NAロードスター(NA8Csr2)試乗記

NAロードスター(NA8Csr2)試乗記

クルマはじっくり乗ってみなければわからない。そんな持論から、お友達からロードスターをお借りするシリーズです。今回はNA8ロードスターシリーズ2の限定モデル「VRリミテッド コンビネーションA(1996年式、以下VR-A)」をお借りすることができました。

しかもそのロードスター、機構はフルノーマルかつ、メンテナンスも完璧(パワーウインドは左右とも均等に上下する!)。走行距離たるや5万キロにも至っていないという凄い個体。(ロードスターは10万キロで馴らし終了ですから、まだ途中ですね)


NAロードスターのオーナーで昔からよく聞くのは、他のスポーツカーや、他のロードスター(NBやNC、もしかしたらND)からの乗り換えのパターン。また、NDロードスターはNAをリスペクトしたとマツダが大々的に公表していたりして・・・なぜなのか。

今でこそガッツリなNB乗りであり、かつNA6のオーナーでもあった私の独断と偏見で、そのあたりを解析したいと思います。特にNA8シリーズ2といえば、NA最後期型として最も人気のあるNAロードスター。どんな味付けなのか?

お借りしたNB8シリーズ2の特徴


NA8シリーズ2の主な特徴といえばメインユニットまわりのリファイン。

BP-ZE[RS]1800ccエンジンは16bitコンピューターの採用で、きめ細かな制御ロジックを実現し、最高出力130ps/6500rpm、最大トルク16.0kg-m/4500rpmというスペックを誇ります。広報資料によると、カタログスペックはシリーズ1(NA8)と同じではありますが、実質出力は3psほどアップしているそうです。

加えて、イナーシャ(感性抵抗)を約16%低減した軽量フライホイールを採用。ファイナルギアレシオもローギアード(4.3)に設定し、初期加速に対する応答性を上げています。

これらのリファインはNAがエミッション(環境性能)対応する為に排気量を1800ccにした際(NB8シリーズ1)、クルージング重視のハイギアード(4.1)設定されたエンジンレスポンスが「重い」という酷評を受けての改善です。ちなみにシリーズ2のギア比改善は日本だけで、海外は(4.1)のまま販売されています。

また、今回のユーノスロードスター限定車「VR-A」はSスペシャル・グレードがベースになりますので、吊るしの状態でフロントタワーバー補強や、ビルシュタインダンパーの足回りを装着しています。ちなみにエアコンとオーディオはオプション!カタログ車重990kgですが、実質はエアコン付きなので1010kg位になるかと思われます。

限定車VR-Aとは

今回お借りした「VRリミテッド コンビネーションA(通称VR-A)」という限定モデル。

独自装備としては専用15インチアルミホイールと、専用ボディカラー「アールヴァンレッドマイカ」に、タンカラーの幌、「Roadster」刺繍の入ったトープカラーの本革シート、シフトとパーキングブレーキはアルミパーツ採用・・・と、SスペシャルにVスペシャルの装備を施したような豪華仕様。(※今回、幌だけは社外品にモデファイされています)

ちなみにこの「VR-A」のカラーコーディネートは好評で、NBロードスター前期型では「NRリミテッド」として限定復活し、NB後期型やNC前期型でも近しいカラーリングが純正採用されています。

いざ、乗り込んでみる


必要以外のものを極力排除したエクステリアは、もはや伝統工芸。古いのではなく、クラシカルな質感を感じます。

NA独自のドアノブも機械的なカチャっとした感触で、昔からの時計を使い続けているような、今のクルマでは味わえない味。まさに乗り込む儀式。

実際にインテリアスイッチのクリック感やウインカーの音なども、いい意味でレトロタッチ。NA8はコストダウンの影響でNA6に比べ加飾もシンプルになっており、その素材感あふれる雰囲気は自分色にコーディネートしたくなる筈です。また、時代柄エアバックは装備していません。太っていないMOMOステアリングは素直にカッコいい。

エアコンはクーラーが効き辛いことは有名ですが、ヒーターは信じられないくらい効きます。風力ゼロでも外気循環にしておけば、車内は暑いくらい。冬こそオープンカーを楽しんでほしいという意図でしょう。

ただ、シートに関しては、私の座高が高いのでもうちょっと低いと嬉しいです(私がユーノスに乗っていた時はアンコ抜きをしていました)。なので、視界が狭くなってしまうのでサンバイザーを外すとちょうどいい視界だったりしますが・・・しばらく走っていたら慣れちゃいました。ホールド性に関してはそれなりですが、お山を走ってきた晩お尻が筋肉痛に・・・踏ん張っていたんでしょうね。

やはり、リトラクタブルヘッドライトは開けたくなりますよね。クールな和美人が一気にファニーになる瞬間。二つの顔を持っているのは素敵です。

基本、走り以外の装備は自分で何とかしてね・・・というスタンスなので、ドリンクホルダーすらありません。でも、ロードスターはそれでいい、そんなもんです。

パワーユニット


キーをお借りしての第一印象はどうだったかというと・・・イグニッションでロードスターお約束のブリッピング。でも、マフラーが純正でも(最近のクルマでは考えられないほど)良い音出しています!アクセルワークに併せてブォンブォン鳴るのでこりゃ気持ちいいです。

