ロードスターの暖機運転

ロードスターの暖機運転

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現行型のクルマならまだしも、ロードスターも古ければ30年前のクルマ。旧車と呼ぶには早いけれど、90年代のクルマは既に「ネオクラシック」とよばれるカテゴリーに属します。

そんな古い相棒を長く楽しむために、いたわりすぎて困ることはありません。今回はそんなトピックです。

必要?不必要?「暖機運転」


かつて、自動車エンジンの燃料噴射装置がキャブレターだった70年代までは、エンジンが冷えていたら「暖機運転」は必須とされていました。しかし、エンジンの燃料噴射装置がインジェクターや電子制御式に進化すると、燃料噴射がプログラミングされ、暖気は不要になったとされています。

また、暖気時のアイドリングは環境問題(二酸化炭素放出)にも繋がるという理由から、メーカーは暖機不要なエンジンの開発を急いだという経緯もあります。実際、現行マツダ車のFAQや取扱説明書に「暖機」が必須であるという表記は存在しません。

ロードスターの説明書によると

オードスターのオーナーズマニュアルから引用すると、下記のような説明になっています。

NBロードスター
エンジン始動後、約10秒間アイドリング状態にします。


<注意>
-18度以下の極寒の天候、または車両が数日間動かしていない場合は、アクセルを操作せずにエンジンを暖機してください。冷気でも暖気でも、アクセルを使わずにエンジンを始動してください。

※エンジンが温まっているとき
上記の手順は、さらに起動が困難になるため、実行はしないでください。エンジンが暖かいときに再始動することが異常に難しい場合(アクセルを踏まずに繰り返し試行してもエンジンが始動しない場合)は、アクセルを半分ほど押して始動します。

エンジンが始動しない場合、エンジンがオーバーフロー(エンジン内の燃料が過剰になっている)している可能性があります。

※エンジンが冷えているとき
1)アクセルを最後まで踏み込み、そのままにします。
2)イグニッションスイッチをスタートの位置に回し、最大10秒間保持します。エンジンが始動したら、エンジンが急に回転するので、キーとアクセルをすぐに離します。
3)エンジンが始動しない場合は、アクセルを使用せず最大10秒間クランクします。

NCロードスター

冷間始動後は、エンジン制御システムの働きによりエンジン回転数が高くなりますが、自動的に適正な回転数に下がります。
NDロードスター
冷間始動後は、エンジン制御システムの働きによりエンジン回転数が高くなりますが、自動的に適正な回転数に下がります。

冷間始動後は、排気ガスの浄化を促進するためにエンジン回転が高くなり、うなっている音が聞こえることがありますが、部品機能の異常ではありません。

NBロードスターのB型エンジンは80年代の設計なので、細かい指示が記載されていますが、それでもアイドリングは10秒のという指示です。しかし、少なくとも厳寒時や長期間クルマに乗らなかったときなどは、すぐ走り出すとダメージがある可能性からか、わずかでもアイドリングはして欲しいとのことです。

それ以降のロードスターではアイドリングが不要である記載になっていますが、コールドスタートのリスクは頭の片隅にあっても間違いはないと思われます。

「暖機走行」のすすめ


しかし「暖機」自体がクルマにとって悪かというと、そうでもありません。加工精度や材質が良くなったとはいえども、各部にオイルを回し温めることは正規のクリアランスでエンジンが作動するということです。長い目で見れば、クルマの好調を維持することに繋がるでしょう。

ただ、アイドリングだけではエンジン内のクランクシャフトやカムシャフトなどで油圧不足とされています。つまりエンジンに一定の負荷が掛け、温度を上げていく必要があるのです。これはエンジン以外にも、変速機やサスペンション、タイヤなども含め、「暖気」を行うことが本来の性能を発揮することに繋がります。

そこで、これらを解決するために愛車の準備体操をお勧めします。それはクルマの負荷や回転数を抑えた「暖機走行」というもので、やり方はとても簡単です。エンジンの回転数を低めに保ちながら、おとなしく運転するだけです。NBロードスターの場合は約10分で水温が安定し始めます。

長期保管のトラブルと対策


ロードスターは趣味車なので、イベントが発生しない場合は長期間愛車を動かさない方もいらっしゃると思います。実際、私も乗れるのは週末だけです。ただ、クルマは走ることを前提に設計されているので、それにより発生するトラブルも存在します。

【エンジントラブル】
エンジンをかけない状態が1カ月以上続くと、エンジン内部のオイルはエンジン下部に落ちてしまうとされています。これはエンジン内の油膜が失われ、腐食やサビが発生することに繋がります。

この状態でエンジンをかけようとすると、エンジン内部の摩擦部分に傷が付いたり、潤滑不良による焼き付きを起こします。再始動時にはエンジンオイルの状態を確認し、必要に応じて交換や補充も考えたほうが安心です。

【燃料トラブル】

一般的には気温の変化が少ない冷暗所の保管であれば、ガソリン・灯油・軽油は半年程度、A重油は3カ月程度使用に関して問題ないものと思われます。ただし、購入から上記期間内の品質を保証するものではありませんので、早めの使用(入れ替え)を推奨します。
(引用:JXTGエネルギーホームページより)

長期保管でガソリンが腐るという話がある通り、満タン状態の長期保管はリスクが高く、最悪燃料タンクやポンプの交換、配管洗浄なども考えられます。

【補器トラブル】
バッテリーはカーナビやETC、コンピュータなどのバックアップ電源などが常に取り出されているし、時間の経過とともに自然放電されてしまいます。可能であれば、特にバッテリー消耗が激しい冬季前に充電しておくことをおススメします。また、タイヤも空気が抜けてしまったり、変形やひび割れが起こる可能性があるので、定期的な空気圧チェックが必要です。

さらに、屋外と屋内など、駐車している場所でも塗装や樹脂パーツなどの傷み具合に差は出てきます。つまり、クルマに応じた適切な方法を採ることが肝心です。

コンディション維持のため、30分は走りたい


コンディション維持の対策として最も有効なのは「動かす」こと。そこで定期的にエンジンに火を入れることを耳にしますが、これはアイドリングではなく【一定距離・時間の走行】を行うのがポイントです。


なぜなら、中途半端なクルマの始動ではエンジン内の水分が蒸発せず、エンジンが温まりきらない短距離走行(10km以下)ではオイルと水が交わる「乳化」が促進されてしまうからです。

エンジンのベストコンディションは90度~100度とされていますが、少なくともその状態を維持して、水分を飛ばしきってあげることが有効です。諸説ありますが、その目安は約30分の走行とされているので、暖機運転も踏まえ、そのあたりも心掛けてあげたほうが、愛車は喜ぶと思われます。

自分のクルマなんて好きに乗ればいいという考え方でいいと思いますが、トラブルを避けるに越したことはありません。ご参考になれば幸いです。

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