2代目ロードスター生誕25周年特別イベント(inマツダミュージアム)

2代目ロードスター生誕25周年特別イベント(inマツダミュージアム)

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マツダミュージアム 2023年10月土曜日特別開館レポート from テンサン

~2代目ロードスター生誕25周年特別イベント~
貴島孝雄元主査特別トークセッション

はじめに

初めまして広島在住のマツダ好きテンサンと申します。

今回NBロードスターアーカイブ主催者様が関東からのご来場が難しいということで、広島在住の私がレポートすることになりました。不慣れな文章にてお送りさせて頂きます事をご容赦頂ければ幸いです。

まずNBロードスターにお乗りの皆様25周年おめでとうございます!

ブログの主催者様ともお話していたのですが、マツダ本社がNBを主に扱うイベントはこれが初めてであろうということから、今回のイベントの詳細をできるだけ余すことなくレポートさせていただこうと思っています。

マツダミュージアム土曜日特別開館について


※特別展示 MX-81

「マツダミュージアム」とはそもそもマツダ株式会社内にある社内ミュージアムで、2022年5月にリニューアルが行われました。普段は平日のみ開館しているのですが、より多くの方にマツダ車に触れて頂きたいとのミュージアム職員さんの思いから、月に1度(第一土曜日)に特別開館が始まりました。

 
熱心な職員の方が多く、特別開館日にはその都度テーマを決めて企画が行われており、今後も様々なマツダ車の「周年イベント」を考えられているとのことです。ご興味のある方は是非チェックしてみて下さい。

マツダミュージアムURL:https://www.mazda.com/ja/about/museum/


もちろんマツダの歴史だけでなく、自動車開発の企画はどういう風に進めるのか、自動車はどうやって生産されるのか、未来に向けてマツダはどの様に考えているのかなど様々な展示もあります。皆様も機会があれば訪れてみてはいかがでしょうか?

2代目ロードスター生誕25周年・イベント展示物


1.ポスター展示
なんでも当時実際に掲示されていたポスターだそうで、捨てるのなら・・・と回収して大切に保管されていたもの。保管状態がすこぶる良好でした。
 
 

2.秘蔵映像

・NB1イメージビデオ
素敵なお兄さんが素敵なお姉さんを迎えに行って、サンフランシスコ内を走る映像。販売促進用VHSの冒頭と同じ。

 
・教育用VHS
これは販売促進用VHS内、中間辺りの映像で貴島元主査以下担当者のインタービューが流れるあたりまでは同じなのですが・・・社内テストドライバーによりFIATバルケッタ、MGF、BMW Z3を三次試験で比較試乗を行い、それぞれのレイアウトに対してNBのどういった点に優位性があるのかを語る場面と、紋別試験場でのABSテストにおいて黒いハードトップをかぶせた黄色いNBが映っていた場面は、どうやら販売促進用VHSからはカットされたシーンのようでした。

・面白いほど楽しめる
自動車ジャーナリスト伏木 悦郎氏が三次試験場にて試乗を行いながら評論するもの。

・NRリミテッド(1999年12月)
NRリミテッドが発売された際の商品紹介映像


3.生産台数500,000th記念車

私が当日最大の興味をそそられたのが、この”ロードスター累計生産50万台記念車”。

新車同様ですが社内の「陽の当たらない場所」で保管されており、残念ながら不動となっていたそう。しかし、今回のイベントに合わせてミュージアムの車両管理部門にて、問題のあった燃料系の部品を総取り換えして実動できる様にしたそうです。気合入っています。

当日はレストアを担当された方にお話を聞く事が出来たのですが、他の保管車両達も順次できるだけ量産ラインオフ状態に戻す活動をされているとの事。また、社員が実際に車を動かし社内で技術の温故知新を図れるような環境を作っていきたいとも話されていました。今後にも注目ですね。


さて話を戻しましょう。なぜこの記念車に興味があるかと申しますと、第32回東京モーターショーに展示されていた車そのものではないかと私は思っているからです。

以前から似ているなと思っておりましたが公式の写真、又は雑誌からはわからず、前回展示された際には手を触れることができなかった為、不明点が多く存在しておりました。


しかし今回は幸運なことに乗り込み可でした!

