レストアプログラムに思う事

レストアプログラムに思う事

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歴史的快挙!NBロードスターのレストアは?


NBロードスターは現時点で対象外ですが、初期N型プラットフォームとしてパーツコンバートが可能であることへの希望と、マツダの「文化を継続する」心意気は賞賛せずにはいられない「NAロードスターレストアプログラム」。

海外ではフェラーリもポルシェもランボルギーニもメーカー公認で行われる旧車にレストアサービス。実は国内でも「NSX」にはメーカー公式プログラムが存在しています。

ただ、ロードスターは歴史的名車と認定されていても、約30年前に200万円台(当時価格)で提供していたアフォーダブルスポーツカーの筆頭です。

そこに約600万円(車台価格別)をかけてコンディションを取り戻したいファンが存在するインパクトは大きく、さらにレストアだけでなくパーツ自体も普通にディーラー購入できるというのは、ユーザーメリットのとても大きいサービスになります。なお、現時点でも採算は取れているという大本営発表がありました。

最近はメディア露出が減りましたがロードスター近辺だけではなく、刺激された(?)メーカー各社が自社スポーツカーの部品再生産を始めるなど、色々な意味で意義のあるニュースだったようです。

そんなざわついた雰囲気が少し落ち着いてきたなか、旧車に片足を突っ込んでいる(ネオクラシック)NBロードスターの視点でこのプログラムを振り返ってみようと思います。

とてつもない期待値


NBロードスター乗りとして、今回の大きな印象は「もしかして、ずっとNBに乗ることが出来るかも」という、とてつもない期待値です。

かつて、旧来のスポーツカー・・・とりわけNAロードスター乗りの先輩方がおこなっていた【修理&未病対策】は、はたで聴いていても頭が下がる思いでした。パーツがなくなる前の今のうちに〇〇を交換、全国ストック残り〇個・・・などの情報が飛び交うたび、NBロードスターも近い未来にそういう不安に駆られる予想をしていました。

しかし、このプログラムによって「クルマを降りる理由」の片翼、基本的なパーツの供給は継続される流れになっています。NBロードスターはいわばNAロードスターのビックマイナーチェンジ的な存在。この恩恵にあやかることができるのです。

「幌」の駆け込み騒動


このプロジェクトで個人的に面白かったエピソードは「幌」の話です。NAロードスターのビニール幌はこのプログラム以前にサプライヤーが供給をストップしていました。(何故かNDロードスター発表会の時に、会場で仲間内の話題になっていた)それに合わせてマツダでは、ビニール幌「素材」の大量ストックをおこなったそうです。

しかし「ビニール幌が無くなる」という噂が後押しをおこない、結構なペースでビニール幌が完売しました。(残り〇個と、友人ネットワークで情報共有されていました)

ちなみにその時点でも、NBロードスター時代にアップデートていたクロス幌が購入可能でした。ただ、マツダは「オリジナル通りのビニールが欲しい」というNAロードスター乗りのこだわりに対応し、あえてオリジナルに準じたビニール幌の再生産をレストアプログラムにより再開しました。

また、オリジナルトレッドで有名な「NAロードスターの純正タイヤ」を復活させる(リプロダクション)企画も実行され、SF325(ブリヂストン)からリメイクされたものが再生産されています。当時のコンセプト「ライトウェイトスポーツにはグリップ力なんていらない、足元から歴代ライトウェイトに敬意を払ったお洒落を決める」的なコンセプトを、現代の技術で再現しているそうです。

レストアの定義とは


ざっくり「レストア」の定義を確認すると、事故や損耗が理由の整備ではなく、製造時期から年数がある程度経ったヴィンテージモデルなどを「復活」、あるいは「保存」する事を目的に修復する事を指すようです。

ちなみにレストアの概念は下記ふたつの流派があるそうで・・・

・「オリジナル部品」を極力生かした修復方法
・「動かす事」を優先しレプリカやリ・プロダクト(再生産)部品を使う方法

ここでオリジナル部品にこだわる場合は、作業スペースの確保、部品集め、説明書・整備解説書・カタログといった資料収集などに多くの時間と資金を要し、構造や考証に関する知識が要求されることから「リッチな大人の趣味」といえるでしょう。

今回のレストアプログラムを要約すれば、今までは市場(ユーザー)の要望が多いから厚意で再生産していたパーツたちを、プログラムが継続する限り提供してくれると宣言しています。つまり、クロス幌や安価なエコタイヤなどの代替品(レトロフィット)ではなく、とことんオリジナル仕様に踏み込むことができるプログラムです。

これは喜ばしい反面、個人的には「敷居が上がった」と感じた自分もいました。

オリジナルに近い状態で乗り続けるには、どれだけの覚悟(資金)が必要なのか、見当がつかないからです。だからといってロードスターのようなクルマを文鎮にすることほど本末転倒なことはありません。


なお、レストアの件は貴島主査が2017年の「NBロードスターミーティング」でもオーナーからの質問に解答されています。

今後乗り続けるにあたり、覚悟を決めたい。そこで、メーカーからなくなる前に確保しておくべきパーツはありますか?(質問)

基本的に、今はワンオフで何でも作れてしまうので、価格を考えなければそれは無い。特にNBは海外でとても売れているから、中古も含めてパーツはワンサカあるので、いざとなれば通販でもいけると思う。(貴島氏)

NB Roadster Meeting 貴島さん質疑応答(2016)

降りる(逃げる)理由が消える恐怖


価値観は人それぞれなので、趣味車にここまで入れ込むのに違和感を得る方もいらっしゃると思いますが、今回のレストアプログラムは、(極端な話)金銭的な覚悟があれば、ロードスターに乗り続けることが出来ます。

つまり、「降りる理由」がコスト(お金)になると、自らの不甲斐なさを表明するようなもので・・・一番避けたい選択肢です。つまり、【パーツがないから降りる】という言い訳が許されない、嬉しくもあり重くもある、逃げることができなくなった企画ともいえるのです。

したがってレストアプログラムを通じて得たことができたのは、自分のロードスターに対するスタンスです。

それは、オリジナルにこだわらなくとも・・・つまりコンバートパーツでも、何かが機能しなくても「走れる」のならばそれでいい・・・という持論です。不人気ゆえにアフォーダブル(お手軽)の本質を突いたスポーツカーであることがNBロードスターの魅力であるからです。

ともあれ、マツダの英断には感謝をしています!

関連情報:

ロードスター・レストアプロジェクト備忘録

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