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公式発表によると、北米におけるNA/NBロードスターの海外名「Miata(ミアータ)」は、古高ドイツ語の「報酬」から付けたとされています。NCロードスター以降は「Miata」のペットネームは「MX-5」に統合されていますが、それでも現地では「現行ミアータ(=NDロードスター)」のように、この愛称は定着しています。
そんな「ミアータ」ですが、ひとつのエピソードが伝説に彩りを添えてくれます。
Miata(ミアータ)とは、どんな意味なのか?
最近は型式番号や数字(車格)などでクルマの名称を決めることがトレンドになっていますが、古くはジュリア、ジュリエッタ、アリエル、カプリスなどや、国内でもセリカ(芹香)やカレン(可憐)、フェアレディなど、女性にちなんだ愛称が採用され、今でもその名残は残っています。
そのようななか、北米においてデビューしたNAロードスターのペットネーム「Miata(ミアータ)」は、デビュー当時からファンの間で物議を醸していました。この可憐な響きに「誰の名前だ?」「どういう意味だ?」となり、日本に勝るとも劣らないミアータの濃いファンたちは、下記のような考察を始めていました。
・日本語の「宮(神社)・田」が由来である
・イタリアの「SiataRoadster(シアータ・ロードスター)」のリスペクト
・イタリア伝統に由来して、女性名をオープンカーにつけた
どれもこれも、それっぽい内容ですよね。
Miata(ミアータ)に関して、マツダオフィシャルより
ほどなくして先の考察の回答となるものが、オフィシャルとなる北米マツダのキーパーソンによる証言がビッグ・ミアータ・アーカイブサイト【Miata.net】に投稿されました。
マツダオフィシャルは、古高ドイツ語 (古ドイツ語のうち、第二次子音推移が生じた地域)にあった単語のひとつであると発信しています。確かに、よく調べてみると現在もドイツでは「Miete(=家賃)」という単語があるのですが、(ミアータは)その語源にもなっているようです。
The true story
Rod Bymaster, Mazda’s head of product planning and marketing for the Miata project back in the early days, claims his “biggest contribution to the project was to have found the word Miata in Webster’s Dictionary, which is defined as “reward in Old High German.”
これが真実
マツダMiataプロジェクトの商品企画およびマーケティングの責任者であったロッド・バイマスターは「プロジェクトへの最大の貢献は、ウェブスター辞書(※)でMiataという単語を見つけたことだった」「それは古高ドイツ語で「報酬」という意味だった」と語ったのです。
※ウェブスター辞書:19世紀初頭にノア・ウェブスターが初めて編纂した一連の辞典。彼の名声にあやかり、その名を冠した無関係の辞典(いわゆる海賊版)を指す場合もある。アメリカ英語の形成史を探る上で非常に貴重であるのみならず、英語辞典の代名詞としても名高い。
もう一つのMiata(ミアータ)ストーリー
解決したと思われた「ミアータ」の語源ですが、【Miata.net】にて、以下のようなさらに興味深いストーリーが投稿されました。
Miata Lewis-Harris (that’s her name) sent us this:
My name Miata comes from the name Amenata, of the Ivory Coast in Africa. It means “She who pleases everyone, or makes everyone happy”
I had the pleasure of meeting the head of the japanese “division” of the Mazda corporation in Hawaii, while I was with my parents, around the age of 4 or 5. He took down my name, (by my parents concent) and took several photos with us. I still have some of these photos. He mentioned to my parents that he would be in contact with them , because he liked the sound of the name, and the way it was spelled. We recieved photos in the mail from him, which included a letter with his idea to use my name as possible concept for a car. I still have the photos, but not the letter.
I believe the first Miata came out in 1990, which would have made me around the age of 13. So around 8 years later, the car comes out, and I have considered it to be because of me! You may believe this or not, but I just thought I would give you another definiton of Miata.
ミアータ・ルイス・ハリスさんからのメッセージ
私の名前「ミアータ」は、アフリカ・コートジボワールのアメナータが由来です。それは「みなを喜ばせる、またはみなを幸せにする女性」という意味になります。
私は4歳か5歳の頃、両親と一緒にハワイに行った際、日本車メーカー・マツダの関係者の方と会う機会がありました。その方は私の名前「Miata(ミアータ)」の響きと綴りが素敵だといってくれて、一緒に写真も撮ってくれました。とても嬉しかった記憶です。
のちに、手紙に添えて写真が届いたのですが、そのなかには私の名前を「自動車の愛称として使おうと思っている」と記載されていました。残念ながら手紙は残っていませんが、その写真はまだ持っています。
1990年に最初のミアータが出て、その頃私は13歳になっていました。つまり、あの出来事から約8年後にクルマが販売され、これは私の名前だ!と思いました。信じられない話かもしれませんが、「Miata(ミアータ)」の響きには、そういった解釈が含まれているかも知れません。
Miata(ミアータ)は日本では「ユーノス・ロードスター」としてデビューしました。販売チャネルとなる「Eunos(ユーノス)」は造語であり、ラテン語の「Eu(喜び)」と英語の「Numbers(集まり)」を掛け合わせた名称です。つまり、ユーノスには「よろこびのコレクション」という意味が込められています。ハイセンスですよね!
そんな「ユーノス」が意図していた思いと、ミアータ・ルイス・ハリスさん名前のエピソード「みなを喜ばせる」はとても近しい内容であり、こちらのほうがある意味でロードスターのキャラクターにあっている、素敵なエピソードであると個人的には感じます。
そういった意味では、映画「カーズ」の準レギュラーキャラクターである双子の「ミア&ティア」は、ミアータの持つイメージ通りの役割だったのも、不思議な縁といえるでしょう。
そもそもミアータはセクレタリーカー、つまり「秘書をする女性が相棒として気軽に買うことのできるクルマ(=小型軽量できびきびと使い勝手が良く、彼女たちにお似合いのカッコいいクルマ)」という企画で販売にこぎつけました。そういう意味でも、「ミアータ」という響きは合致するものと思えます。
Miata(ミアータ)に敬意を表して
世界戦略車であるロードスターは、北米では「Miata」、欧州・オセアニアでは「MX-5」日本では「ロードスター」と、地域によって名称が違いました。
ただ、2004年のMazdaspeed MX-5 Miata(国内名:ロードスターターボ(NB))からMiataのエンブレムはなくなり、2005年の3代目NCロードスターからは「Miata」の名称は廃止、「MX-5」に統一されました。
なお、国内でもマツダ・ラインナップは2019年から「Mazda2/3/6」と変更されていき、ロードスターも「MX-5」に統合される可能性があったようですが、現行NDロードスターでは見送らることとなりました(※商標登録はされている)。
オフィシャルで廃止されてしまった「ミアータ」という名称ですが、今回のエピソードを知ったうえで、改めてその響きが気になり・・・リスペクトを込めて愛車のエンブレムを変更することにしました。
なお、Miataエンブレムは海外サイトだけではなく、モノタロウ(国内通販)でも購入可能です。
その品番は【NC10-51-721B(オーナメント リヤー カーネーム(NC))】で1,998円(税別)※。国内製造しているとはいえ海外仕様のパーツが購入できるモノタロウ、恐るべしです。※2024年12月時点
「Roadster」エンブレムは、両面テープではなくリアから強固にピン止めされています。したがって、均等に力を入れながら一気に引き抜くよりも、ピン自体を切断するほうが楽に剥がせるでしょう。
右ハンドルのロードスターに「Miata]というバッジチューンを笑う方はいらっしゃるかもしれませんが、このエンブレムにリスペクトと誇りを持って、ミアータ・ストーリーに思いをはせるのでした。
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