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生産100万台を突破して「2シーターのスポーツカー(Best-selling two-seater sports car)」として2016年にギネス世界記録を更新したロードスター。
余談ですが2023年時点で継続申請していないのか、ギネス世界記録のサイトでは表示されなくなっています。あらたに「Best-selling convertible two-seater sports car」の項目が「募集中」になっているようですが・・・!
さて、2023年になり昨年までのロードスターにおける各種スコアの累計はどのような状態なのか、可能な限り情報を集めてみました。一部予測値も入りますので、あくまで参考値としてみてください。情報ソースはマツダ会社概況、EPC2、MARKLINESのデータより算出しています。
ロードスター/MX-5 グローバルスコア2022
ロードスター/MX-5 グローバルスコア | ||||
2022末時点 | 生産台数 | 世代割合 | 販売台数 | 世代割合 |
NA | 431,506 | 36.3% | 421,053 | 36.5% |
NB | 290,123 | 24.4% | 274,200 | 23.8% |
NC | 231,606 | 19.5% | 230,597 | 20.0% |
ND | 234,055 | 19.7% | 227,250 | 19.7% |
計 | 1,187,290 | 1,153,100 |
情報ソース:MARKLINES/マツダ会社概況/EPC2を基にした独自集計
まずはグローバルスコア全体像です。
生産台数と販売台数の差異は、市場に流れるまでの時間差や、実験・研究などに使われたクルマも含まれるからです。特に海外ではイヤーモデル制を取っているので、まとめてディーラーへストックを行います。生産台数ではNDロードスターが既にNCロードスターを抜いているので、2023年の集計が終わるころには世代割合が逆転するものと思われます。
それでもまだNBロードスターの生産台数には及びませんが、ロードスターのフルモデルチェンジは2026年と予想されるので、今のペースで売れ続ければNBのスコアを更新できるかもしれません。また、生産台数は115万台を超えているのでギネス世界記録で達成した記録は更新され続けていることが分かります。
ロードスター/MX-5 グローバル生産台数(暦年ベース)1998-2022
ここからは暦年ベースの生産台数集計です。ロードスターは年間30,000台(2,500台/月)売れれば成功とされていますが、ユーノスロードスター(NA)のヒットはさておいて、NBもNCも基本的には検討をしていたことが分かります。2008年と2011年に大幅に数字が落ちるのはリーマンショックによる世界的不況と、東日本大震災による物理的・経済的な影響です。
特にNC2(2007〜)は時勢により猫も杓子も「燃費」「積載量」重視の時代。スポーツカーのような趣味車は悪の象徴となる冬の時代でした。また、本来であれば2012年ごろのフルモデルチェンジを予定していた4代目NDロードスターもマツダのフォード資本の撤退により企画がゼロリセットされ、急遽NCロードスターの延命処置(NC3)が図られました。
日本経済、とりわけマツダ自体も窮地に立たされていたなか、それでもブランドピラー(象徴)としてロードスターを生産続けてもらえたことは感謝しかありませんね。一方、販売実績を読み解くと世界市場では一定以上の支持があったことが分かります。
ロードスター/MX-5 グローバル生産台数(暦年) | |||||
NA | NB | NC | ND | 合計 | |
1989 | 45,278 | 45,278 | |||
1990 | 95,640 | 95,640 | |||
1991 | 63,434 | 63,434 | |||
1992 | 52,712 | 52,712 | |||
1993 | 44,743 | 44,743 | |||
1994 | 39,623 | 39,623 | |||
1995 | 31,886 | 31,886 | |||
1996 | 33,610 | 33,610 | |||
1997 | 24,580 | 2,457 | 27,037 | ||
1998 | 58,682 | 58,682 | |||
1999 | 44,851 | 44,851 | |||
2000 | 47,496 | 47,496 | |||
2001 | 38,870 | 38,870 | |||
2002 | 40,754 | 40,754 | |||
2003 | 30,106 | 30,106 | |||
2004 | 24,232 | 24,232 | |||
2005 | 2,675 | 27,244 | 29,919 | ||
2006 | 48,389 | 48,389 | |||
2007 | 37,022 | 37,022 | |||
2008 | 22,886 | 22,886 | |||
2009 | 19,341 | 19,341 | |||
2010 | 20,554 | 20,554 | |||
2011 | 14,995 | 14,995 | |||
2012 | 15,400 | 15,400 | |||
2013 | 11,639 | 11,639 | |||
2014 | 12,225 | 12,225 | |||
2015 | 1,911 | 30,022 | 31,933 | ||
2016 | 39,829 | 39,829 | |||
2017 | 39,004 | 39,004 | |||
2018 | 27,390 | 27,390 | |||
2019 | 26,214 | 26,214 | |||
2020 | 21,780 | 21,780 | |||
2021 | 23,738 | 23,738 | |||
