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クルマのボディカラーは「白、黒、シルバー」が定番のラインナップとされています。その一方で、カタログの表紙は色とりどりの「テーマカラー(イメージカラー)」に塗られたクルマが添えられます。これは車種ごとのコンセプトやマーケティング上の狙いによって決められるものです。
ちなみに、かつてのマツダでは1色だけ車種専用のカラーを作ることが許されたそうです。もちろん、それがロードスター用に調色されたものであっても他マツダ車に流用されることもあるし、逆に他車種用に開発した色がロードスターに塗られることもあります。
そのようななか、真に「ロードスター」だけに塗られたボディカラーも存在しています。
NAロードスター専用カラー(2色)
NA6:マリナーブルー(MARINER BLUE)【DU】:カタログカラー
北米市場からの要望でNAロードスターのデビューからラインナップされていたマリナーブルー。眩しく突き抜けたソリッドカラーであり、モチーフは米国3色国旗(赤・青・白)の1色とされています。カタログカラーとしてNA6(1600cc)のみで選択が可能でした。
当時のマツダにおけるソリッドカラーはクリアコートがなく、経年劣化で退色が進むことでも有名で・・・白化してカサカサになったマリナブルーが「ポリバケツブルー」「ゴミ箱ブルー」と揶揄されることもありました。しかし、本来のマリナブルーは華やかでスカッとしており、イメージよりも鮮やかなので驚きます。近年において純粋な「青」がラインナップされることが少なくなったので、新鮮に感じるでしょう。キュートなユーノスにぴったりのボディカラーです。
NA6改/NA8改:ブルーブラック(MEDITERRANEAN BLUE)【HQ】:カタログカラー
ブルーブラックはNAロードスターのメーカーチューニング車両となる「M2 1001/1028」専用カラーです。ソリッドカラーの黒に見えますが、光が当たると青味を感じるとても上品な色味となっています。
ちなみに、1001デビュー当時(91年)において、ロードスターの「黒(ブリリアントブラック)」は特別な色でした。「緑(ネオグリーン)」と同じくプレミアムグレードとなるVスペシャル専用カラー(※)だったのです。そこで、ただ者ではないM2に塗られたブルーブラックは、特別間をさらに高めました。※93年にNA8へマイナーチェンジした際に、Sスペシャルでも選択可能となる
現在においてもM2車両はこだわりのオーナーが多いので、オリジナルコンディションのブルーブラックを目にする機会もあるでしょう。色のみならず、メカやインテリアにもこだわるM2車両はブリティッシュスポーツのピュアなDNAを感じる特別なロードスターです。
なお、2011年のフォード車両には「HQ(MEDITERRANEAN BLUE)」というカラーコードがありますが、もちろん別の色味になります。
NAロードスター起点色
最終的には全14色のラインナップとなったNAロードスターは、デビューまでに紆余曲折がありましたが、実はいくつも専用色が用意され、追って他車種に流用がされました。
クラシックレッド【SU/A3E】:カタログカラー
CLASSIC RED
NAロードスターのテーマカラー(アメリカ三色国旗)のひとつでして開発されたクラシックレッドは、マリナブルーと並んでも負けない明るく鮮烈なソリッドレッドです。当時のデザインテーマ「ときめきのデザイン」において、ロードスターは日本文化が持つ「無駄を削いだシンプルな美しさ」を表現しています。そのシンプルなフォルムをより際立たせる、とても美しい赤に仕上がっています。
クラシックレッドはNB/NDと歴代ロードスターに継がれたことはもちろん、ユーノスコスモ、AZ-1、デミオ、トリビュート、アテンザスポーツ、MPVなど、長い期間、多くの車種に採用されました。
ネオグリーン【HU/A3V】:カタログカラー
NEO GREEN
