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国産最後の5ナンバーFRクーペ
日本の公道を走るクルマには、すべからく「ナンバープレート」が装着されています。
ナンバープレートは「上部3桁の数字」でクルマの区分を表示しています。例えば5ナンバー(小型乗用車)は「全幅1700mm以下、全高2000mm以下、全長4700mm以下」かつ「排気量2000cc以下」と規定があり、車体サイズ、排気量のいずれか一方でも超えていれば3ナンバー(普通乗用車)に区分されるのです。
かつて、自動車に絡む税金はナンバープレートの区分により違っていました。しかし現在の自動車税は「排気量」、自動車重量税は「車両重量」により区分されるので、ナンバープレートの分類はクルマのレギュレーションを表す名残にしかなっていないのが現状です。
もちろん悪い話だけではありません。5ナンバーのレギュレーションが生きていた時代のクルマは、その定義内に収めるためあらゆる努力が成されていました。5ナンバーは軽量、コンパクトを画に描いたような規定であり、エントリークラスのスポーツカーはそれに準じて試行錯誤されていたのです。
そんなクルマが存在した時代の名残、最後の「国産5ナンバーFRクーペ」がNBロードスターベースの「ロードスタークーペ」です。
ロードスタークーペ企画背景
国内で「マツダロードスター」はペットネームとして認知されている面はありますが、「ロードスタークーペ」は矛盾した和製造語としてエンスージアストの間で物議をかもしました。ロードスターは「幌馬車(=オープンカー)」、クーペは「二人乗り箱車」という意味になるからです。
ただ、ネーミングはさておいてとても意義があったのは、国産でも珍しい「フィクスヘッドクーペ」・・・つまりオープンカーに固定の屋根を取り付けたものが市販されたことです。
初代ロードスター誕生以来「クーペモデル」は幾度も検討を重ねましたが、量産化にあたり統合がとれず断念していた経緯がありました。
そこで今回は極少量生産を前提として、投資のミニマム化を行うことで量産を実現させました。例えば生産ラインをマツダだけではなく特装車を作成するマツダE&Tの工場を利用することや、コンセプトカーで使用した金型を量産車にも流用するといった手段が取られたのです。
2004年当時の自動車マーケットの多様化は、特にカスタマイズカーにおける需要の高まりがありました。「RSクーペ(コンセプトモデル)」の参考出品を行ったオートサロンの入場者数は東京モーターショーに匹敵するほどの増加傾向にあり、個としてのカスタマイズだけでなく、メーカー発信の「モデリスタ(トヨタ)」「オーテック(日産)」「STI(富士重工)」といったブランドが次々に市場参入していったのです。
ロードスタークーペ商品コンセプト
満を持して投入された「ロードスタークーペ」の商品コンセプトには、なかなか素敵な文言が並びます。
「量産のクルマにはない個性と自由な表現を持ったクルマを提供する」
最大のポイントは、NBロードスター自体がもつリヤフェンダーの抑揚を活かし、キャビンからリヤフェンダーへ流れる流麗なラインを造形することで、50年代にスタンダードだったクーペボディが再現されたことにあります。
また、フロントフェイスやエアロパーツのバリエーションモデルを投入し、クーペ化による車体剛性の向上(=走りの楽しさの深化)だけでなく、国内唯一の5ナンバーFRクーペの希少性・・・といった市場提案をおこないました。
ロードスタークーペのグレード構成
ボディタイプ3種類、グレード4構成になり、スタイリングを確立させるためにキャブサイド、ルーフおよびトランクリッドの構成部品は新規作成で対応しています。気になる増加重量はベースのNBロードスターに比べて約+10キロ増、幌の廃止があるとはいえ新規パーツは「鉄(スチール)」で出来ているのを踏まえると、ライトウェイトスポーツの意地は守った感じになっています。
<Roadster Coupe/Type S>
ロードスタークーペはNBロードスターのグラマラスなボディ曲面を活かした「小粋で魅惑的な2シータスポーツクーペ」を表現しました。担当はNAロードスタークーペ「F010」と同じく福田成徳氏が入魂したデザインです。
マツダはロードスターの市場調査で全国のロードスターオーナーズクラブと交流し、NA/NBのキーワードとして「ほっとする」「懐かしい」「飽きの来ない」「ヨーロッパの香り」「小粋で魅惑的」といったキーワードを拾っていました。
そのエッセンスを具現化するため、外観テーマは魅惑的な造形美「ネオノスタルジックデザイン」としています。
<Type-A>
フロントフェイス、オーバーフェンダー、各種スポイラーでデコレーションし、内装は黒で統一して「イタリアンテイスト」を表現したMT専用モデルです。
<Type-E>
「RSクーペ」をそのまま商品化した、「クラシカルでエレガント」な「Type-E」というモデルも存在します。こちらはロードスターの歴史の中で、唯一のAT専用モデルとなっています。