2022 | 26,078 | 26,078 | |||
合計 | 431,506 | 290,123 | 231,606 | 234,055 | 1,187,290 |
先代比 | 67.2% | 79.8% | 101.1% |
※欧州は東欧・西欧合計、大洋州はオセアニア地域、アジアは日本を除く累計
近年最大のトピックは2020年に起きたパンデミックではないでしょうか。世界的な景気後退によって自動車産業も大きな打撃を受け、堅調だったNDロードスターの生産台数も影響を受けていることが分かります。ロードスターに限りませんが、部品供給不足から新車の納車待ち期間が「半年待ち」が普通の時代になりました。
ただし、時勢による価値観の変化は趣味にお金をかけることにポジティブに作用しているようです。特に内燃機関で駆動するエンジンはICE(インターナル・コンバッション・エンジン:internal combustion engine)と呼称するようになり、EV(電動化自動車)もBEV(Battery Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、PHEV(Plug in Hybrid Electric Vehicle)、FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)と細分化され、全自動車の電動化カウントダウンが始まっています。
そこでNEロードスター(仮:5代目)は電動化技術を採用するとマツダより公式にアナウンスされている通り、NDロードスターは内燃機関(ICE)の最終モデルとして確定しています。そこでモデル末期にも関わらず需要が回復している驚異の状況が始まっています。
なお、NDロードスターは2リッター幌やファイナルモデルが控えており、当サイトではマツダが全車において電動化技術を採用すると宣言している2026年あたりにフルモデルチェンジすると予想しています。購入検討される方はモノがなくなる前に動いた方がいいかも・・・知れません。
ロードスター/MX-5 グローバル販売台数(暦年ベース)1998-2022
こちらのデータは、市場ごとの販売台数リザルトです。もともと北米向けに企画されたロードスターですが、注目は欧州市場です。NA時代はディーラー網が整備されていなかったことと、日本ほどリトラクタブルヘッドライトに拘りがないのでそれほど売れなかったのですが、実はNBロードスター(リトルジャガー)やNCロードスターは北米よりも「ライトウェイトスポーツの本家」となる欧州で支持されていたことがわかります。
なお、生産台数と販売台数は連動するので、前項と同様に2008年~2011年あたりで数値は大幅に落ち込みます。その後国内市場は回復の兆しが見えませんでしたが、海外では一定の需要が継続できていたことに注目です。
ロードスター/MX-5 グローバル販売台数(暦年) | |||||||
日本 | 米州 | 欧州 | 太洋州 | アジア | その他 | 合計 | |
1989 | 9,307 | 25,879 | 0 | 657 | 0 | 0 | 35,843 |
1990 | 25,226 | 39,850 | 9,267 | 1,455 | 0 | 0 | 75,798 |
1991 | 22,594 | 34,196 | 14,050 | 698 | 0 | 0 | 71,538 |
1992 | 18,648 | 27,241 | 6,632 | 499 | 0 | 0 | 53,020 |
1993 | 16,779 | 23,089 | 4,824 | 453 | 0 | 0 | 45,145 |
1994 | 10,828 | 22,573 | 5,019 | 404 | 0 | 0 | 38,824 |
1995 | 7,171 | 21,108 | 7,174 | 196 | 0 | 0 | 35,649 |
1996 | 4,409 | 18,966 | 9,585 | 241 | 0 | 0 | 33,201 |
1997 | 3,537 | 17,812 | 10,480 | 206 | 0 | 0 | 32,035 |
1998 | 10,174 | 20,890 | 16,831 | 1,310 | 0 | 0 | 49,205 |
1999 | 4,952 | 18,936 | 21,130 | 1,354 | 0 | 30 | 46,402 |
2000 | 4,644 | 19,627 | 19,268 | 1,038 | 0 | 33 | 44,610 |
2001 | 4,211 | 17,757 | 16,368 | 924 | 0 | 6 | 39,266 |
2002 | 2,934 | 15,622 | 19,670 | 698 | 0 | 34 | 38,958 |
2003 | 1,520 | 11,999 | 18,934 | 540 | 0 | 11 | 33,004 |
2004 | 1,642 | 10,502 | 9,355 | 483 | 19 | 118 | 22,119 |
2005 | 3,690 | 10,658 | 9,105 | 743 | 12 | 132 | 24,340 |
2006 | 4,076 | 18,702 | 17,579 | 1,468 | 45 | 127 | 41,997 |
2007 | 3,851 | 17,150 | 18,334 | 1,234 | 32 | 75 | 40,676 |
2008 | 1,871 | 12,563 | 12,968 | 662 | 52 | 35 | 28,151 |
2009 | 1,947 | 8,886 | 9,409 | 532 | 68 | 22 | 20,864 |
2010 | 1,112 | 7,272 | 9,634 | 440 | 52 | 63 | 18,573 |
2011 | 1,082 | 6,522 | 7,704 | 315 | 98 | 95 | 15,816 |
