緑のロードスター(13色)

緑のロードスター(13色)

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様々なボディカラーが存在する歴代ロードスター。なかでも「緑色」に特別な思いを寄せている方は多いのではないでしょうか。

なぜなら、ロードスターの精神的なルーツはブリティッシュライトウェイトスポーツ、つまり発祥の地であるイギリスにおけるナショナルカラーは濃緑色だからです。いわゆる「ブリティッシュグリーン」がロードスターに似合わないわけがなく、初代NAロードスターにおいても最初の限定車「Vスペシャル」で専用色として濃緑色が設定されました。

余談ですが「Vスペシャル」は人気がありすぎてカタログモデルに昇格、モデル末期には専用色だった「ネオグリーン」が全グレードで選べるようになりました。トミカのユーノスロードスター(111番)もレギュラーカラーが「赤」から「緑」に変更にされるくらいの影響がありました。

そして、それ以降のロードスターでも「緑」は定番となり、様々なバリエーションが誕生していきました。

NAロードスターの「緑」4色


NA6~NA8:ネオグリーン(British Racing Green)【HU】:カタログカラー
同色のマツダ車:キャロル


NAロードスター最初の限定車「Vスペシャル」専用に設定されたネオグリーン。このモデルは濃緑色のボディカラーにナルディウッドパーツとタンのインテリアを採用、コーディネートがばっちり決まったモデルでした。ちなみに色味は海外名の「British Racing Green」の通り、イギリスのナショナルカラーとなる深緑を採用しています。

少し赤味の入ったソリッドカラーの深い緑色は、日差しを浴びると生命感が増してみえるのが特徴です。NAロードスターといえばクラシックレッド(赤)がテーマカラーですが、専用開発されたネオグリーンも実質のテーマカラーになっているので「ユーノスといえばこの色!」というファンも多いのではないでしょうか。

なお、当時のソリッド塗装はクリアコートされていないので、ボディを磨きすぎると色が落ちてしまうのが難点です。ただし、近年施工されたレストアプログラム車両ではソリッドカラーにもクリアが施されているそうです。

細かい話では、NA8ロードスター(1800cc)では濃色系のボディカラーにおいて、サイドシルのツートーン設定が廃止されました(黒く塗られていません)。また、国内では「Vスペシャル」専用カラーだったのですが、モデル末期となるNA8シリーズ2では標準グレードでもネオグリーンが選択できるようになり、ファブリック内装のネオグリーン車両を稀に見かけることができます。(※海外ではカタログモデルとして存在しています)。

参考リンク→https://mx-5nb.com/2020/10/26/wood-interior/


また、基本的にはロードスター専用色ですが、このネオグリーンは3代目キャロル(AC型)にも採用されています。キャロルのベース車両はスズキのアルト(軽自動車)であることは現在でも続いていますが、当時販売されていた2代目、3代目はキャロルはマツダオリジナルデザインのボディを架装していました。

その3代目において、緑色のエクステリアカラー(グレースグリーンメタリック)を選択した際は2トーン設定となり、前後バンパーがネオグリーンに塗られていました。


NA8:エクセレントグリーンマイカ(Excellent Green)【11Q】:限定カラー
同色のマツダ車:カペラ、デミオ

エクセレントグリーンマイカはNA8ロードスターの限定車「VRリミテッド・コンビネーションB」に採用されたボディカラーです。色味はネオグリーンよりも明度を落としたもので、「マイカ」と付く通り塗料に雲母(うんも)フレークが混入され、メタリックな輝きを放っています。それによりボディリフレクションが際立ち、清潔感のある深い緑色に仕上がっています。

また、VRリミテッド・コンビネーションBは、カタロググレードの「Sスペシャル」をベースに、ブラックレザーシートやアルミパーツ、緑幌、専用ホイールなどを架装した「走り」に振った限定車で、とってもシブいロードスターでした。

なお、VRリミテッドには「コンビネーションA」というアールヴァンレッドマイカ(ワインレッド)のボディカラー&アイボリー内装の兄弟車があるのですが、この「コンビネーションA/B」という組み合わせは、NBロードスター後期型(NB3以降)のカタログモデルとして復活しています。

参考リンク→https://mx-5nb.com/2019/11/02/na8-impression/


NA8:スパークルグリーンメタリック(Sparkle Green)【11R】:限定カラー
同色のマツダ車:ランティス、AZ-3、プレッソ、デミオ

NAロードスター最後の限定車「SRリミテッド」に採用されたのがスパークルグリーンメタリックです。そもそもは次世代のマツダ車としてデビューしたランティス(323F/323Astina)のテーマカラーとして開発されたボディカラーです。