ネオグリーンは最初の限定車「Vスペシャル」のテーマカラーとして設定されました。その後、Vスペシャルはカタロググレード入りを果たし、モデル最後期には標準車でもネオグリーンを選択することができました。
海外名の「British Racing Green」の通り、色味はイギリスのナショナルカラーとなる深緑です。少し赤味の入ったソリッドカラーの深緑は、日差しによりオーガニックな雰囲気・生命の温かみを感じる素敵な色味です。NBロードスターでは北米ミアータの限定車にも設定されています。流用としてはレアケースですが、3代目キャロル(AC型)のグレースグリーンメタリックを選択すると、2トーン設定で前後バンパーがネオグリーンに塗装されました。
サンバーストイエロー【HZ】:限定カラー
SUNBURST YELLOW
サンバーストイエローは、限定車「Jリミテッド(NA6)」「J2リミテッド(NA8)」に設定された黄色です。スポーティーさを強調したJリミテッドシリーズは、色名のサンバースト(sunburst:日差し)の通り、陽光に寄せて眩しく、赤味のあるソリッドイエローに仕上がっています。同時期、マツダの黄色はRX-7(FD)用に「コンペティションイエローマイカ」がありましたが、そちらは白味の入るレモンイエローとなります。ロードスターにおいては国内外のNB限定車にも継がれたほか、RX-7やファミリアSワゴン(スポルト系)にも採用されました。
NBロードスター専用カラー(1色+1)
NB1:エボリューションオレンジマイカ【18K】:カタログカラー
EVOLUTION ORANGE
エボリューションオレンジマイカはNBロードスタ前期型(NB1)デビュー時にカタログ表紙を飾った色で、マツダ車として初めて「世界共通のテーマカラー」として設定されました。
もちろん、営業現場からはリセールバリューが下がる(人気が落ちる)と反対意見もありましたが、ロードスター/ミアータ/MX-5はマツダのブランドピラーとなる存在であり、グローバルイメージを統一することにチャレンジを行ったそうです。
それまで誰も見たことのなかった、まさに「金色」のエクステリアは、マイカのフレークがNBロードスターのオーガニックシェイプ(オーガニックフォーム:曲線主体のボディ)を際立たせ、デザイナーの意図通りに鮮烈なイメージを残しました。派手な色なので好き嫌いが極端に分かれ、カタログカラーではありますがデビューから1年間(1998年式)しか選択できなかった、実質の期間限定色でもありました。
なお、マイカとはメタリック(金属由来)ではなく、鉱物由来の塗装を指します。酸化チタンをコーティングした雲母片を顔料に混ぜたものであり、マイカ塗装は光が複雑に反射して独特の深みのある真珠光沢(パール調の色味)を得られます。
NB1:プラチナシルバー/コンランシルバー【JC1】:限定カラー
Conran Silver Metallic
英国販売された限定車「MX-5 Jasper Conran(2000年)」において、100台限定で専用色「プラチナシルバー」が塗装されました。個体数の少なさからマツダ宇品工場ラインとは別で塗装された可能性が高いのですが、マツダのカラーコード「JC1」が設定されています。
ジャスパー・コンラン氏(Jasper Alexander Thirlby Conran)は英国のファッションデザイナーで、この限定車は専用ボディカラーに加え、フェラーリやロールスロイスなどに使われる英国王室御用達のコノリーレザーでインテリアを仕上げている、特別なロードスターです。
NBロードスター起点色
NBロードスター現役時代のマツダは、フォード車両にみられるように比較的寛容なカラーバリエーションを得ることができました。そこで、他車種用に開発したカラー・・・特に同じラインで製造されていたデミオやベリーサ(小型車両)の色が塗られることが多くありました。その一方で、ロードスター専用として開発され、のちに他車種へ流用されるものもありました。
グレースグリーンマイカ【18J】:カタログカラー
GRACE GREEN
