戦うロードスター「アバルト124ラリー」

戦うロードスター「アバルト124ラリー」

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「勝つため」のロードスター兄弟車


ワンメイク、またはプライベーターとして活躍するロードスターベースの競技車は数多ありますが、混生する自動車競技のレギュレーションに対応をするため作られたロードスターは、マツダオフィシャルではまだ存在しません。

その一方で、2015年から欧州のWRC(世界ラリー選手権)と併催されているFIA R-GTカップにはNDロードスターの兄弟車フィアット124スパイダーベースの「Abarth124 R-GT」が活躍しています。

R-GTカップのベースになる「グループR」とは、二輪駆動車向けのラリーカー規則で、一般的にはクーペスタイルの車種が参戦しているクラスです。

自動車競技「グループR」クラスとは


世界ラリー選手権といえば、かつての国産勢では三菱やスバル、いまもトヨタが力を入れているカテゴリーで、2022年にはパワーユニットの電動化が決定しています。なお、最後のガソリンエンジンで勝利するために、変態じみた作りこみのホモロゲーションカー「GRヤリス」をトヨタは発売しましたが、2021年に間に合わないという噂が・・・ともあれ、11月のラリージャパンが楽しみです。

ともあれ、市販車ベースの競技車が悪路をものともせず、全世界の公道で戦う姿は鳥肌モノです。

なお、ラリー選手権におけるホモロゲーションとは、ざっくり書くと【同一車種】が【一定期間内】に【一定数量以上生産】されたクルマを指し、メーカーがFIAから承認を得ることで、そのクルマで競技参戦できるというルールです。


しかし、「グループR」ではホモロゲーションを取得する必要がなく、厳格な規則も多くはありません。最大の特徴としては、パワーウェイトレシオが規定値を超えないように(34.6 kg/kw)リストリクターを装着することと、四輪駆動車がベースの場合は二輪駆動に換装することです。また、パワーユニットは同グループ内の量産エンジンに換装することが可能です。

なお、参戦経験のある車種は下記の通り。

ロータス・エキシージR-GT
ポルシェ997・R-GT
アバルト124ラリー・R-GT
アルピーヌA110

※ポルシェ・ケイマンはR-GTコンセプトまで発表されましたが、残念ながら参戦には至りませんでした。

「アバルト124ラリー」のルーツ「フィアット・アバルト124ラリー」


アバルトは、1949年にイタリア・トリノで設立されたプライベーターが始まりです。自動車競技の傘下、自動車部品の改造とともに、自動車競技へ参加することで実績を残し、1971年にフィアット傘下となりました。

その後、フェラーリ、ランチア、アルファロメオなどの競技車両を開発していきます。有名どころでいえば「ランチア037ラリー」「ランチアデルタ・インテグラーレ」「アルファロメオ155 V6 TI」などがあり、カーレースにおけるイタリアンマシンの活躍を支え続けています。


「アバルト124ラリー」のルーツは、1972年にWRCホモロゲーション取得のために開発された「フィアット・アバルト・124ラリー」にまでさかのぼります。同車は1973年~1975年シーズンのフィアットワークスチームのラリーカーとして活躍しました。


なお、ラリーカーとしては伝説の「ランチア・ストラトス」と同じ時期の活躍になりますが、ランチアも同じフィアットグループだったので政治的にモメた話は有名です。


なお、現在のアバルトは組織改編され、フィアットのチューニングモデルを担うブランドとして市販車の販売展開を行っています。現在市販されている「アバルト124ラリー」のヘリテージルック(※フロントまわりのブラックアウト塗装)は、旧124ラリーのオマージュです。

「アバルト124ラリー」


ベース車両は、マツダとの業務提携により市販されているNDロードスターの兄弟車、「フィアット・124スパイダー」です。日本国内ではそのチューニングモデル「アバルト124スパイダー」のみが販売されていますが、エンジンのみフィアット(イタリア)から輸入し、全車が広島のマツダ宇品第1工場で生産されています。

なお、NDロードスターの型式番号「ND#RC」に対して、124スパイダーは「NF2EK」とNプラットフォームの型式で「F」が振られています。


ラリー仕様と市販車との違いは数多ありますが、一番わかりやすいところはパワーユニットです。市販の124スパイダーシリーズはフィアット製1.4L マルチエア・ターボエンジン(直列4気筒SOHC16バルブ)ですが、ラリーカーは300馬力の1.8Lマルチエア・ターボエンジンを搭載しています。


もちろんボディ各部の補強にくわえて、幌から固定ハードトップへ換装されていたり、パドルシフト付きのドグリング式シーケンシャルトランスミッションやトラクションコントロールシステムが実装されています。


選手権からのフィードバックによりハイ、ミディアム、ローグリップ、ウェットの4種類のマッピングをアバルト・レースチームが作りこみ、タイヤのグリップ状態に応じて、最適な駆動トルクを得ることができます。


さらに、ターマック(舗装路)だけではなくグラベル(未舗装路)ロードキットも提供されています。グラベル仕様では車高が40mm引き上げられ、ノーマルの18インチホイールから15インチホイールへ換装されるのと同時に、専用ブレーキディスクへコンバートがなされます。

なお、「アバルト124ラリー」はレース用のパッケージなので公道仕様は考えていない前提がありますが、サスペンションは標準モデルと同じシャシーの固定位置に装着されています。


その価格は£155,000(約2,060万円)からで、ファクトリー仕様のラリーカーをだれでも購入することが可能です。なお、2018年、2019年のR-GTカップで「アバルト124ラリー」はカップタイトルを獲得しています。

もちろん、競技車両ですから市販車と違う部分は多くあります。ただ、NDロードスターのシャシーがロングノーズになったのは、社外エンジンを載せるマージンを稼ぐため・・・という話も耳にします。ともあれ、ロードスターの兄弟車が切磋琢磨している姿は、素直にカッコいいですよね!

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