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歴代ロードスターで、唯一サイズアップし続けている「トレッド」
歴代ロードスターは旧来からのライトウェイトスポーツらしくコンパクトなサイズを維持することにこだわりを持っていますが、唯一サイズアップし続けている個所があります。
それは「トレッド」、つまり左右タイヤ接地面の距離です。
一般的には、トレッド幅があるほうがクルマの傾きが小さくコーナリング性能が上がるとされています。しかし、幅がありすぎると(全幅が広くなると)小回りが利かなくなるデメリットも発生するので何事もバランスでしょう。
なお2シーター、ショートホイールベース、小型車(5ナンバーサイズ)と基本骨格が決まっていたNAロードスターからNBロードスターへのフルモデルチェンジにおいても、基本的なメカは変わっていないにも関わらず(パーツ単位の剛性強化はありましたが)、NBロードスターではトレッド幅をフロント+10mm、リア+20mmと再調整されました。
NCロードスターからのダウンサイジングを大々的にうたったNDロードスターでさえも、先代よりトレッドは拡大していることから(フロント+10mm、リア+10mm)、ロードスターのサイズにおいてはトレッドを稼ぐほうがメーカーは正解とみているようです。
全長 | 全幅 | 高さ | WB | TR_F | TR_R | F比 | R比 | |
NA | 3,970 | 1,675 | 1,235 | 2,265 | 1,405 | 1,420 | 1.61 | 1.60 |
NB | 3,955 | 1,680 | 1,235 | 2,265 | 1,415 | 1,440 | 1.60 | 1.57 |
NC | 4,020 | 1,720 | 1,245 | 2,330 | 1,490 | 1,495 | 1.56 | 1.56 |
ND | 3,915 | 1,735 | 1,235 | 2,310 | 1,495 | 1,505 | 1.55 | 1.53 |
STRATO’S | 3,710 | 1,750 | 1,115 | 2,180 | 1,430 | 1,460 | 1.52 | 1.49 |
参考→https://mx-5nb.com/2020/01/27/grsupra/
なお、ホイールベースをトレッドで割り算すると比率(トレッド比)が計算できます。これが「2」に近いほど直進安定性が増し、「1」に近いほどコーナーリング重視のセットになるといわれています。すごく曲がるけどまっすぐ走らないとされたランチアストラトスでは1.5を割っていますが、あれは暴力的なエンジンパワーのせいでピーキーなバランスになっていたと類推されます。
ここでロードスターを確認すると、そのトレッド比率は1.53~1.60前後の数値に寄せてあることがわかります。これは997型ポルシェ911(1.56)や、ロータスエキシージ(1.57)、AMG GT(1.58)あたりと同じになります。
つまり、この辺りのトレッド比はサイズやクラスは違えども「ハンドリング重視のスポーツカー」の共通項であることが分かります。そうなると、トレッドが変わるとハンドリングに差が出るのか試したくなるもの。そこで、愛車のロードスターにホイールスペーサーを入れてみることにしました。
NBロードスターにホイールスペーサーを入れてみた
今回はがっつりチューニングではなく、あくまで素人レベルのプラシーボ効果を狙うもの。そこで、リスクのない範囲を調べてみると、純正の足周りに装着できるスペーサーは片側5mmが限界とされているようです。
その理由は、ホイールを装着するハブボルトに限界があるから。浅い締め付けになるとネジ山にかかる負担が増大し、最悪脱輪する危険があるのです。もちろん、そもそも【スペーサー自体がNG】という考え方もありますので、この作業はあくまで自己責任になります。
また、フェンダーからタイヤがはみ出すと保安基準(車検)にも適合しなくなります。しかし、元からNBロードスターは純正状態でかなりマージンがあるので(タイヤチェーンを装備した際のマツダ内規定)、5mm程度のスペーサーならばはみ出しに問題はありませんでした。
スペーサー自体も高価なものではなく、Amazonで注文したパーツは約1200円(当時価格)くらい。安すぎて精度に不安がありましたが、手元に来たパーツはアルミ製でとても軽く堅牢で、定規を充てて水平が出ていることも確認できたのでオッケーとしました。
取付け作業も簡単で、ホイールを外したのちにハブボルトとホイールの間にスペーサーをかますのみ。しばらくテスト走行を行った後に、トルクレンチでナットを締め直しましたが、何も問題はありませんでした。
