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2014年にデザイン公表されたNDロードスターですが(※)、早いものでもうデビューから10年が経とうとしています。今や街中で見かけない日はないくらいオープンカー(スポーツカー)として異例のヒットを継続しています。RFも含めてとてもカッコイイですからね。
しかしぶっちゃけ・・・もう見慣れてしまいましたが、デビュー当初はあの「お口(グリル)」はデカいと思いませんでしか?もはやNDロードスターの味だと思っていますが、かつてRX-8のMSV(マツダスピードバージョン)を初見した時以上にインパクトがありました。個人的にはもりもりとご飯食べそうって思ってました。
同じような角度で眺めたNBロードスターと比べても、何といいますか・・・やはり大きく感じる。そこで、感覚やイメージではなく、きちんと並べて比較してみました。
NAロードスターとNBロードスター(3種類)
先ずは、ほぼ兄弟車となるNA/NB(前期・後期)ロードスターの比較です。NAロードスター(1989年~)は早い段階でデザイン凍結宣言が行われたため、見た目で大きな変化はありません。
これらは【ときめきのデザイン】というデザインテーマを採用し、クルマのキャラクターをパーツ単位ではなく「全体のフォルム」で表現しているのが特徴です。したがって、骨格(プラットフォーム)だけでなく、黒でべた塗りにするとシルエットも同じだったりします。
ちなみにNA/NBロードスターのプロダクトデザイン(生産デザイン)は広島チームですが、オリジナルデザインは北米チームのものになります。日本車としてのアイデンティティを表現するためNAは和風テイストが多々採用されていますが、両方とも同じルーツになります。
なお、NAロードスターはライトウェイトスポーツカーとして「敵を作らない」ことがコンセプトにあり、馬力(=絶対的な速さ)ではなく楽しさ(=ハンドリング)で勝負するクルマとしており、それをファン・フレンドリー・シンプルととらえてデザインに落とし込んでいます。これは現行ロードスターまで引き継がれるアイデンティティでもあるんですね。
これらの特徴は、スポーツカーらしく顎を引かせてその奥にあるインテーク(口)を持ってハッピースマイルフェイスを表現しています。ちなみにNB1ロードスター(前期型:1998年~)のヘッドライトはNAロードスターのターンシグナルランプ(ウインカー)を昇華させたデザインです。
フェイスリフトを行ったNB2ロードスター(後期型:2000年~)ではデザインテーマが【コントラスト・イン・ハーモニー】としてマツダ統一レギュレーションが設けられたので、インテークがファイブポイントグリルに変更されています。同時期にRX-7(FD)も同系列デザインのインテークに変更されており、マツダスポーツカーとしての矜持を感じさせてくれました。
NCロードスター(3種類)
NC1ロードスター(2005年~)のデザインテーマは【アスレティック】として、マツダ車の特徴となる走りの良さ(溌溂(はつらつ)さや躍動感)をデザインに取り込んでいるのが特徴です。多くの共通レギュレーションがありましたが、わかりやすいのは足周りを際立たせたプロミネントフェンダーが採用されているところです。
ただ、NC1ロードスターはNA/NBのようなスキンチェンジではなく、実質「本当のフルモデルチェンジ」であったことからロードスターらしさを表現するためにファイブポイントグリルではなく、NAロードスターのエアインテークをデザインに落とし込んだオーバルグリルが採用されています。したがって、NAロードスターに原点回帰する構成になっているんですね。面白いのは、上半分は塞がっていて本当インテークはリップ部分がその役割を担っていることです。
NC2ロードスター(2008年~)では【流(ナガレ)】というデザインテーマになっており、マツダのアイデンティティをさらに「日本らしさ」ととらえて、流麗でオーガニックなものを連想するカタチになっています。もちろんNB2ロードスターをリスペクトしているのもポイントです。したがって、エアインテークはファイブポイントグリルが採用されています。
NC3ロードスター(2012年~)はNDへのフルモデルチェンジが延期されたことで延命された世代で、当時のマツダは【魂動(コドウ)】デザインになっていたので、それに寄せたディティールに変更されています。なお、NC1/2は広島デザインですが、NC3は北米デザインになっています。世代が進むごとにインテークが大きくなったわけではなく、NC3では一回り小振りになっていることが分かります。また、NC3のデザインはNDロードスターへ橋渡しをする役目もあったので、それが顔に現れていますね。
