サーキット・ロードスター「グローバルMX-5カップカー(ND2)」

サーキット・ロードスター「グローバルMX-5カップカー(ND2)」

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世界統一基準で戦い、マツダモータースポーツの登竜門になっているグローバルMX-5カップ。残念ながら日本開催は中止になりましたが、北米ではカップレースカーがND2ロードスターに進化して、シーケンシャルMTやハードトップなども用意されています。

「グローバルMX-5カップ」シリーズ


2003年から北米で始まった「マツダスピードミアータカップ(NA、NB)」、2006年の「MX-5カップ(NC)」を経て、2016年にスタートしたマツダ「グローバルMX-5カップ(Mazda Grobal MX-5 Cup)」は、NDロードスターのレースカーで戦う世界統一基準のワンメイクレースです。

ベースとなる見慣れたNDロードスターの扱いやすさ、そして白熱するレース展開はファンも多く、若きレーシングドライバーの登竜門として大成功しています。なお、USシリーズはIndyCarによって認可されAndersen Promotionsによって運営されています。

「グローバルMX-5カップ」は、2020年には5億ドル以上の賞金を発表しています。チャンピオンには$200,000(約2100万円)の奨学金、新人王(ルーキーチャンプ)には$75,000の奨学金、さらにシリーズ上位5名までの賞金が準備されています。このレースはマツダUSモータースポーツプログラム「MRT24」における、最初のプロフェッショナルステップでもあります。

MX-5カップ・レースカー


MX-5カップ・レースカーは、広島工場から新品のロードカーとして出荷された個体を、ノースカロライナ州ステートビルのロングロードレーシング社に輸送され、レースカーとして換装されます。


製作のプロセスは、量産車の分解、溶接、塗装、ロールケージと内装、そして250以上のモータースポーツパーツを組み込み、レースカーとして仕上げていきます。スカイアクティブ2リッターエンジンを含む、クルマ自体の基本コンポーネントは、イコールコンディションを保つために封印されています。

また、出場するカップレーサーは、テクニカルサポート、ドライバーコーチング、パーツの販売とサービス、さらには専門的なマーケティング活動など、レース活動全てにおいて専任のチームサポートを受けることができます。つまり、週末のレースに参加するのみでも経験豊富なプロチームをレンタルできるのです。

世界統一仕様のスペック


MX-5カップカーの諸元は以下の通りです。
なお、これは発表当時のもので、現在はNC2レギュレーションに更新されています。(後述)

車両名 Mazda MX-5(日本名 マツダ ロードスター)
車両開発/車両製作 Long Road Racing (USA)
改造範囲 エンジン、ECU等は、車両製作時に封印され改造不可
タイヤ、ホイール、ダンパー、ブレーキなども指定部品とし、イコールコンディションを徹底
ボディタイプ 2ドア・オープン、左ハンドル、アメリカ仕様 (ソフトトップなし、サイドウィンドなし)
ボディカラー アークティックホワイト
インテリアカラー ホワイト
エンジン SKYACTIV-G 2.0L 封印
最高出力 155hp<157ps>@ 6,000 rpm
最大トルク 148lb-ft<201N・m> @ 4,600rpm
専用 エンジンコントロールユニット GEMS製
専用 エキゾーストシステム Kooks製
専用 オイルクーラー Setrab製
専用 大型ラジエター C&R製
専用 強化エンジンマウント Long Road Racing 製
トランスミッション SKYACTIV・MT 6MT 封印
専用 強化ギア(3rd、4th) EMCO製
指定 強化クラッチキット ACT製
専用 オイルクーラー Setrab製
リヤデファレンシャル トルクセンシング式スーパーLSD 封印
専用 デフ&ミッションオイルクーラー Setrab製
専用 強化マウントブッシュ Long Road Racing 製
サスペンション 専用 サスペンション Multimatic製2WAY11段減衰力・車高調整機構付、封印
専用 フロントスタビライザー(調整式)
専用 ピロスタビリンク
専用 レース用ホイールスタッド、ナット MSI Racing Products製
専用 クロスブレースアッパーストラットバー Long Road Racing 製
ブレーキ 専用 フロントキャリパー Brembo製北米標準設定品
専用 ブレーキパッド前後 PAGID製
専用 スリット入りブレーキローター Brembo製
専用 ステンメッシュブレーキホース GOODRIDGE製
専用 ブレーキ冷却ダクト Long Road Racing 製
タイヤ 指定 ドライ 215/610 R17(215/45R17相当) BFGoodrich製 g-Force slick
指定 ウェット 20/61-17 BFGoodrich製 g-Force P2G wet
ホイール 専用 アルミ鍛造ホイール 17×7.5J RAYS製
安全装備 専用 ロールケージ Long Road Racing 製、ACCUS承認
専用 セーフティウインドウネット(ドライバー左右) Safecraft製
専用 FIA認定自動消火器 Lifeline製
レーシングハーネス Safecraft製
専用 シートブラケット 注:シートは含まず
その他 専用 スイッチパネル Long Road Racing 製
ステアリングホイール Max Papis製
専用 リチウムイオンバッテリー Battery Tender製
指定 指定データロガー AIM製MXL2
専用:納車時にベース車両から部品を変更・追加し、以後の変更を禁じる部品
指定:納車後に変更の必要な部品でありながら、それを指定する場合
無印:選択は自由