アクセルを踏み込むと、トルクフルかつスムースに回りきるので驚きました!私の愛車(NB6)のエンジンは1600ccB6-ZEなので(出力125ps/6500rpm、トルク14.5kg-m/5000rpm)ひと回り低いスペックなのは承知していたのですが、BPはトルクである程度走れてしまうエンジンなのは目からウロコでした。2速発進もガクガクせず全然出来ちゃいます。(B6ユニットは回さないと走れません・・・)

アクセルレスポンスもクイックで、特にトルクバンド内(3,000~5000)の中間加速感は旧世代と侮っていたのですが、ローギアードなギア比とも相まってグングン前に行きます。排気量の差でここまで味付けが変わるかという、想定外のショックです、素直に良い!

また、シフトチェンジもスコスコ決まります。若干5速に入れるのが“遠い”時がありますが誤差の範囲。NA6の2速入らない病を想定していたのに、全く問題なし。お借りしている間、ダブルクラッチもシフトミスもありませんでした。
NAのシフト周りはお湯が沸くのではないかというくらい熱くなる印象があったのですが、そんなことも今回は全く無し。

ブレーキはNA独自のフィーリングです。普通自動車の感覚で踏むと全然止まらない。NAロードスターのブレーキは、きちんと踏まないと効かないように出来ているのです(決してパットがプアなわけじゃありません)。これだけは初めて乗るとビックリする筈です。

コーナーリング


コーナーリングは正に水を得た魚のよう。自分の運転が上手くなったと錯覚する位、狙った方向に行けます。

オーバーハング重量がNBよりあるはずなのですが、セッティングのせいなのかNAの方が鼻先は軽いと感じます。ビルシュタインの足が意外に硬くてロールなんぞ全然しないので(結構力任せに)グイグイ曲がります。現在のスポーツカーはロールさせる方向なはずなので、味付けの違いは面白いですね。

あまり上手な走り方ではないかもしれませんが、アクセルワークでコーナーの進入角度を調整出来たり、踏み込むと中間加速に対するトルクバンドがあるので、コーナー出口までグイグイ押し出してくれて気持ちいい!

かといってパワーが過多なわけでもないので、スピンモードになる事もありません。後輪駆動を教科書以上に楽しめます。ただ、NBの感覚で踏み込むと、お釣り(オーバーステア)が出てビビります。調子に乗るのはよくないですね・・・

路面状況によるという前提ではありますが、中速のロングコーナーが続くような場所は(私の場合は)3速のみで気持ちよく走れちゃいました。繰り返しますが程よいパワーとトルクなのです。つまり、車速30キロ~60キロの範囲は笑っちゃうくらいイメージ通り走れます。

峠(タイトコーナー)に関しても同様で、NB6では時に1速を使うような場面でも基本2、3速で走りきれます。意外だったのは、同じ道でもNBではABSを効かせまくっていたのですが、ABS無しのNAブレーキでも近しい走りが出来ました。これはちょっと感動です。

しかし悪路では、コーナーで跳ねたら心臓に悪い挙動だったので、そこはのんびりさせて頂きました(後述)。

気になったところ


路面状況によっては(想定内ではありますが)ボディが”たわむ”のが良く判ります。特に腰の後ろ、リア周りは轍(わだち)等のギャップを超えるだけでブルルン・ガタタンとなります。一体どこが鳴っているのか幌の根元とかブレーズバーあたりを調べたのですが不明。まぁそんなもんです。

なので、ちょっと路面が悪いとクルマが分解するんじゃないかというくらい乗り心地がハードになるのですが、ビルシュタインの硬さが原因かと思ったらそれだけではなく、リアの緩さとビル脚がコラボレーションした結果だと思われます。こればかりはNBになって後ろをガゼットやメンバーブレースで固めて安定させたのがよく分かります。

なので、コーナーの路面が荒かったりすると死を予感させてくれるので、自ずと安全運転になります。慣れの問題かもしれませんが、NBで慣れていると踏み込めない・・・(まだ信用出来ていない!?)


高速安定性

折角なので速い速度領域でも走ってみました。ここでは路面のギャップで撓(きし)むのが心臓と耳に悪いです。どこかにクルマが飛んでいくのではないかと心配になり、アクセルを緩めちゃいました。ポジティブに考えると、ロードスターが「この道ではスピード出すんじゃないよ!」と教えてくれているのでしょう。

面白かったのは横風が強い状況だったので、試しにリトラクタブルヘッドライトを上げてみたら当然グラグラしまして・・・空力って凄いですね。高速巡航をずっと行うには慣れしかないです。80キロ以上出すと正直怖い!