NDロードスター(2種類)
マツダ第6世代【魂動(コドウ)】デザインのトリとして登場したNDロードスター(2015年~)。ライトウエイトスポーツカーらしい躍動感をデザインに見事に落とし込んだその姿は、ワールドカー・デザイン・オブ・ザ・イヤーの受賞歴もあるとおり「ミニサイズのスーパーカー」として世界で愛されるクルマに仕上がっています。
デビュー当時は怒っているとか怖いとか言われることもありましたが、正面から見ると優しい顔になっているのが特徴です。2023年にマイナーチェンジが行われた、現行型ND3ロードスターは(※国内ではND2)、マツダのデザインテーマも第7世代【魂動(コドウ)】に進化していますが、フロント側はヘッドライトやグリル内のディティール変更程度で見た目に大きな変化はありません。デビューから10年経っても陳腐化していないのは凄いことですね。
グリルの大きさを比較してみる
ここまでは諸元表のイラストを並べただけなので、本当の大きさは分かりませんよね。そこで画像変換を行ってピクセル数で割合を計算してみました。デジタルではない時代のイラストもあるし、クルマは角度によって見え方が違ってくるので、本当に正確かといえば違う部分もあると思います。車幅と車高は諸元通りのピクセルにしてありますが、あくまで参考まで・・・
NA | NB1 | NB2 | |
7.0% | 7.2% | 9.3% | |
NC1 | NC2 | NC3 | ND |
7.5% | 12.6% | 9.3% | 11.6% |
想像通りではありますが、NAとNB1のグリルサイズはほぼ同じです。面白いのがNC1ロードスターで(機能性ではなくデザインの観点からすると)NA/NB1に寄せたサイズになっていることです。また、NB2とNC3は同じバランスで構成されていることが分かります。意外だったのは、一番大きいサイズはNC2であったことでNDではないようです。ボディがNCよりワイドな分物理的な面積が稼げているのでしょう。印象なんて当てにならない・・・
もちろん見える角度の差もあるし、キャビンまで入れるか(ボンネットの下から判断するか)やナンバープレートの有無などで割合は変わってくると思いますけれど、あくまで正面からみると上記のようなデータになっていました。
2004 AUDI A6
なお、グリルでメーカーや車種のアイデンティティを表現するのは、2004年にデビューした3代目「アウディA6」から始まったとされていますが、当時はとても驚きました。その後登場したクラウンやレクサス群を見て本当にこんなの流行るのかと思っていましたが、慣れって凄いですよね。
2024 TOYOTA ALPHARD
それでも2023年にデビューした4代目アルファードは格が違います。個人的にはここ数年で一番驚きました・・・オラオラ顔といったら好きな人に申し訳ないのですが、車線を譲りたくなる・・・
そこで、折角なのでグリル割合を出してみたら、約31%!これ、キャビンを入れなければ50%を超えるのではないでしょうか。本当にすごい時代になった・・・一方で、テスラ車はEVであることを表現するためにグリルレスにしているのですから、ほんと自動車デザインって面白いですね。
ロードスターの仲間たち
折角なので各世代を並べてみますとファン・フレンドリー・シンプルでハッピースマイルであることが分かります。一番笑っているように見えるのはリトラクタブルヘッドライトを開けたNAロードスターが最強でしょうか!
NCロードスター多世代よりも大きな印象を受けるのは、ヘッドライトとグリルの位置が高いことによるものです。しかし、これは当時のレギュレーションの絡みもあるので、逆にNDロードスターは技術革新などでロー&ワイドが実現できているんですね。なお、車幅はNDが一番あります。総じてロードスターの「顔」は、ヘッドライトとグリルで印象が決まっている気がします。
単位:mm | 全長 | 全幅 | 全高 |
NA | 3,955 | 1,675 | 1,235 |
NB | 3,955 | 1,680 | 1,235 |
NC | 4,020 | 1,720 | 1,255 |
ND | 3,915 | 1,735 | 1,235 |
どれが一番かといったら断言することはナンセンスで、どれもハッピースマイル!ロードスターって本当にカッコよくて、可愛いですよね・・・!
※例の記念アイテムのオマージュイラスト
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