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カッコいいけれど劣化する、レザーシート
歴代ロードスターはVS系グレードを中心にレザーシート(革シート)が採用されています。
正直、利便性や量産性、環境性を鑑みればファブリックシートの方が一枚上手ですし、大昔はファブリックシートの方が「高級」でした。ただ、自動車文化が熟成していくとともにレザーシートは「様式美」として残った文化であることがポイントです。極端な話、電気自動車のリアバンパーにマフラーを連想するガーニッシュが残されているようなものです。
もちろんレザーシートのお洒落でカラフルなインテリアは所有欲を満たしてくれるし、愛車を大切にする理由にもなります。しかし、レザーシートにも弱点があります。
特に、NA/NBロードスターのシートはオープンカーとして様々な環境に晒られることから、放置していると硬くなり、表面が割れ、擦れた表面は塗装がハゲて毛羽立ちます。つまり、こまめなメンテナンスが必須になります。ちなみに、油分を補うと長続きするといわれていますが、レザー表面は塗装されているので、それほど効果は期待できません。
つまり、少しづつ経年劣化が進んでいきまして・・・生産から20年近くなる私の愛車も、助手席のコンディション維持が厳しくなってきました。パンチング加工された表面に亀裂が入り、素人で修正するのはキツそうです。
そこで、対応を行いました。
レザーシート補修、3つの選択肢
費用対効果、メリット・デメリットを踏まえたうえで、シートコンディションを保つにはいくつか選択肢があります。コストをかければびっくりするようなリフレッシュも可能ですし、アフォーダブルなDIYで済ますことも可能です。私の場合はまさに後者、助手席はそんなに使う機会がないので、なるべくコストは抑えたいのです・・・
①シート交換
NAロードスターのレストアプログラムでも、(現時点では)シートの再生産は行われていないので、NA/NBロードスターのオリジナルな新品シートは、今や手に入れることはできません。そうなると、個人売買やオークションで探すことになりますが・・・後者は正確なコンディションを掴むことが困難(博打)です。オリジナルに拘らないのであれば社外シート(バケットシートなど)に交換する手もあるでしょう。
拘わりがなければファブリックは手に入りやすいので、そういった対応も可能です。なお、VS系のレザーとなると20,000円前後が相場のようです。また、NA/NBロードスターではシートレールごとポン付けすることが可能ですが、シートベルトアンカーの取り付け位置が異なるので、若干の加工が必要です。
ただ、シートは意外に大きく「置き場」に困るので、今回は見送りました。
②シートの補修
マツダ・レストアプログラムのレポートには「復刻生地を使ってシートの張り替え」と記載があるので、問い合わせればオリジナルレザー表皮の購入ができるかもしれません。また、有名ショップではシート張替えサービス(&キット販売)を行っているので、カスタマイズも含めた補修(フルレストア)が可能ですし、補修専門業者さんもあります。なお、かつては安価な張替えキットもあったようですが、現時点ではそれなりの出費(4万〜)が相場のようです。
安価に済ませたいなら専用補修材(アドカラー)などでDIY対応も可能です。アドカラーは種類も豊富だし混色して「色を作る」こともできるのですが、明るい色味を作るのは、少しコツが必要です・・・
参考→https://mx-5nb.com/2021/03/08/spring-maintenance/
③シートカバー
作業の敷居が低く、効果も期待できるのがシートカバーです。汎用品であれば安価(数千円)に購入することが可能だし、豊富なカラーラインナップが揃っています。しかし、ロードスター専用品でないものは、ある程度見栄えの妥協が必要です。
実際、私もベージュの汎用シートカバーを装着していたのですが、正直「よだれかけ」みたいで満足はできませんでした。ただ、子供が小さい頃にお菓子をこぼすので、シートカバー本来の意味では大活躍してくれました。
