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時代の潮流とともにクルマの使い方も変わるもの。面白いのは「便利」になるだけでなく、かえって「不便」になってしまうこともあることです。一時期はなんでもデジタルに置き換わり、エアコンの操作までタッチパネルでおこなうような仕様がトレンドになりましたが、さすがに不便なことに気づいて「物理スイッチ」に回帰するような例もありますね・・・
約35年以上、4世代にわたる歴史を持つロードスターは、見た目(デザイン)やスペックなど各世代の善し悪しがよく比較されます。それぞれに良さや個性があるので「決定打はこれ!」という判断は難しいのですが・・・
ただ、このクルマの出発点にはライトウェイトスポーツの復活があり、スタート時点においては「走る楽しさの基本性能」以外は必要最低限のものしか持ち合わせず、使い勝手の良さ(ユーティリティ)は少しづつ加わっていきました。そのようなななかで、今回は「カップホルダー」を中心にしたエピソードのご紹介です。
NAロードスター
これはユーノスロードスター(NA)のインテリアです。スポーティなマツダ伝統のT字型センターコンソールに、シンプルな「円」のモチーフを組み合わせたもので、今の目で見てもレトロカッコいいですよね。
ただ、日常使いするにあたり「カップホルダーが無い」ことに困ることでも有名です。だからこそペットボトルのふたを閉めて助手席に「ぶん投げる」もよし、モデファイの魅せ方として洒落たホルダーを設置するもよし、とされてきました。なお、この時代の日本車においてカップホルダーが標準装備されることは稀でした。
一方、デビューから一貫してオーディオ、エアコン、パワーウィンドウ、パワステまでオプションだった割に、センターコンソールへ「灰皿(アッシュトレイ)」が設置されていたことに、時代を感じますね。
こちらはマツダの商用車(ボンゴシリーズ等)から流用されてたのは有名な話ですが、実は初代RX-7(SA)にも採用されていた、由緒正しいパーツになります。マツダスポーツカーは、今は亡き商用車部門が管轄していた名残でもありますね。
センターコンソールと微妙に色味とシボ(紋様)が合わないのは、こういった素性があるからなんですね。現在は電源供給ユニットの役割が主となっていますが、もちろん発火用ライターのシガーソケットも使いやすい位置に設置されています。
なお、レアな装備としてアッシュトレイを「小物入れ」に置き替えるオプションパーツもデビュー時から用意されていました。禁煙派にはこういった選択肢もできたんですね。もちろん現在は、この部分に取り付けるカップホルダーも存在します。
NBロードスター
こちらはNBロードスターのインテリア、左が前期型(NB1)、右が後期型(NB2以降)です。
NBは当時の衝突安全基準を順守するため、全車にエアバッグが標準装備となり、ほぼ市場に流通しなかった幻の【標準車(グレード)】以外はエアコンも、パワーステアリングも標準装備になりました。
加えて「純正カップホルダー」もセンターコンソールへ標準装備されています。前期型はコンソールボックスを開けると配置してあり、右ハンドルでは使い勝手が悪かったのですが、後期型ではリトラクタブル・カップホルダーになりました。なかなか見ないカッコいい機構なので、見たことのない方は確認していただければ嬉しいです。
さらに「灰皿」もセンターコンソールに装備されているのがポイントで、シガーソケットにはライターも装備されています。前期型(NB1)は専用品でしたが、後期型(NB2以降)は灰皿を取り外ことが可能で、ここが「ふたつ目のカップホルダー(仮)」にすることが可能になります。なぜ(仮)なのかというと、あくまで一時的なドリンク置き場であって、説明書には「走行時には使用するな」と書かれているんです。
貴島主査も開発エピソードにおいて、カップホルダーを語っています。

日本ではあまり文句いわれないんだけどカップホルダー!それもアメリカ人は2個付けろといってきた。要は、朝早くコーヒー飲みながら通勤するのに、それを楽しめる場所がないクルマなんてとんでもない。カップホルダーだけは絶対付けろ、灰皿よりもカップホルダー!っていうのがアメリカ人の特徴ですよ。
サイズも決められていてね、「キング」ってのが有るんだけど、それが入らないとダメなんだと。大きさとしてはカップが全部入らなくても、底が入って倒れなければいいってね。ダッシュボード側に付けば良かったんだけれど(NBでは)無理で、コンソールしかなかったんですよ。あのスペースで作るのがすごく苦しかった。NCも中央はカップホルダーだけど、横はボトルホルダーね。最近ならば魔法瓶も入れられますね。あれの有無で(市場)評価が全然違うんですよ!
ちょっとしたトリビア
NB後期型のカップホルダーには切り欠きがあって、これはマグカップの把手(取っ手)が考慮されたものになります。日本には無い文化ですが、米国では出勤時に朝食を購入する際、マイカップにコーヒーなどを淹れてもらうんもらうんですね。国内も近年はスターバックスなどでマイボトルを持参する方が増えていますよね。
なお、国内ではセンターコンソールにボトルを置くと、シフト操作時に「肘に当たる」不満を聞きますが、ロードスターは北米においてセクレタリーカーとなります。キャリアウーマンが駆るクルマ(AT)であればシフト操作は最小限なので、問題視されなかったんですね。
参考:
https://mx-5nb.com/2020/01/04/kijima2017-7/
NC/NDロードスター
NCロードスターはセンターコンソールの「カップホルダー」とダッシュボードの「ドリンクホルダー」、合わせて4本の飲み物が置ける一方で、ついに灰皿が標準装備から消えてしまいました。一応、ショップオプションでドリンクホルダーに取り付けるものが用意されていますが、本物を見たことがありません・・・
また、NDロードスターに至ってはカップホルダーは基本ひとつのみで(※グレードによる)、それ自体も取外し式になりました。しかも、ヨーがかかると背の高いペットボトルだと車内をすっ飛んでいくので要注意です。さらに灰皿も、NCと同じくホルダー装着タイプになりました。ちなみに、シガーソケット(電源)は助手席足元の奥に設置されています。
灰皿とカップホルダー、まとめ
まとめてみると、以下のような感じです。
装備ひとつでも世代によって時代の差を感じますね。特にNBロードスター独自の装備として、後期型のカップホルダーにある切り欠きは「日常に根差すスポーツカー」であろうとする、マツダ・ロードスターたるアイデンティティを感じます。
もちろん人馬一体(=乗って楽しい)がロードスターの真骨頂であり、カップホルダーが無くても「走り」には全く関係はありません。そんな「重箱の隅」な話でした。
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