3Dプリンター製のNBロードスター(3Dマカロン)

3Dプリンター製のNBロードスター(3Dマカロン)

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私たちのデスクやガレージの棚は、たいてい数台の「ロードスターのミニカー」が飾られているものです。トミカ、ホットウィール、あるいは精密な1/43スケールモデル。しかし、こと「NBロードスター」に関していえば、他ロードスター(NA、NC、ND)に比べて立体化に恵まれているとは言い難く、さらに特定の仕様(後期型や特定のボディカラー)を見つけるのは至難の業です。

「ないのなら、作ってしまえばいい」

そんなエンスージアスティックな渇望を満たしてくれる素晴らしいアイテムを発見しました。マカロンサーベイ社が展開する「3Dマカロン」ブランドより発売されている、3Dプリンター製の歴代ロードスターのディフォルメキットです。今回は、このキットを素性を活かしながら、なんとか完成させることができたので、その制作記をお届けします。

「3Dマカロン」さんのサイトこちら→https://3dmacaron.base.shop/

ガレージキットとは何か?


https://3dmacaron.base.shop/
プラモデルのように、金型を使って大量生産される市販品(インジェクションキット)とは異なり、個人や小規模なメーカーが情熱を込めて少数生産する組み立て模型のことを「ガレージキット(略してガレキ)」と呼びます。

かつてはウレタン樹脂(レジンキャスト)をシリコン型に流し込んで複製する手法が主流でしたが、現代は3Dプリンターの劇的な進化により、CADデータから直接出力された高精度なキットが手に入るようになりました。マスプロダクトでは採算が合わず製品化されないようなマニアックな車種もガレージキットなら手に入る。まさに、クリエイターの情熱と技術の結晶といえるでしょう。


https://3dmacaron.base.shop/items/134270571
なお、3Dマカロンさんの販売サイトを覗くと、実はすでに彩色済みの「フルカラー版」も販売されています。そのまま飾っても十分に可愛くて楽しい仕上がりになっています。しかし、あえて私は「未塗装版」を購入しました。折角なら未塗装のまっさらなキャンバスを手に入れ、自分の手でやすりを掛け染め上げる。それもガレージキットを作る最大の醍醐味にひとつだからです。

3Dプリントとの格闘


丁寧な梱包と素敵なメッセージ付きのキットが到着し、さっそくディティールを確認しました。複雑な形状ながら、まさかのワンパーツ整形!

3Dプリンターならではの積層構造により、中空になっていて見た目より軽い。なるほど、だから3Dマカロンなんですね!プロポーションの良さを確認して、このままでもいいかな・・・なんて思いもしましたが、ここからがモデラーとしての腕の見せ所です。


まずは、作業性を確保するためにキットの分解を行います。ボディ磨きに集中するためにタイヤパーツとサイドミラーを外しました。また、持ち手を確保するためにキット底面に穴をあけ、アルミ線を挿しました。


あとは、ひたすら3Dプリンター特有の「積層痕(細かいシマシマの段差)」を消すために表面処理を行っていきます。耐水ペーパーとスポンジやすりでひたすら磨き上げる地道な作業です。240番~600番で処理を行い、サフェーサーで段差を確認していきました。


少しだけ苦労をしたのが、キットの素材である「ABS樹脂」の特性です。一般的なプラモデル(スチロール樹脂)に比べてABSはペーパーの摩擦により樹脂に粘り気が発生することです。さらに、クルマの分割線(パネルライン)のスジボリを入れるか迷ったのですが、粘りのあるABS素材相手ではラインがガタガタになってしう可能性が高く、今回は「キットの素のフォルムを活かすこと」を優先しました。

完璧を求めすぎて完成しないより、形にして愛でることの方が精神衛生上良いですからね。

ちょっとしたディティールアップ


このキットはNBの美しいフォルムを捉えていますが、ほんの少しだけNBならではの特徴を追加したくなりました。そこで、いくつかのディティールアップを敢行します。

1)三角窓(クォーターウィンドウ)の追加
キットでは省略されているAピラーの三角窓。ここは、どの家にでも転がっている「ガンプラのランナータグ(ちなみにメッサーF01型のもの)」を貼り付けました。Aピラーまわりが囲い込まれるだけで、ロードスター味が増します。

2)ダックテールの造形
NBの特徴的なトランク後端のダックテール。ここは瞬着パテを盛って、微妙な段差を造形しました。このスケールだとやりすぎないようにするのがポイントになるので、指先で理想の反り具合を確認していきました。