いわゆるスピードグリーンといわれる明るくもクールな緑色にしあがっており、SRリミテッド自体も「在庫一掃でオプション全部盛り」とお得感溢れる限定車でした。余談ですが、NBロードスターのスパイショットで固定ヘッドライトに落胆したファンが「今のうちにロードスターを買っておかなければ」と、一念発起して購入された個体が多いからか、現在でも大事にされている印象が強い限定車です。

英国仕様では兄弟車の「バークレー」というモデルがあり、純正トランクキャリーが付いているロードスターは、全車通してバークレーのみとなっています。

参考リンク→https://mx-5nb.com/2021/01/11/eunos_srlimited/


NA8:マリーナグリーンマイカ(Marina Green)【13C】:国内未導入
同色のマツダ車:テルスターワゴン(フォード)

北米におけるNAロードスター(Miata)最終限定車として設定されたのが「Mエディション」シリーズの最後期モデルです。専用のボディカラー「Marina Green」に塗られており、色味としてはネオグリーンへマイカフレークを加えたイメージが近しいです。

日本語のカラーコードでは「マリーナグリーン」と表記され、これはNA6の「マリナブルー」を意識した色名であるところが面白いですよね。なお、専用アルミホイールは後にNBロードスターNR-A用(後期型純正15インチ)として復活します。

なお、国内のマツダ車では設定されていないカラーであり、当時の親会社フォード(マツダが組み立てていた)用に設定されていた緑色となります。国内ではテルスターワゴン(カペラの兄弟車)などで見かけることができました。

NBロードスターの「緑」5色


NB1~4:グレースグリーンマイカ(Grace Emerald Green)【18J】:カタログカラー
同色のマツダ車:カペラ、ファミリア、デミオ、ミレーニア、アテンザスポーツワゴン

グレースグリーンマイカは海外名「Emerald Mica」の通り、宝石のような輝きを持つボディカラーです。

NBロードスターのオーガニックシェイプ(オーガニックフォーム)デザインにマッチする深く美しい緑色であり、先代Vスペシャルの後継になる「VS」グレード専用のボディカラーです。※NB後期のカスタマイズモデルWebTunedでは全ての仕様にグレースグリーンを組み合わせることが可能。

NBロードスターは専用色「エボリューションオレンジマイカ」がテーマカラーとして開発されましたが、このグレースグリーンマイカもNBロードスター用に開発されており、もうひとつのテーマカラーとして設定されています。色味としては先代「ネオグリーン」の彩度を上げ、マイカフレークによる色気と上質感が加わりました。陰に入ると暗く見えるのが難点ではありますが、太陽光が映える場面では無敵のカッコよさを誇ります。

実は、国内のNBロードスターでは約11%(3,203台)と最も流通した色で、NB1からNB4まで引き継がれた息の長いボディカラーでした。


NB2:ブリティッシュレーシンググリーン(British Racing Green)【A3V】:国内未導入

北米NB2の限定車「MX-5 Miata Special Edition(MiataSE)」シリーズに用意されたボディカラーで、色味は「ネオグリーン」そのものです。クリアコートが施されたことで、カラーコードもアップデートされました。

ちなみに、A3系としてリファインされたマツダボディカラーは「ピュアホワイト(白)」「クラシックレッド(赤)」「ブリリアントブラック(黒)」があり、これら全てがNBロードスターにおいてカタログ入りしていますが、残念ながら国内における「ネオグリーン」の設定はありませんでした。

北米限定車は「VS」グレード以上に先代「Vスペシャル」をリスペクトしている架装で、タンレザーやウッドインテリアに加え、先代「VスペシャルⅡ」と同じメッキ加飾された16インチホイールが装着されています。純正16インチのメッキも国内では設定されませんでしたね。


NB3:スプラッシュグリーンマイカ(Splash Green)【25R】:カタログカラー
同色のマツダ車:デミオスポルト

スプラッシュグリーンマイカはNB3ロードスター(後期型)に1年のみ設定された色です。カタログモデルでありながら限定車よりも流通が少ない、74台しか存在しないレアなボディカラーです。(国内NB販売の0.2%))

実は、専用開発ではなく2代目デミオのスポーツグレード「スポルト」のテーマカラーとして開発された色で、ミントグリーンのような派手な色味は、どんな暗い場所でも際立つ眩しい緑色です。明度が高いからかマイカ塗装であってもソリッドカラーのようにボディの抑揚は目立ちませんでした。

