデビューしたNAロードスターも純正ヘッドライトはシールドビームが採用されていますが、これらのモデファイパーツを用いたハロゲン化、HID化、LED化などは定番の近代化改修となっています。

なお、NAロードスターデビュー当時は既にシールドビーム規格は撤廃されていましたが、低いノーズのデザインを実現するためリトラクタブル・ヘッドライトが採用されました。ただし、構造上複雑になってしまったこと、保険料を安価にしたいとの観点から、フロントパーツのコストダウンを行うために、当時はまだ安価に流通していたシールドビームの採用を行ったと予想されます。

ただ、顔に表情が欲しいというデザイン意図から、ターンシグナルランプ(ウインカー)にその名残があり、その回答としてNBロードスターの固定ヘッドライト・デザインに繋がっていきます。当時はNBロードスターのように「薄いヘッドランプ」が実現できなかったのです。なお、薄いヘッドランプはMX-3(AZ-3)がマツダ初採用となります。


しかし、温故知新とでもいうのでしょうか。NAロードスターのレストアプランですらメーカーからはレトロフィットが前提で提供されていますが、その一方でオリジナル状態にこだわる(濃い)オーナーも世の中には多くいらっしゃいます。

ただ、かつてはホームセンターなどで安く購入できたシールドビームも、いまや店頭で見かけることはめったになく、かつてより数倍のコストがかかってでも、シールドビーム規格品を探すオーナーがいらっしゃるのです。

現代の目で見ればいかに光量が低くとも、シールドビームが照らすオリジナルの光線に「味」を感じるからでしょう。

流れるウインカーブームから、魂動の「鼓動」ウインカー


時代は進み、クルマの灯火類にはハロゲンよりも光量が高く、小型で、寿命も長いLEDが採用されることは珍しくなくなってきました。かつて、シールドビーム規格撤廃されてハロゲンに変わった際の「デザインの自由度」が上がったことと同じく、LEDによる技術の進歩はヘッドライトデザインの多様性を促進しています。

分かりやすいところでは、C3コルベットをリスペクトしている光岡ロックスターは、リトラクタブルヘッドライトの採用が困難な現代においてサーフェスなフロントデザインを実現するために、メッキバンパーの上に最低限のヘッドランプユニットを埋め込んでいます。LEDはここまで小型化していても、光量は足りるのです。

また、パッと光るLEDの特性を活かして、ドラマチックにヘッドライトを演出する「流れるウインカー」も、高級車アウディから始まり、今や軽自動車にまで採用されています。


そのような中、マツダCX-30ではLEDの特性を利用した面白いアプローチが行われています。

ターンシグナルにも「魂動デザインにつながるような生命感を持たせたい」ということで、生き物の命が脈打っている、まさに「魂動の鼓動」ともいえるウインカー、【ディミングターンシグナル】というユニットが採用されました。

こちらの動画をみてもわかる通り、パッと光ってじわっと消える、ドキドキする鼓動のような点灯パターンを実現させています。おそらく今後のマツダ車全般に採用され、マツダのアイデンティティとなっていくでしょう。

でも、よくよく考えてみると・・・

バルブで全然いい気が・・・


LEDはハロゲンとソケットの互換性があることや、ヘッドライトに使用できる後付けモデルも実現しています。NBロードスターのようなネオクラシック世代であっても、モデファイの定番として定着しつつあります。


その一方で、先の鼓動ウインカーの点灯パターンは・・・よくよく考えると温故知新とでもいうのでしょうか、シールドビームにこだわりたいNAオーナーの気持ちと同じものを感じます。

なぜなら、NBロードスターの純正バルブによるウインカー点灯パターンは、まさに「鼓動」です。鼓動ウインカーにも負けない「味」があると思うのです。


2035年に市販されるクルマはほぼすべてが電気自動車になるといわれています。省電力化のためにLEDはより採用されて、流れるウインカーも鼓動ウインカーも巷にあふれるでしょう。

そんな15年先に、燃費の悪いガソリンエンジンでポワポワ光るオレンジバルブのウインカーのクルマが何台残っているのかは読めませんが、あえてハロゲンバルブが楽しめる今のうちに、素のままの愛車を楽しむのはアリかなぁ思うのでした。

近年は「ゆっくり減光する」LEDバルブも販売されたようです。余計、普通のバルブでいい気が・・・

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ロードスター・レストアプロジェクト備忘録

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