MX-5カップはND2へアップグレード


グローバルカップカーは、2リッターエンジンのマイナーチェンジで出力が向上した「ND2」にコンバージョンするキットが用意されています。国内では商品改良が都度おこなわれるのでNDの世代名を耳にすることは少ないですが、北米ではパワーユニットが換装されたNDロードスター(MX-5)を「ND2」と正式に呼称しています。

国内ではロードスターRFでも2019年7月より採用された新型2リッタースカイアクティブエンジンは、181馬力(※英馬力)と151 lb.-ft(204.7N・m)のトルクがもたらされ、エンジン回転数も7500rpmに引き上げられました。従来よりもプラス26馬力の出力向上は、アクセルペダルを踏んだ瞬間から違いが分かると評価されています。

現在、最新のカップカーはND2をベースにしたもので生産開始されており、「ND1」の救済処置としてMX-5カップカーを「ND2スペック」にコンバージョンするサービスが、マツダモータースポーツおよびロングロードレーシングから提供されています。ND1の変換コストは、5月まで30%割引の$16,797(約180万円)でした。


なお、グローバルカップはカップカーが$68,000(約730万円)で手配できることも大きな魅力とされています。これは、他のレースシリーズでも類をみない敷居の低さになっているそうです。マツダは200台のグローバルMX-5カップカーを世界中で販売しており、ND2は注文待ちになっている状態です。


なお、2019年からは車両規則も緩和され、油脂類の自由化に加え、ブレーキパッドの選択肢(ただしASEA基準認定品)も広がっていました。さらに、これまで封印扱いだったトランスミッションもチームメンテナンスが可能になったので、速さとともに、総合コストも抑えることが可能になりました。

ND2主なオプションプログラム

シーケンシャル6速ギアボックス $11,696 ¥1,286,560
BF Goodrich DRY 215/610 R17(215/45R17相当) $300 ¥33,000
BF Goodrich RAIN 20/61-17 $320 ¥35,200
Rays Global MX-5カップホイール $345 ¥37,950
バラスト重量、10ポンド $30 ¥3,300
バラスト重量、5ポンド $20 ¥2,200
フェイシアサポート(※フロントまわり補強・修復) $2,250 ¥247,500
マツダモータースポーツハードトップ、税込。送料、ブラケット、取り付け $3,600 ¥396,000
ティアオフ&ブレース付きのポリカーボネート製フロントガラス $1,450 ¥159,500
右側の乗客キット $750 ¥82,500
必要なハブとケーブルを備えたAiM Smarty Cam $1,250 ¥137,500
AiMエンジンオイル入力、オイル圧力、温度 $525 ¥57,750
AiMトランスミッションおよび温度管理 $250 ¥27,500
ピットレーンスピードリミッター $750 ¥82,500
ダンパーレンチセット $125 ¥13,750
モトローララジオパッケージ、ハーネス、内線アンテナ $995 ¥109,450
スロットルボディのアップグレード $493 ¥54,230

カスタムデザイン・ラッピングとグラフィックパッケージも別途注文可能です。
※円レートは110円で計算している、あくまで参考値です。

残念ながら、日本開催は中止


グローバルカップは、鳴り物入りのプレスリリースで日本開催も発表されました。世界同一仕様車による本格的なワンメイクレース「GLOBAL MX-5 CUP JAPAN」の主管はNR-A車両で戦う「ロードスターパーティレース」と同じく株式会社ビースポーツが担い、マツダは大会協賛となりました。

さらに、「クスコ」ブランドで有名な株式会社キャロッセから、専用レース車両「MX-5カップ レースカー」が2016年8月1日より販売開始されました。

車両本体価格:7,980,000円(税別)


2017年、2018年と開催されたグローバルカップジャパンではありましたが、発表から年間エントリーをおこなうチームがなく、2019年2月28日にレースとして成立しないという判断が下されました。

そして「この事態を重く受け止めて、2017~2018年シーズンの開催をもって、グローバルMX-5カップジャパンの開催休止を決定」とプレスリリースがなされました。

実は、レース存続のために直前(2月15日)にMX-5カップ用のレンタルカーも発表されていました。新車では約800万円とそれなりの価格ですが、中古マシンがベースとはいえレンタルカーは年間で220万円(税別)となっており、さらにキャロッセによるメンテナンスによりトランスミッションなどは新品が搭載されるはずでした。また、スペアホイールや練習用中古タイヤも付いているとのことで、かなりお得感があったものでした。

しかし、残念ながら日本から世界へロードスターでチャレンジする道は絶たれ、公式サイトも閉じてしまいました。


マツダはかつてより(国内では)イベント活動自体を主催しないスタンスを貫いていますが、グローバルカップはマツダ肝いりで始めた世界共通フォーマットの新シリーズだったはずです。協賛というスタンスであっても、最初の盛り上がりの「美味しいところ」だけ持っていった感は拭えません。個人的には少々残念です・・・

なお、2020年シリーズは、サーキットオブアメリカ、バーバーモータースポーツパーク、ロードアメリカ、ミッドオハイオスポーツカーコース、ポートランドインターナショナルレースウェイ、ウェザーテックレースウェイ、ラグーナセカにて、インディカーシリーズをサポートしながら、全12ラウンド開催予定です。MX-5は若きレーシングドライバーの登竜門として、今日も人気を博しています!

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