NAロードスターが凄いと感じたところ


これらを総合した上で、一番NAが”凄い”と感じたのは手と腰、そして耳など五感で感じるロードスターからのフィードバック。

エンジンのレスポンス、路面状況、そしてヤバいと思わせる挙動・・・こりゃ確かに人馬一体ですわ。特にステアリングからのインフォメーションは歴代ロードスターでNAが一番強く感じました。対話している感が半端ないです。

また、意外に感じるかもしれませんが今回のNA8に乗っていて、歴代ロードスターで一番近いイメージがあったのはNC2幌でした。

量産のライトウェイトスポーツは、可能な限り車体に見合った“使いきれる”パワーユニットを搭載するのが定説ですが、決して小排気量が凄いというわけではなく、トータルバランスが重要です。そういう意味で、中間加速(トルク)で軽快に走るというスタイルにNA8→NB8→NCEという流れを感じ、非常に納得いきました。なので、ロードスターとしてのハンドリングは当然として、エンジンの味付けも非常に近しいのです。

そう思うと納得なのがND幌エンジンの味付け。エンジン特性は“回すと早い”タイプなので、実はNB6とそのルーツのNA6(1600cc)に非常に近しい印象があります。NDのベンチマークは同じ初代ロードスターでも、NA8ではなくNA6であろうことが分かります。

燃費に関しては、満タン法の計算になりますが、結構回したりしたのですが、走行距離416.4キロに対して給油量35.5l。リッター11.7(レギュラー)なので、結構優秀ではないでしょうか。

なぜNAロードスターなのか


では、なぜNAロードスターが愛されるのかと自分なりに解釈すると「後輪駆動(FR)でしっかり走れる基本構造は作ったから、あとは自由に楽しんでね!」というスタンスで、そこから自分色に染められる素材感にあるのではないかと感じました。

ドアロック、トランク、ミラー調整(※これはモデルによる)など全部手動です。オーディオはヒーターをつけるとノイズが走るし、ドリンクホルダーもない。パワーウインドのスイッチは後ろにあってクリックしづらいし、突風があれば幌がバタつきます。道が荒ければボディは軋(きし)みますし、エアバッグもABSも基本ありません。DSCなんぞ未知のテクノロジー、今の基準で見れば非常に“危ないクルマ”です。

実際メーカーもここまでヒットすると予想されていなかったようですから、あらゆる要素が(いい意味で)割り切られて雑なのです。そこまでして、ライトウェイトスポーツの最大の性能である「軽さ」を得ているのではないでしょうか。

そして、これらの要素を「ライトウェイトスポーツとは、そういうもんだ」と許容できた瞬間、NAロードスターでなければダメになるというのが良く分かります。例えるならば、その辺の森で走っていた野生の馬を捕まえてきたのがNA6。チョットだけしっかりした馬を捕まえてきたのがNA8。

馬に鞍をつけたり、毛並みを整えたりしたて誰でも乗れるようにしたのがNB。それらの馬を再現しようとブリーディングしたのがNCやND・・・みたいなイメージです。

どの馬も、楽しいと思うのですがNAロードスターは走る楽しさを追求するためだけに存在しているクルマ、とにかく野生の馬なのです。

NB以降は、安全性能や環境性能など時代に見合った加飾をされています。そこで、マツダ・ロードスターのルーツってどんな感じなんだろう?とNAに乗った瞬間、その荒ぶれる世界感にヤられてしまう感覚を今回はとても感じました。


ちょっとだけ覚悟があれば

ただし、今回はメンテナンスをしっかりされているというロードスターであったという前提の話です。いざ所有するとなると「覚悟」が必要であることも記載しておきます。

最終型でも1998年なので、約20年前のクルマです。パーツ供給はレストアプログラムで安泰っぽいですが、それなりのトラブルと、コストはかかるでしょう。この覚悟はオーナーにとってもクルマにとっても重要です。

「愛情を持続させることができるか」なんて、今更NAのオーナーに問うまでも無さそうですが、この世界感にハマる事ができれば、見合ったリターンは絶対にあるでしょう。特に、NAのネガティブな要素は、今の時代では“味わえない”ポジティブな要素でもあります。

しかがって、ただの機械ではなく自分の“愛馬”になってしまったら、どんな事も許せてしまい、手放せなくなってしまうのがよく分かります。

また、屋根を開ければこれらの屁理屈はどうでもよくなります。FRでオープンスポーツを、五感を使って楽しむ・・・それだけの事を満たすシンプルかつ最高の素材なのです。ステアリングを握りアクセルを踏むと、その世界感には感動を覚えます。「誰もがしあわせになる」とはよくいったものです。

繰り返しますが、五感を刺激するけど、かなり危ないクルマ、野性的なスポーツカー。そんな魅力がNAロードスターの世界感ではないかと私は思いました。これが市販されて、生き残ってくれただけでも感謝です。走りの根っこ(DNA)は間違いなくNB以降に活かされていますから。

関連情報:

M2 1001(NA6CE改)試乗記

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