ただし、万全を期すためにアライメント調整はやり直しています。
参考→https://mx-5nb.com/2022/08/01/nb_alignment/
全長 | 全幅 | 高さ | WB | TR_F | TR_R | F比 | R比 | |
NB | 3955 | 1680 | 1235 | 2265 | 1415 | 1440 | 1.60 | 1.57 |
NB+5mm | 3955 | 1680 | 1235 | 2265 | 1425 | 1450 | 1.59 | 1.56 |
トレッド比率を再計算をしてみると、僅かではありますが数値に変化が見込めました。しかし走りに何か差が出たかというと・・・街乗りレベルでは何も分かりませんでした。ただし、引っ込んでいた純正ホイールが少し外に出たので(左右併せて+10mm)、純正状態の「立ち姿」がちょっとだけ良くなった気がします。
ただし、1200円でポルシェ911と同じ諸元(1.59)になるなら・・・と思えばプラシーボ効果は絶大でした。
ホイールスペーサーを入れなおす(一部失敗)
上記作業のち、3か月経過しても足周りのガタ付き等のトラブルはありませんでした。ただし、定期的に行っているタイヤローテーションで違和感がありました。規定トルクで締めていたはずのボルトが明らかに「硬く」なっていたのです。
その原因は、ホイールとスペーサーの隙間に水分が入ったことによる固着と浮き錆でした。もともとローターの根本は錆びているものですが、折角なのでメンテナンスを行います。
まずは、浮き錆を鉄ブラシで落としていきます。ハブボルト先の色が違うのは、スレッドコンパウンド(焼き付き防止剤)を塗っていた名残です。ただし、コンパウンドが塗布されていないところに浮き錆が発生していました。
これらの浮き錆をブラシで落としたのち、筆で防錆剤(エンドックス)を塗布、ハブボルトの根元までスレッドコンパウンドも塗布しました。
さらに、スペーサーもブラシで磨いたのちに、シャシーコートクリアでコーティングを行います。
コート剤が乾く間にホイール傷のレタッチをおこなったり、タイヤパターンに詰まっている石を取り除いておきました。
メンテナンス後はこんな感じです。取り越し苦労かも知れないけれど、やらないよりはマシかなぁということで・・・もちろん、このあと規定トルクでホイールナットを締めなおしました。
テスト走行でもガタ付きは発生せず、いい感じに走ってくることができました。もちろん帰宅後にナット緩みの確認をしています。
約2年後、車検にて
上記作業後、タイヤも履き替えて足周りのオーバーホール(ブッシュ交換)も行い、約2年間のあいだ最高のハンドリングを維持し続けていました。そこで大きなトラブルもなかったので安心しきっていたのですが・・・車検整備時に「これじゃダメです」と指摘を受けました。
その原因はホイールスペーサーの固着。エンドックスとシャシーコートの相性が悪かったらしく(両方とも粘着性のある塗膜)、そこにトルクをかけていたのでペタッとくっついてしまったのです。考えてみれば、そりゃそうですよね・・・
スペーサーは幸いにもタガネでパコっと剥がれてくれたので(外せる状態ならOKとのこと)、車検では事なきを得たのですが、このままパーツを付けるわけにはいきません。パーツ自体は車検後に返却してもらったので、もう一度取付け作業をやり直します。
まずはスペーサーに固着したエンドックスを真鍮ブラシと紙ヤスリでとにかく磨き、汚れを落としていきます(写真右側)。スペーサー自体がアルミ製だったことから、磨けば磨くほど奇麗になっていきました。
その後、またシャシーコートを吹くと同じトラブルが起きる可能性が大きいので、防錆のためにシリコンスプレーで滑々(すべすべ)に仕上げておきました。
正直ブレーキディスク側にもエンドックスが残っていたのですが、既にカチコチに固着していたのでホイール裏面(接地面)とともにシリコンスプレーを塗布しておきました。すべすべになったのでこれで良しとします。
改めてスペーサーをハメ直して、規定トルクでホイールを付けて完了です。
なお、改めてですがスペーサーの有無により立ち姿は違っていることが、たかが片側+5mmであっても外したことで大きく感じました。走りに関しても「ないと困る」ことはありませんが、「有った方がいい気がする」位には感じることができています。なお、個人的にはサスストロークを確保したく、車高は下げないようにしています。
実際、素人レベルで走りの差が出るかどうかは不明ですが・・・繰り返しますが、愛車がポルシェと同じディメンションになるのは自己満足の高い作業でした。そうそう、トレッド比1.56はNCロードスターも同じ数値だったりします!
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