当時は不人気でしたが、この派手さはポルシェのミントグリーンやウィンブルドングリーンメタリックに通づるものがあり、登場が少し早かったのでしょう。

よく、NB2ロードスターに設定された「クリスタルブルーメタリック(空色)」と混同されますが、実車を比較すると印象が異なると思います。なお、クリスタルブルーは2002年のトレンドカラーとして設定されましたが、翌年(2003年)はミントグリーン系がトレンドカラーに設定され、クルマに関わらず携帯電話(ガラケー)等でよく見かける色でした。

また、スプラッシュグリーンは標準(ファブリック)もしくは「VSコンビネーションA(黒革)」のみしか選択できず、「VSコンビネーションB(ベージュ)」や「RSⅡ(赤)」などの明るい内装が設定できませんでした。※WebTunedは別

参考リンク→https://mx-5nb.com/2020/04/17/splash-green/


NB3:セリオンシルバーメタリック(Cerrion Silver)【24V】:限定カラー
同色のマツダ車:デミオ、MPV

セリオンシルバーメタリックは世界統一仕様のNBロードスター限定車に用意されたボディカラーで、国内では「SGリミテッド」に設定されました。

ちなみに「SG」とは、ボディカラーの特徴通り「Silver Green」の頭文字から取っていると思われます。「Cerrion Silver」のセリオンとはスペイン語で「氷柱」および「神格的」という意味を持ちます。つまり荘厳な銀色・・・と解釈することができ、世間的にも珍しい「緑がかった銀色」でした。

また、SGリミテッドは「RS(1800cc)」「NR-A(1600cc)」と走りに振ったグレードがベースとなるお得感のある限定車でしたが、NBロードスターのモデル末期に設定されたこともあり、ディーラーの「目玉セール広告」にレギュラー掲載され続ける不人気車でした。しかし、結果として生き残っている個体は希少な後期型ということもあり、大切に乗られている印象です。


NB4:ノルディックグリーンマイカ(Nordic Green)【27C】:カタログカラー
同色のマツダ車:RX-8、アテンザセダン、アクセラ、NCロードスター

NBロードスター最後期となるNB4シリーズにおいて、最後の最後に「グレースグリーン」と入れ替わりで設定されたのがノルディックグリーンマイカです。立ち位置はグレースグリーンと同じく基本的に「VS」グレード系の専用設定ですが、トーン(明度)をかなり落とした感じで「光が当たる緑色」である激シブな色味になっています。

また、モデル最後期だったこともあり国内流通数は34台とNBロードスターとして激レアな存在です。ただし、NBロードスターとして設定されていないだけで、当時のマツダ車でもカタログカラーとして設定されていた、由緒正しい背景も持っています。

参考リンク→https://mx-5nb.com/2019/12/07/green-nb/

NCロードスターの「緑」3色


NC1:ノルディックグリーンマイカ(Nordic Green)【27C】:カタログカラー
同色のマツダ車:RX-8、アテンザセダン、アクセラ、NBロードスター

ノルディックグリーンマイカはNBロードスターからキャリーオーバーされたカタログカラー。ただし、それまでの緑色と異なり「VS」グレード専用のカラーではなく、あくまでラインナップのひとつとしての位置づけられました。

理由としては、モダン寄りのデザインになったNCロードスターの「VS」グレードのインテリアはNA/NBロードスターの明るい色(タン/ベージュ)からサドルタンに変更されたことによるものです。したがって、NCロードスター「VS」グレードにおける推奨テーマカラーは、新たに開発された「カッパーレッド(濃赤)」「マーブルホワイト」になっています。

また「緑色」自体も当時のカラートレンドからニッチな存在になっており、NCロードスターのデビューから1年後にノルディックグリーンマイカは(ウイニングブルーメタリックと同時に)一旦カタログ落ちしてしまいます。

なお、ブリティッシュライトウェイトスポーツ由来のウッドインテリアもNCロードスターではオプション扱いとなっており、そういったコーディネートが流行らなくなっていました。ウッドインテリア自体、事故の際に割れて「ささくれ」が起こる危険性が懸念されており、ナルディの経営不振にも繋がっていて・・・など、不運も重なっていた背景もあります。

でも、一周回ってレトロモダンなNCロードスターにはとても似合う、とても素敵な緑色といえるのではないでしょうか。


NC1:ハイランドグリーンマイカ(Highland Green)【35K】:カタログカラー
同色のマツダ車:ベリーサ、ボンゴバン

ハイランドグリーンマイカはカタログ落ちしたノルディックグリーンマイカに間をおいて、再びカタログ入りした緑色のボディカラーです。その色味はNBロードスターの「グレースグリーンマイカ」をリファインしたもので、分かりやすい深緑が復活しました。