グレースグリーンマイカは、ロードスターのプレミアムグレード「Vスペシャル」を継いだ「VS」グレード専用に開発されたボディカラーです。NBロードスターはマイカ系の方がボディラインが際立つので、先代「ネオグリーン」の彩度を上げつつも、マイカ塗料による上質な色気が加わりました。暗所では黒く見える難点がありますが、太陽光が映える場面では無敵のカッコよさを誇ります。気品のある色を流用しない手はなくカペラ、ファミリア、デミオ、ミレーニア、アテンザスポーツワゴンなど様々な車種に塗られました。
クリスタルブルーメタリック【23C】:カタログカラー
Crystal Blue Metallic Crystal Blue Mica
クリスタルブルーメタリックは、フェイスリフトを行ったNBロードスター後期型(NB2)のテーマカラーに設定されました。明度・彩度をギリギリまで上げた澄んだ色味は、天候により「水色」から「空色」へくるくると表情を変える、不思議なブルーです。当時、トレンドカラーとしてアワード受賞も果たし、他メーカーからもこの「水色」をまとったクルマがラインナップ入りしていきました。他マツダ車ではデミオにも塗られています。
ガーネットレッドマイカ【25F】:カタログカラー
GARNET RED
ガーネットレッドマイカはNBロードスター後期型(NB3)のテーマカラーに設定されました。ワインレッド系のボディカラーはマツダでも様々なトライがありましたが、色名の由来となる「ガーネット(=ざくろ石)」の通り明るいワインレッドに仕上がっています。また、オーガニックな色味となるので都会的なシーンよりも自然に溶け込む特徴を持っています。他マツダ車ではファミリアセダンのみに塗られています。
なお、NB3のテーマカラーとしてはスプラッシュグリーンマイカ(エメラルドグリーン)もありましたが、そちらはスポーティーさを強調した2代目デミオ用に開発された色になります。また、NB3の販売期間は1年(02-03)しかなかったため、ガーネットレッド、スプラッシュグリーンともに、実質は期間限定色でもありました。
NCロードスター専用カラー(1色)
NC2:サンフラワーイエロー【A6Y】:カタログカラー
SUNFLOWER YELLOW
サンフラワーイエローはフェイスリフトを行ったNCロードスター中期型(NC2)のテーマカラーに設定されました。それまでも「黄色いロードスター」は限定車としては存在していましたが、初めて「黄色」がカタログ入りしました。幌モデルだけでなく、もちろんRHTも選択可能です。
色味はサンフラワー(向日葵:ひまわり)の通り、とても濃厚で温かみのあるメタリックイエローで、どんなシーンにおいても目立つ存在で、笑顔になったフェイスとともにスポーティ路線を強調したNC2において、とても似合うボディカラーでした。
NCロードスター起点色
NCロードスター時代もNC2まではフォード傘下だったことから、かなり寛容なカラーラインナップを誇りました。特に「ロードスター」は世界中にファンがいることもあり、デビュー時からNCロードスターは多くの専用色が開発され、その彩りは他マツダ車へ波及していきました。
ギャラクシーグレーマイカ【32S】:カタログカラー
GALAXY GREY
ギャラクシーグレーマイカはNCロードスター(NC1)のテーマカラーとして設定されました。先代から各難に上がったクルマの質感にみあう、アストンマーチンのような「大人のスポーツカー」イメージして設定された、赤味の入ったグレーメタリックとなります。当時のマツダ第三世代商品群(アスレティックデザイン)と親和性が高く、MPV、RX-8、マツダスピードアクセラ、ベリーサ、CX-7、プレマシー、アテンザスポーツなど、ほぼ全てのマツダラインナップにも転用されました。
カッパーレッドマイカ【32V】:カタログカラー
COPPER RED
