新世紀の大本命(NCロードスターRHT)

新世紀の大本命(NCロードスターRHT)

NCロードスターが販売されてから約1年後の2006年。かねてより噂のあった、ロードスターの電動ハードトップモデルがついに発表されました。その名もロードスターRHT(リトラクタブル・ハードトップ)。プジョー206CCから一気にトレンドになった”屋根付き”のオープンカーは、商品力強化として必然のモデルでした。

RHTに採用された固定ハードトップは明らかに重量が増すことになります。したがって、LWS(ライトウェイトスポーツ)をうたうロードスターにとって重量増はネガティブにとらえられ、歓迎派とアンチ派が連日討論を繰り返していたのは記憶に新しいです。しかし、今回はデザインの観点で紐解きます。

ドロップヘッドクーペ


RHTのコンセプトは【ドロップヘッドクーペ】です。これは幌ではなく、きちんとした「屋根」がある高級オープンカーであり、近年ではロールスロイス・ファントム辺りが名乗っています。馬車の時代から、「幌」は降雨の際に簡易的に避けるためのもの、という位置付けなのです。

しかし、開発目標として課せられたのは矛盾だらけ。「軽量化」「トランクの積載容量を減らさない」「オープン時の見た目を幌モデルと同じくカッコ良く」・・・開発自体は幌モデルと同時並行だったそうですが、開発当時に目標達成が見えず、リリースを1年先伸ばしたという経緯があります。

開発の執念は、屋根の【奇跡の分割】を持って達成されました。本当にギリギリのクリアランスで成立しているので2mmでもズレると稼働できないそうです。また、幌モデルの座席後方のラゲッジスペースをトップ(屋根)収納箇所に充てているので、トランク容量は変わらず・・・どころか、ボディ後方を作り直しているので、積載量はむしろ上がっています。

動きに関してはこの動画を参照してください。トップを格納できるけれど、トランクもバッチリ使えます。

リアセクションは専用設計


実は幌モデルと全く同じ車体で開発をしていたのですが、どうしてもクリアランスが確保できず、一旦開発凍結までいったそうです。

なぜならば、ホイールアーチ内にトップ(屋根)を納めなければならず、その空間確保に頭を悩まされたとのこと。しかし、ボディのリアセクションを作り直していいと社内許可が出て、Cピラー(無いけれど)根元の補強と、リアフェンダーからトランクまでを新規造形とすることで、RHTの成立が可能になりました。

ぱっと見分からないですが、トランクスペースは上方にボリュームが増していいます。全高は10mm、リアデッキは40mm、トランクリッド後端は20mmの上昇です。また、エアロボードも専用設計になっています。

ちなみに海外名は「MX−5 Roadster Coupe」です。NBと違ってきちんと屋根の開くクーペですね。(※左が幌、右がRHT 便宜上NC3の線画です)

造形の見所としては、トランクが幌モデルの「プレーンな造形」から、尻の重みを感じさせない「ダックテール」になっています。また、ハイマウントストップランプ(中央ブレーキ)の位置が幌モデルと同じだと間延びしてしまうので、リアデッキ中央に移設。それだけだとトランクが間延びして見えるのでトノカバーっぽくキャラクターラインが入っています。

なお、デザイナーのこだわりとしてRHTには2008年のロードスター20周年記念車までボディカラーに「白」の設定がありません。これは、ルーフを上げたRHTのシルエットにそぐわないという理由からです。

気になる重量増は


気になる重量ですが、開発目標は40Kg以内としていましたが、最終的には37Kg増となりました(※トランクがアルミから鉄になって3Kg増になったのも含める)。NA/NBロードスターのDHT(デチャッタブル・ハードトップ)が20kgなので、それを踏まえて重いと見るか、軽いと見るか・・・NCの馬力を踏まえれば、先代モデルに屋根を載せるよりもパワーウェイトレシオは優秀です。

また、ルーフの開閉で重量配分は体感できるほど変わるので、足回りのセッティングも変えてあります。トップを下したほうがトラクションがかかるのです。

しかし、ルーフを閉じた姿は窮屈なプロポーションに見えるのも事実です(ぱっと見DHT付きにみえますが)。でも、これを味とするのもNCロードスターの”たしなみ”のように感じます。

個人的には”リトラクタブル”という名称を付けたのもツボで、まさに失われたリトラクタブル・ヘッドライトに替わるロマンメカでは無いでしょうか。

RHTモデルの魅力


そして、人気の方はどうかというと・・・国内では幌モデルよりもRHTの方が好調なデリバリーでした。メカ的な出来の良さもありますが、ロードスター購入時にネックとなりがちな「幌への抵抗感(雨漏り、いたずら対策)」が一発で解消されますし、なによりオープン時の美しさは通常モデルと変わらないこともあるでしょう。まさに、新時代ならではのロードスターの形です。ちなみに、緑色のロードスターはNC1を最後に消えてしまいました(2019年現在)。

なにより、電動ハードトップモデルとしてはトランク容量を犠牲にしなかったのは(当時)ロードスターだけです。しかも開閉が「一番早い」のもポイントでした。このプロモーション動画は、なかなか秀逸です。

ドロップヘッドクーペのコンセプト通り、ロードスターの新境地をひらいたRHTモデル。チープなイメージだったロードスターへ、新しいユーザーの裾野を広げてくれた貢献度は大きく、NDロードスターRFとは違った魅力を感じることができる筈です。

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流(ナガレ)と魂動(NC2/NC3ロードスター)

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