また、ハイランドグリーンマイカはNCロードスターの上質さを訴求した限定車「ブレイズエディション」「プレステージエディション」にも設定されています。特に、ブレイズエディションは同時に「ラディアントエボニーマイカ(ワインレッド)」も用意され、インテリアにサンドベージュ(明るい内装)を採用していることからNAロードスターのVRリミテッド、NBロードスターのVSコンビネーションシリーズを復活させた限定車でした。

一方でプレステージエディションは、ブラック本革内装といった「大人のロードスター」を演出してくれました。しかし、これ以降のカタログカラーにおける「ロードスターの緑色」は一旦途絶えることになります。


NC2:スピリティッドグリーンメタリック(Spirited Green)【36A】:限定カラー
同色のマツダ車:デミオ

NC2ロードスターのモデル末期の限定車「ブラックチューンド」に設定されたのが、ロードスター史上もっとも鮮やかな緑といえるスピリティッドグリーンメタリックです。この色は3代目デミオのテーマカラーとして開発されたビビッドな色味が特徴で、ロードスターの採用にファンは驚きました。

ちなみに、この限定車はそれまでボディ同色だったRHTのハードトップを初めて「黒く」塗装したモデルであり、後にRHT定番のモデファイとして定着しています。また世界統一仕様の限定車で、欧州では「SPORT BLACK」「Karai」として提供されました。

もともとNC2ロードスターは「サンフラワーイエロー(黄色)」など、スポーツカーらしい攻めたボディカラーを積極採用していましたが、リーマンショックや東日本大震災などの影響でスポーツカー不毛の時代を迎えてしまい、結果を残すことができませんでした。

NDロードスターの「緑」1色

NC3ロードスター以降はフォード資本から離れたマツダの経営再建時期であり、開発資源の集中が行われたことによるものです。特にブランド再建のメインテーマとして設定された「魂動(コドウ)デザイン」商品群にマッチする色味が集中して開発されていきました。

NDロードスターを始めとして魂動デザインでは、ソリッドカラーよりも「パール」「マイカ」「メタリック」など、色っぽいボディラインが際立つキラキラした色がベストマッチであることは明白で、さらに世界のトレンドカラーにおいて「緑色」はかつてほどのニーズがなくなっていました。

そのようななか、10年以上ぶりに面白い「緑色」がカタログ入りしました。


ND:ジルコンサンドメタリック(Zircon Sand Metallic)【48T】カタログカラー
同色のマツダ車:CX-5、CX-30、MAZDA3

もともとはマツダの屋台骨となるCX-5のマイナーチェンジ時に追加された色で、「ジルコンサンド」とは鉱物がゆっくり削られてできる自然の砂であり、工業用として鋳型に使われるものです。CX-5に設定された特別仕様車「フィールドジャーニー」用に設定された、オフロードをイメージしたいわゆるアースカラーです。

2022年末のマイナーチェンジモデル(2023年モデル)において、ロードスターにもカタログカラーとしてジルコンサンドメタリックが採用されました。

その色味は明るい場所ではベージュのように見えますが、影が差すとカーキやオリーブっぽい緑色になる、表情の幅を持っているのが特徴で、メタリックという名は付いていますが反射成分は少ないソリッドカラーの印象に近しく(ポリメタルグレーメタリックと同じエッセンス)、スポーティなイメージが強いロードスターにまさかのアースカラーというセンスが効いています。

面白いのは、ロードスターからさらにCX-30やMAZDA3に派生し、「レトロスポーツエディション」という限定車でジルコンサンドメタリックは逆採用されています。あくまで緑色のエッセンスが入っているくらいかもしれませんが、魂動デザインでも緑色は似合うことが証明された、偉大なボディカラーになるでしょう。

実は、これまでのロードスターの緑色は基本的に「専用色」は少なく、多くは他マツダ車から色を借りていた状況がありました。しかし、赤、グレーと凄い色を開発したのですから、デザインチームが「緑」を視野に入れていないとは思えません。純然たる「魂動グリーン」は今後の視野に入っていると信じましょう。

2024年モデル(ND2(※ND3))ではNAロードスター「Vスペシャル」をリスペクトした特別仕様車「Vセレクション」も用意されました。そうなると、明るい内装の濃緑色のロードスター見たいですよね・・・!そんな妄想をふまえての、現時点での緑色のロードスターのご紹介でした。
※北米では2024年マイナーチェンジモデルを「ND3」としています

関連情報→

エレガントなロードスター「VS」

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