一方、コストをかけることが許されるならば、歴代ロードスター専用のシートカバーも多数存在しており、黒であれば意外と安価に二脚分が揃います。しかしVS系特有の明るい色は意外に選択肢が少なく、それ以上に困ったことが起こります。
ロードスターVS系の問題、シートカラー
VS系の明るい内装はカッコいいけれど、頭を悩ますのはインテリアカラーです。
カタログでは「ユーノスロードスターVスペシャル(NA)」も、「マツダロードスターVS(NB1,2)」もインテリアカラー(レザーシート)は「タンカラー」と記載されています(※NBの広報資料には「タン(淡いベージュ)」という記載)。しかし、同じ色名でも(実車を見れば明らかですが)微妙に色合いが異なります。
2脚ともレストアするのであれば「色味が近しければいい」と突撃できますが、せっかくコストをかけるなら愛車のインテリアとマッチングするか色味を確認したほうが幸せになれそうです。私は車内でスマートフォンに表示した色とインテリアを見比べました。
ちなみに「タン」とは「淡い茶色」のことで、その由来は皮革のなめしに用いるタナム(オークの樹皮)にちなんでいます。NAのタンは明るく(キャメルと捉えることもできる)オーガニックな味わいで、NBタン(NB1,2)は少しだけ落ち着いたシックな色合いになっています。
NB3,4(+NRリミテッド)のVS系内装色は、より明るい「ベージュ」に変更されました。ベージュとは「染めていない羊毛の毛織物」のことで、極めて薄い黄色ないしは茶色を指します。ロードスターのベージュ内装は、クリーンで上品な色合いが特徴です。
さらに、ロードスターにはNAのM2 1002(+東京リミテッド)用に、「アイボリー」の内装色設定が存在しました。アイボリーとは「象牙」のことで、黄みを帯びた白を指します。「白い内装」は汚れが目立ち手入れが大変なことと、似合うクルマが限られることから「覚悟が必要」ですが、それを維持することがアイデンティティであり、苦労に見合った素敵な空間を演出してくれるカラーです。
私の場合は「NB後期専用のシートカバー」を探していたのですが、NB3なので「タン」にすると濃くなってしまい、全く似合いません。したがってベージュとアイボリーで悩んだのですが・・・蔵元商店さんの「DEFI」ブランド、純正形状・アイボリーのシートカバーを購入しました。購入金額は左右セットで約20,000円になりました。
シートカバーを装着する
シートカバーの装着は車内でもできなくはないですが、作業性と完璧なフィッティングを期すならば外した方が間違いありません。幸い、NA/NBロードスターは4本のボルトで止まっているだけなので、簡単に外すことが可能です。
カバーを装着する前にシートの清掃をおこないます。表皮を擦りすぎないように気をつけながら磨くと結構汚れていることがわかります。表面の塗装も落ちている気が・・・
カバーは上下に分かれており、かなりタイトにフィットさせることが可能なようです。
まずは座面の作業です。見比べるとベージュとアイボリーで色味が違うことが良く分かります。この時は、少し「やっちまったかなぁ」と思っていました。まずはカバーはガバッと被せていく作業から始めます。
その後、底面でベルトと紐を駆使してフィットさせます。また、腰の奥になる部分を後ろに回してマジックテープで固定していきます。
上面バケット部分も気をつけてフィッティングさせていきます。シワが入っているのは配送時に畳まれていた部分なので、日が経てば伸びてくれるでしょう(この写真の時は納得いかなかったので、被せ直しています)。また、背面部分は後ろに通してマジックテープで留めることで、綺麗なバケット形状になってくれます。
あとはシートをクルマに戻すだけですが・・・ハードトップだと、方向を間違えると入ってくれません(※頭部分から入れる必要があります)。こういう時は幌の方が作業性が高いですね。
もちろん座面には気持ちよく収まってくれます。シートバックには純正同様、車検証を収めておくことが可能です。
車内でのベージュとアイボリーの色味の違いはこんな感じです。最初はクリーンすぎるかな・・・と思ったのですが、慣れると良い感じです。少し汚れてくれれば、味が出てくれるでしょう。
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