パワーステアリングフルードの交換

パワーステアリングフルードの交換

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今や軽自動車ですら電動ステアリングが採用される時代ですが、NA~NCロードスターには油圧式パワーステアリングが採用されており、その機構にはフルード(オイル)が使われています。

パワーステアリングフルードは油脂類でありながら、なかなか交換に目が届きません。なぜなら、交換タイミングがあまり具体化されていない、むしろ無交換指定だからです。でも、これを放置するのはハンドリングマシンのロードスターにとって由々しき事態。作業も簡単なので、DIYの交換作業にチャレンジします。

もちろん、無交換指定ならばやらない方がいいのでは?という意見もあると思います。ただ、NBロードスター現役当時の自動車は10年10万キロで廃棄されるのが普通だった時代。15年15万キロとはるかに耐用年数を超える愛車にとって、たかがパワステフルードであれど、デトックス効果があることを期待します・・・!

パワーステアリングフルードはATFと同一指定


最新のNDロードスターであれば電動ステアリングですが、NA~NCロードスターは油圧式パワーステアリングが採用されています。油圧式の反応も含めてハンドリングの「味付け」がチューニングされているのです。

参考→https://mx-5nb.com/2020/01/11/kijima2017-14/

しかし、油圧式であればパワーステアリングフルードというオイルが使用されています。このフルードはオートマチックトランスミッション用のフルード(ATF)と同じものが使用されていることが多く、ATFは寒冷時でも「オイルが固くならず」、高温になっても「オイルがサラサラになりにくい」性質が要求されるので、パワステフルードとしても都合の良いオイルなのです。

実際にNBロードスターも「純正ATF(M-ⅢまたはD-Ⅱ)/0.81L」と指定されています。


一方で、ATF規格はややこしく、マーコン(MERCON)やデキシロン(DEXRON)などのメジャー仕様を中心に、かなり細分化された規格が存在します。それは自動車各メーカーの要求性能が違うため、添加剤のブレンドが異なるからです。ただ、一般的なATFはエンジンオイルの粘度「SAE 5W」相当であり、アフターマーケット向けのATFはエンジンオイルと同様に汎用性を持たせたものが販売されています。

したがって、ほぼ旧車のNBロードスターであれば問題はなさそうですが、一方で【細やかな電子制御】が行われる最新のクルマにおいては、素直にメーカー指定のものを使用したほうが効果は高そうです。

ちなみに、工業機械におけるオイル(油)は、「オイル」「フルード」と用途別で名称を使い分けます。オイルは金属同士の潤滑や緩衝を目的とするもので、フルードは潤滑や緩衝と同時に油圧作動を目的としたオイルになります。

NBロードスターのパワステフルード交換要件(参考)


実は、NBロードスターの整備要綱には「パワーステアリングフルード」の交換指定はありません。

しかし、海外のミアータでは「半年毎/10,000kmごとに確認する」という項目が存在します。一応ディーラーで定期点検や車検整備を受けていれば油脂類チェックがあるので、確認してくれているかもしれません。ただ、そういう環境にない場合は、自分でチェックする必要があります。

そこでATフルード自体の確認要件を調べてみると「透明な赤が正常、茶褐色~黒は点検」と、整備書では単純に【色で判断】する指定が記載されています。さらに、NBロードスターのATFは(シビアコンディションで)「60,000kmごとに交換」と指定されているので、60,000kmはひとつの交換時期とみていいかも知れません。

なお、パワステフルードが劣化するとアシスト不足が発生し、ステアリング操作が重くなったり、異音が発生する原因になるそうです。


実際にロードスターを確認すると、エンジンルームの左ヘッドライト奥にパワーステアリングフルード用のタンクがあります。


それを開けるとレベルゲージが付いているので、規定量や色の確認が行えるのです。余談ですが、NBロードスターのこのパーツは対策品になっており、NAロードスターはサーキットなどでスポーツ走行をするとフルード漏れの症状があったとか。


スポイトでフルードを抜き取ると「赤い色味」は残っていましたが「透明」かというと微妙でした・・・ちなみに、本当に劣化した状態だと、フルードは焦げ臭くなるそうです。

そこで、純正ATFを注文しようとするとペール缶や使い切りのものしか見つかりませんでした。ただ、ATFはある程度共通規格である前提があるので、ホームセンターでシグマの汎用パワーステアリングフルード(先の画像にあった黄色い缶)を購入してきました(価格は約1200円ほど)。

このタイプであれば「蓋」があるので、調整や注入などの作業がしやすいという判断です。

パワステフルードの交換(希釈作業)を行う


本来であればフルードを完全に抜くのが完璧な作業だと思われますが、残念ながら(一般的にも)油圧パワーステアリングのラインにドレンは存在しません。圧力がかかるライン(ホース)なので、フルードが漏れるリスクを避けるためでしょう。

したがって、一部ラインを抜いて「フルードを抜く」方法が王道でしょうが、ホース交換やエア抜きなど作業が大掛かりになってしまうことと、失敗のリスクがあるので、今回は簡易にできる「希釈」を行うことにします。


①タンクからフルードを抜く

まずは100円ショップで購入してきたスポイトで、タンクから抜ける分だけフルードを抜いていきます。大き目のペットボトルを用意しておくと便利です。一回の作業で約200ml前後抜けました。


そして、新品のフルードを同じ分だけタンクに注ぎキャップを閉めます。ちなみに、慎重に作業を行っていてもフルードはこぼれることがあるので、ペーパーウエスで周りを保護しておきましょう。


②エア抜きを行う

さらにフルードを循環させるため、エンジンをかけない状態でステアリングを左右いっぱいに3~4回切ります。ステアリングロックがかかってしまったら、イグニッションキーを指せばロックが外れます。これ、いわゆる重ステ状態ですが、めっちゃ疲れます・・・が、これがフルードの「エア抜き作業」になるので、重要なアクションです。

ちなみに、フロントをジャッキアップするとステアリングは軽くなりますが、ジャッキアップ状態で乗車するとフレームに負担がかかりそうなので、今回は接地状態で頑張りました。


③フルードを循環させる

重ステでエア抜き作業を行ったあと、エンジンに火を入れてステアリングを左右いっぱいに1~2回切ります。これでフルードがタンクから一巡するので、新しいフルードと古いフルードが混ざり希釈されるのです。


この①~③の作業を、私の場合は5回ほど行いました。規定量は0.81Lですが、1Lのフルードを使い切ったので、完璧にとはいえませんがそれなりに効果があると思います。最後に、レベルゲージで量の確認を行いパーツクリーナーで飛び散ったフルードを丹念にふき取っておきます。


最後の作業を行ったあと20分ほど近所を走ってきたのち、エンジンルームを確認しました。タンクからフルードは漏れていないので、とりあえず大丈夫なようです。

ちなみに、乗り味が大きく変わったかというと、気持ち「しっかり感」とでもいいましょうか、ステアリングインフォメーションが増したような気がしますが、正直大きな違いは感じませんでした。ただ、15年15万キロ無交換だった状態を鑑みると、自己満足ではありますが、精神衛生上スッキリできました。

関連情報→

NBのシャシーセッティング(C-4)

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