3)フロントバンパーの後期化
フロントフェイスは後期型のコントラスト・イン・ハーモニー(五角形グリル)を再現すべく、少しだけ削り込みました。さらにピンバイスで穴を開けてフォグランプ部分を追加。キットは中空構造なのでドリルが突き抜けてビビりましたが、何とか穴を埋めて精悍な顔つきの完成です。

魂の塗装、老眼との戦い


表面処理を終えたらいよいよ塗装です。今回ボディカラーに選んだのは、NB4型のテーマカラーでもある「チタニウムグレーメタリックⅡ」をイメージしたもの。選択理由は単純で、自分が欲しかったロードスターの色だからです。


まずは全体に黒いサフェーサーを吹いて、全体のトーンを統一します。


ベースとなる「黒」を活かすべく、マスキングを行っていきます。フェンダー内には粘着ラバー(100円ショップのジェネリック、ブル・タック)で塗装面の保護を行います。


そのうえで、チタニウムグレーメタリックⅡをイメージした、スプレー塗装をライトガンメタルを複数回薄く吹いて、色を出していきます。


そして最大の難関が、細部の筆塗りです。フロントのフライングV(マツダのMマーク)と、ランプ類のベースを描きこみ、いったんグロスクリアで表面状態をセーブします。私は描きこみ時にはエナメル塗料を使うのですが、これを行うことによって、次の作業で失敗しても、前の状態に戻せるからです。


そして、見せ場となるテールランプ回りの描きこみを、面相筆(極細の筆)を握りしめ、息を止めながら塗料を乗せていくのですが・・・ここで立ちはだかるのが「老眼」という残酷な現実です(笑)。息を止めて集中しながら格闘すること数十分。なんとか魂を吹き込むことに成功しました。この語、幾度かグロスクリアーを吹いて塗装面をツヤツヤにしていきます。


ボディが完成し、最後に残ったのがタイヤとホイールです。キットに付属する樹脂製のタイヤを綺麗に円形に仕上げ、ホイールを塗り分けるのもひとつの手ですが、ミニカー特有の「ゴムタイヤの質感」がどうしても欲しくなりました。そこで思い切って、キットのタイヤ造形は諦めることに。

近所の100円ショップ(ダイソーやセリア)へ走り、ホイールのサイズ感とデザイン(スポーク形状)がNBに似合いそうなミニカーを物色。数台をドナーとして購入し、シャシーを分解して、今回のガレージキットに移植しました。結果として、この判断は大正解だったようで、適度なトレッドと車高はもちろん「密度感」も確保されました。


最後にボディ全体にマスキングを行い、インテリアへフラットコート(艶消し)を吹き、質感の違いを表現しました。


これで作業はひと段落。自分にお疲れさまでした!

手のひらに乗る、チタニウムグレーメタリック


幾日かの作業時間を費やし、粉まみれになり、老眼と戦いながら完成させたNBロードスターのガレージキット。サイズは、おおよそ長さ 73mm × 幅 40mm × 高さ 25mm、重さ 17gということで、まさに手のひらサイズ。ボンネットのパワーバルジからフェンダーにかけてのオーガニックシェイプは、まさにNBロードスター。


拡大写真では粗が目立ってお恥ずかしい限りですが、実物は元の造形の良さもあって、なかなかいい感じなんです。ラッキーなことに、流用したホイールもNB4純正っぽくてお気に入りです。


リア周りも拡大すると筆が揺れていますが、手描きの良さということでご容赦ください。


折角なので、以前作成したネコワークスさん(たまごロードスターの原型)のNBと一緒に並べてみました。ほぼほぼ近しいサイズだから違和感ありませんね。同じモチーフですが、作家さん(原型師)の違いによる解釈の差が面白い。本音でいえば、私もデジタルモデリングしたい・・・


こういった作業は、市販のミニカーを買ってくれば一瞬で手に入る喜びかもしれません。しかし、ガレージキットという素材と向き合い、実車の構造を頭に浮かべながら削り、盛り、色を乗せていく時間は、ロードスターとの対話そのものでした。

3Dプリンターという現代の技術でこのようなマニアックなベースキットを生み出してくれたマカロンサーベイ社に敬意を表しつつ、今夜は、デスクの上の小さなチタニウムグレーメタリックのNBを眺めながら、美味しいお酒が飲めそうです。

関連情報→

NBロードスターのデフォルメカー作成(ネコワークス)

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