中古ロードスターの探し方<参考>

中古ロードスターの探し方<参考>

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初対面の方に「中古でロードスターが欲しいのですが、歴代(NA〜ND)で何がおススメですか?」と、質問をいただく機会がありました。

これは聞かれて嬉しい質問である反面、一言で回答するのはとても難しい内容です。クルマは安い買い物ではないし、先方の価値観(どんな乗り方がしたいのか)によって伝えたい内容が変るからです。

間違いなくいえるのは、中古車であれば「好みの色とカタチ(世代)に乗れば満足できる」というのがベストな回答だと思っています。

ただ、これではあまりにもざっくりしていて申し訳ないので・・・個人的解釈ではありますが、「伝えたいこと」と「判断ポイント」の個人的見解をお伝えします。

検討段階でおススメしたいこと


2023年現在【ガソリンエンジンのスポーツカー】は軒並み高値傾向になりつつあります。2035年に予定されていた全車EV化は延期されたとはいえ、純粋な内燃機関自動車(ICE)の継続はカーボンフリーの世相において厳しい状況に変わりはありません。

そのうえ、近年のパンデミック(新型コロナ)は全世界の価値観を大いに変えるきっかけになりました。特に趣味の分野におけるマーケットは大きく拡大し、エコカー一辺倒の時代の反動からか、スポーツカーにおいては「乗れなくなる前に楽しもう」と多いに見直されたからです。5代目プリウスがスポーツクーペルックにフルモデルチェンジしたことが、分かりやすいかと思います。

さらに、安全性よりもパフォーマンスを重視した80年~90年代のクルマを原体験としている世代は、当時は厳しかった資金力を持つことができていることと、さらにJDM(Japanese domestic market:日本市場)カーの海外流出といった投機的な動きが、市場高騰の拍車をかけました。

幸い、ロードスターはグローバルカー(MX-5/Miata)なので、NBロードスタークーペやM2シリーズのような希少車ではない限り海外流出は少ないですが、それでも20年前のように「5万円で先輩からユーノスロードスターを買った」みたいな話が復活することはないでしょう。

また、そこに目を付けたお行儀のよくない中古車業者もいるようで、価格相応の価値があるかの判断は、ある程度の審査眼が必要であるという残念な状況にもなってしまいました。しかし、マツダディーラーがNA/NBといった古い世代の中古車を扱うことが少なくなってきたことからも分かる通り、古いロードスターは年式相応に厄介な経年劣化している可能性もあります。

参考→https://mx-5nb.com/2022/10/24/bid-price-analysis/

そこで、購入においてはロードスターのプロショップ・・・とまでは行かずとも、少なくとも自動車愛を感じることができるお店を見つけることが必要になってきました。人間の「勘」は馬鹿にできないもので、直感的に「やばいな」と感じることがあれば、スルーすることも勇気です。

自分でレストアする覚悟があれば別ですが、オークション等でも「安いから」と飛びつく前に、冷静になって個体をチェックすることはとても大切です。見た目やエンジンルームは奇麗でもシャシーはボロボロ・・・なんてことがよくある話になってきました。下からクルマをチェックできればベストですが・・・見せてもらえないならば微妙かも知れません。


また、個人的におススメなのが、ロードスターオーナーに直接話を聞くこと。

知り合いにオーナーがいなければ、一番手っ取り早いのはミーティングに足を運んでみることです。自動車関連のSNSをチェックすれば、意外と近所でも定期開催されています。特に「午前開催」であれば、比較的オトナなオーナーが多い傾向にあります。

一声かけるのに勇気がいる?大丈夫です。

ロードスターのオーナーは愛車のことを聴かれると、嬉しくなって色々教えてくれるはずです。お願いすればシートに座らせてくれるかもしれませんし、何より生の声に勝るものはありません。【自分の気になった】ロードスターのオーナーに、愛車の購入経緯やトラブル経験などを聴いてみると、自分自身の「覚悟」が見えてくるはずです。