2012 | 939 | 7,221 | 6,899 | 159 | 98 | 62 | 15,378 |
2013 | 758 | 6,520 | 5,914 | 178 | 40 | 27 | 13,437 |
2014 | 593 | 5,410 | 5,780 | 118 | 3 | 97 | 12,001 |
2015 | 8,547 | 9,701 | 6,753 | 917 | 7 | 91 | 26,016 |
2016 | 6,155 | 11,685 | 13,904 | 1,577 | 68 | 273 | 33,662 |
2017 | 7,020 | 14,207 | 15,676 | 1,459 | 255 | 110 | 38,727 |
2018 | 5,331 | 10,857 | 13,631 | 835 | 148 | 69 | 30,871 |
2019 | 4,689 | 9,628 | 14,058 | 442 | 186 | 70 | 29,073 |
2020 | 4,434 | 10,116 | 4,721 | 457 | 69 | 36 | 19,833 |
2021 | 5,394 | 12,448 | 6,862 | 744 | 69 | 41 | 25,558 |
2022 | 9,578 | 8,152 | 5,200 | 495 | 85 | 0 | 23,510 |
合計 | 219,643 | 533,745 | 372,718 | 23,931 | 1,406 | 1,657 | 1,153,100 |
※欧州は東欧・西欧合計、大洋州はオセアニア地域、アジアは日本を除く累計
面白いのは2015年以降のNDロードスター販売動向です。
ローンチ後は北米市場よりも欧州市場の方が堅調に推移していたのですが、2020年のパンデミックを契機にガクっと崩れてしまいます。ただでさえ環境規制が厳しくなってスポーツカー継続が減退しているところに、欧州情勢不安によるエネルギー価格の高騰も重なり、なかなか厳しい状況になっているようです・・・
2022年の物価は国内でもガソリン単価が約160円/Lとリーマンショックや東日本大震災の時よりも高騰していますが、欧州では円換算で約270円~300円/Lとなっているようです。為替換算(円安)を指し抜いても、趣味車にとってとても厳しい状況であることが分かります(2023.1時点)。
一方、国内市場では趣味車(スポーツカー)の復権に加え、ロードスターでは「990S」グレードのスマッシュヒットにより、2020~21年は納車待ちが多かったとはいえ、2015年のデビュー時よりも「売れている」とんでもない事なっています。
特に2022年は海外よりも日本市場が一番売れており、これはユーノスロードスター(NA)でも実現しなかった快挙です。(輸出することができなかっただけかもしれませんが・・・)
ロードスター・シェア分析(2022)
2022末時点 | 世界販売台数 | 国内販売台数 | 世界 シェア |
||
母数 | 1,153,100 | 世代割合 | 219,643 | 世代割合 | 19.0% |
NA | 421,053 | 36.5% | 118,499 | 54.0% | 28.1% |
NB | 274,200 | 23.8% | 30,713 | 14.0% | 11.2% |
NC | 230,597 | 20.0% | 19,283 | 8.8% | 8.4% |
ND | 227,250 | 19.7% | 51,148 | 23.3% | 22.5% |
国内ではNAが圧倒的に「売れた」ことは周知の通りですが、NDロードスターは既にNBやNCをぶっちぎって売れているようです。ただしNBやNCに魅力がないわけではなく、NDロードスターが時代背景により追い風(ブースト)がかかっている結果ともいえます。むしろ、NBやNCは存在がレアになることで、ゆくゆくはプレミアに繋がるでしょう。
また、2022年末のマツダイベントにて先代までの国内登録車数が公表されています。母数の多かったNAロードスターは約2万台がナンバープレートを付けているようですが、注目すべきはNBロードスター。知らぬ間に「国内で最も少ない」ロードスターになっていました。むしろNCロードスターはまだまだ現役で頑張っているようです。
2022時点 | 国内販売台数 | 世代割合 | 国内残存数 (登録車) |
残存率 |
母数 | 219,643 | |||
NA | 118,499 | 54.0% | 20,723 | 17.5% |
NB | 30,713 | 14.0% | 13,793 | 44.9% |
NC | 19,283 | 8.8% | 15,530 | 80.5% |
ND | 51,148 | 23.3% | – | – |
以下は、ロードスターの世界シェア割合です。ロードスター(MX-5)は北米向けでありつつも、20周年記念車(NC)、25周年記念車(NC)や30周年記念車(ND)などの限定車割り当てでもわかるように、日本よりも欧州市場の方がスコアを稼げる状況であったことがわかります。
逆に、約2割は日本で販売されていることを、誇るべきなのかもしれません。実際、国内にしかないロードスター(NBクーペやWebTuned、各世代のNR-Aや現行「S」「990S」シリーズなど)があるからです。グローバルカーでありながらも「日本市場のスポーツカー」を継続してくれていることに、マツダの心意気を感じます。
ちなみに「その他」地域にはアラブ首長国連邦、クウェート、サウジアラビアなどが含まれます。ミリオネアに可愛がられているMX-5が約100台ほど(特にNCロードスター)がいたようです。
グローバル・マーケット割合 | |
日本 | 19.0% |
北米 | 46.3% |
欧州 | 32.3% |
太洋州 | 2.1% |
アジア | 0.1% |
その他 | 0.1% |
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