カッパーレッドマイカは北米市場の要望から開発されたもので、プレミアムグレード「VS」系のテーマカラーとなっています。カッパー(銅)の色名通り、ワインレッド系ではなく「赤」明度を落としたシブい色赤で、マイカ塗装による造形の深みを得た、シックな色合いが特徴です。他マツダ車でも根強い人気を得たボディカラーであり、RX-8、アクセラスポーツ、MPV、CX-7、プレマシー、アテンザセダンなどにも転用されています。また、後継色には「ジールレッドマイカ」が設定され、その後マツダ車全体のテーマカラーとなる「ソウルレッドプレミアムメタリック」「ソウルレッドクリスタルメタリック」に続いていく、そのルーツとなる色になります。
トゥルーレッド【A4A】:カタログカラー
TRUE RED
トゥルーレッドは彩度・明度とも限界まで高めたソリッドカラーの赤で、長く愛されてきた従来のクラシックレッドをアップデートした存在になります。NCロードスター後期型(NC3)初期まで選択可能でしたが、ソリッドカラーの衰退から2014年以降はジールレッドマイカに統合されました。他マツダ車ではデミオやRX-8(TrueRed style)、プレマシーに塗られ、マツダスピードアクセラではテーマカラーにもなりました。
マーブルホワイト【A5M】:カタログカラー
MARBLE WHITE
マーブルホワイトはマーブル(大理石)の名を冠した、暖色系のソリッドホワイトです。コスモスポーツなど旧車のような色味で、他社の製品ではありますがホンダ・歴代タイプRシリーズの「チャンピオンシップホワイト」に近しいイメージです。チャンピオンシップホワイト自体もホンダF1(RA271)をリスペクトしたものであり、「純白」を作れなかった時代の温かみを感じる素敵な色になっています。
なお、NCロードスターRHT(リトラクタブルハードトップ)ではデザインの観点から膨張色の「白」は採用されず、マーブルホワイトはNCロードスター中期型(NC2)初期まで、幌モデル専用の設定でした(※)。他マツダ車ではRX-8の「RE40周年記念車」のみに採用されており、実質NCロードスターの専用カラーといえるでしょう。※NCロードスター「20周年記念車(NC2)」から白RHTが解禁されます
NDロードスターの専用カラー(1色)
ND(2019):レーシングオレンジ(Racing Orange)【A8X】:限定カラー
レーシングオレンジはNDロードスター「30周年記念車」に用意された専用カラーです。一見ソリッドカラーにみえますが、華やかでスピード感のあるメタリックオレンジとなっています。ずっと専用色が用意されなかったNDロードスターにおいて、まさかの鮮烈なオレンジ採用は特別間が半端なく、「30周年記念車」はインテリアコーディネートも含めて文句なしの特別な存在でした。また、MAZDA2のエクステリアではレーシングオレンジの「差し色」を選択できる純正オプションで用意されています。
魂動デザインの起点色
ブルーリフレックスマイカ【42B】:カタログカラー
「ソウルレッドプレミアムメタリック」「ソウルレッドクリスタルメタリック」「マシーングレープレミアムメタリック」「アーティザンレッドプレミアムメタリック」など、NDロードスターの「魂動デザイン」では【匠塗(たくみぬり)】という手法が大きな特徴となっていますが、そもそも「魂動デザイン」専用に開発された色存在します。ブルーリフレックスマイカ、通称「魂動ブルー」です。
フォード傘下を抜けたマツダがブランド再考を行った際、定義づけされた魂動デザインにおいて、それを象徴するコンセプトカー「シナリ:靭(SHINARI)」に塗装されたブルーを市販車へ置き換えたものが、ブルーリフレックスマイカです。陰影が際立たせるために定番となるシルバーではなく、クールなライトブルーを選ぶマツダのセンスが素敵です。
ただし、その「控え目」なイメージからNDロードスターにおいては選択されることが少なく、2017年のマイナーチェンジ時点で青系は「エターナルブルーマイカ」に差し変わっています。その後、国内においてブルーリフレックスマイカは国内カタログから消滅しましたが、海外では2022年まで一部車種で継続採用していました。
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