もちろん、ロードスターは「二人乗りのオープンカー」なのでそれなりに不便もあります。それば別途まとめてあるので、下記ご参照ください。

参考→https://mx-5nb.com/2022/09/19/inconvenience-of-mx-5/

ロードスターを選ぶ際に、伝えたいこと


ロードスターは基本「走る」ことに機能を全振りしているので、それ以外の機能は「後付け」といっても過言ではありません。また、工業製品なので年式が古ければ古いほど、走行距離に関係なく経年劣化で壊れます。そのうえでお伝えしたいトピックをいくつか紹介します。

・「乗り味」の軸は同じなので、歴代どれに乗っても楽しさは変わらない。
歴代ロードスターは、パワーユニット(エンジン仕様)やセッティングの違いで「速さ」に差はでますが・・・前後重量配分の50:50、重心が低い、使いきれる馬力、ニュートラルステア、感性に訴えるセッティングという、乗り味の「軸」は同一です。したがって、乗って楽しい(=人馬一体)のはどの世代・モデルであっても変わりません。そのうえで・・・

・歴代ロードスターは世代が進むごとに安全性能/快適性が向上する
NA時代にはキーレスが存在しないし、NB後期まで燃費蛍光灯なんて存在しません。ただ、トランクユーティリティはNDよりもNCの方が使い勝手がいいなど、細かい違いも存在します。ただ、モデルチェンジ毎に更新されたのはエアバッグやABS、DSCや自動ブレーキなどの安全装備が中心です。不便を楽しむのもスポーツカーの味と思われるなら、「この形が好き」という感情を優先した方が幸せになれます。

・世代、排気量、ミッション形式で差別をするのは、本当のロードスター乗りではない
価値観はそれぞれだし、自分の愛車にこだわるのはいいことだけど、「〇〇じゃないからロードスターとは認めない」なんて理論を押し付けてくる人が(ロードスター乗りに限らず)たまにいます。しかし、本当のロードスター乗りは歴代全てリスペクトしているはず。ATに皮肉を言うなんてもってのほかで、アフォーダブル(手軽)という点では、誰でもオープンカーを楽しめる器量があることから、MTより偉大かもしれません。こいつヤバいな・・・と思うことがあれば、そっと離れていきましょう。

・ふたり乗りと割り切れば、積載量は予想以上にある
屋根が開くから無限に荷物が乗る・・・というのは、道路交通法上問題のある発言なので差し控えますが、二人分の旅行バッグ&お土産くらいは余裕で乗ります。日常使いで困るシーンは意外に少ないです。

・真夏日に屋根を開けるのは自殺行為
百歩譲って帽子をかぶるという手段もありますが、夏場のオープンは朝夕の時間帯がおススメです。昼間に半袖でオープンは本気で日射病になり死ねます。主査も夏場は幌を閉じており、「NCはエアコンをすぐ効くようにした」なんておっしゃっていました。

参考)https://mx-5nb.com/2020/08/03/heatstroke/

ロードスターの判断ポイント


・10万キロまでは慣らし運転
ロードスターは走行距離が短いからといって極上コンディションの中古車とは限りません。半端に文鎮保存されていたクルマよりも、メンテナンスをされていた個体の方が元気に動きます。「10万キロまで慣らし運転」とは友人の弁ですが、走行距離を重ねている個体の方がメンテナンスされている率が高かったりするので、そう考えると選択肢の幅は広がるはずです。先輩には20万はおろか、50万キロなんてのもザラにいます。

・スタイリングで選ぶなら、好きな世代を選ぶべし
全塗装という手もありますが、特にこだわってほしいのは「ボディカラー」です。どうせならヤレていても「オリジナルコンディション」を楽しんだ方が、モデファイの方向性も決まりやすいです。人間と同じでクルマも「見た目9割」と考えて問題ありません。ロードスターはカラーの選択肢が山のようにあるので、選ぶだけでも楽しく愛着が湧くし、自分の個性にも繋がります。

・幌は消耗品、いつか交換する日が来る
幌の対候性はいくら世界一優秀でも、経年劣化によりひび割れや擦れが発生します。いざとなったらハードトップという選択肢もあるし、延命だけなら防水テープでもなんとかなりますが、長く乗るのであれば交換の予算だけは確保しておいたほうが幸せになれます。幌交換済みの個体だと、幸せになれますね・・・

・安全性を重視するなら、NC以降のロードスター
NAは問題外として、NBでやっと全車エアバッグが標準装備されますが、安全性を求めるならばNC以降です。「自分は事故らない」と思っていても、相手が突っ込んでくることもありますので・・・安全性を重視するなら、ABS、DSC、エアバッグ、ロールバーが装備されている、ワンランク以上の安心があるNCロードスター以降をおススメします。

・錆はマツダも匙を投げる
基本的に頑丈なロードスターですが、NA/NBのリアフェンダーからロッカーパネルにかけての錆は、修正が大手術になります(ここが錆びていると、レストアプログラムに参加できません)。可能な範囲で、購入前に下回りからもクルマを観察することをおススメします。特に、見た目は普通であってもリアフェンダーアーチの前端(サイドシル後端のフレア)はウィークポイントなので、触感が怪しければ・・・気を付けたほうがいいかも知れません。

NBロードスターを勧めなかった理由

「NB推しではないんですね?」と質問相手にいわれましたが、「絶滅危惧種のオーガニックシェイプ(ボディラインが全て曲線)」「5ナンバー最後のFRスポーツカー」「熟成されたNA由来のシャシー」「電子デバイス介入の少なさ」など、NBのストーリー性に魅力を感じるならばアリだけど、万が一の際にはリスクが高いクルマであることをお伝えしました。

それを踏まえたうえで「それでもNBロードスターなんです!」という事であれば、幸せになれるとお伝えました。

今のおススメはNDロードスター「S」


質問者の「予算」と「走るステージ」を聞いたうえで個人的におススメしたのは、2018年以前までのNDロードスターのベースグレード「S」グレードのMTです。理由は以下の通り。

①「S」は日本専用のセッティング
グローバルカーであるロードスターのなかで、唯一日本市場向けにセッティングされたグレードが「S」です。ギンギンにサーキットを走るのではなく、街乗り中心で時々峠に行くくらいのノリであれば、余計なものがついていない「軽さ」という最大の性能を持っているベーシックグレードで十分です。また、海外のファンと交流する時のネタにもなります。

②余計なものがないネイティブなデザイン
グローバルデザインオブザイヤーを取得するくらい完成度の高いデザインに余計な装飾は不要です。正直、現行型に取り付けられたバックソナーは無いほうが美しいです。リアにソナーがつかないサーフェスなバンパーは2018年以前までになります。

③珠玉のスカイアクティブエンジン
国内仕様は「RS」「S-LP」「NR-A」とさまざまなグレードがありますが、基本的にどのグレードもパワーユニットの仕様はあまり変わりません。グレードによるパワーの差が無いことも、ベーシックグレードがオススメな理由です。

何よりも重要なのは「戻ってくることが出来る」こと


ロードスターは家庭環境の変化などでリストラされるシーンがあってもおかしくない趣味車です。しかし、ロードスター乗りは一度降りても、またオーナーとして「出戻り」になる確率が恐ろしく高いクルマでもあります。

今回の場合、クルマを降りたあと10年、20年と経って「もう一度乗りたい」となっても、その時に市場にはNDロードスター(もしくは新車のロードスター)が残っていると想像しています。20年後なんてNCですら売っているか怪しいですけれど、【名車確定】しているNDならば、何とか見つかると予想できるのです。

なお、90年代のクルマを普通に受け入れられる強者であれば、普通にNAやNBをおススメしていると思います。

正直、どんなクルマに乗っても「自分の愛車」が一番になるわけですから、好きなクルマに乗ってもらえれば満足できるのですけれど・・・質問者がいつかロードスターのステアリングを握ってくれたら嬉しいと思います。

ぜんぜん余談ですが、私が仮に次のロードスターを選ぶとしたら、今ならばキュートなNC1になると思います・・・

関連情報:

マーブルホワイトのNCロードスター

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