ドア部の車両識別シールを確認する事に成功し、なんと車台番号の下四桁が0009番(!)の1.6リッターのNB6である事が判明しました。ここでリコール情報を遡ると一番浅い番号のリコール情報が下四桁0014~になっておりNB販売直前のマツダ社内箱入り車で間違いないようです。

また、NB発売(1998/1/8)前年の東京モーターショーモデル(1997/10月下旬)の特徴を調べなおすと・・・下記が装着されておりました。

・NARDI社製本革巻きハンドル
・BOSEサウンドシステム+FM/AM電子チューナー付きCDデッキ
・15インチアルミホイール

メーターから1.6リッター車と推測できるのですが、1.6リッター車では通常設定されていないNARDI社製本革巻きハンドルと15インチアルミホイールの装着が特徴的でした。

 
ショーモデルと50万台記念車を比較すると、見た目の違いは14インチアルミホイールに変更されている事で、50万台記念車の作成に当たり何らかの理由で組み替えられたのではないかと考えています。


さらに、今回の秘蔵映像内にも何度か「この個体」であろう車体が映り込んでいる事が確認できました。

参考→https://mx-5nb.com/2021/06/21/memorial-vehicle/

貴島孝雄元主査 特別トークセッション


元NDロードスター広報担当の方とのセッションという形でお話が進んでいきました。

まずは貴島氏の経歴の紹介がありました。1967年に入社後、最初は商用車部門へ配属されたそうです。当時マツダにはスポーツカー部門が無く「乗用車部門でやるから来なさい」との話に、商用車部門が「貴島はやらん、商用車部門でやるからスポーツカーの仕事を回せ」となり、「タイタン」と「RX-7(SA22C)」を同時にやる奇妙な事になったと笑ってらっしゃいました。

歴史を知ってNBを知る ~感性価値のある車~

次に貴島氏は入社時のマツダの雰囲気を語ると同時に、1986年にアメリカでマツダ株式会社 山本健一元社長が提唱された”感性工学”を紹介されました。

当時の大量生産大量消費からの次のステップとして”クルマ造りはもっと人の感性に歩み寄る必要がある”という言葉があり、これがのちに”人車一体”改め”人馬一体”というスローガンになり、今日のマツダブランド(人間中心のモノづくり)の感性価値につながっていると。

そしてこう続けました。

NAの主査である平井さんはマツダが経営不振だった時代に(1978~80年)石川マツダへセールスに行っていた際、3ヶ月全くマツダ車が売れない。さらには「トヨタではこの車がこのぐらい割引してくれる、日産ではこのくらい、じゃあマツダは?」という会話が何度もあったそうで・・・

このような値引き販売では先がない、お客様の感性へ訴えかける車を作らないといけないと痛感し、本社に戻られた平井氏は社内のプロジェクトに”オープンカー”を提出されたそうです。

これがのちに・・・「だれもが、幸せになれる ほんの少しの勇気を持てば」というNAの名キャッチコピーにつながったと振り返られていました。

またこの車を買うことで、車がメディアとなり(この場合はつなぎ役といった意味合い)他のオーナーともつながって楽しめることができ、これも感性価値となっているから大事にしたかったと、おっしゃられていました。


NB主査へ ~無駄を省いて贅沢~

貴島氏は入社時の新入社員講話で【松田家の経営理念】に感銘を受けられたそうで、退社をした今でも大切にされているそうです。

・無駄を省いて贅沢
→例:小さくなった固形石鹸を新しい固形石鹸にくっつけて使うことで、少しでも無駄を省き、省いた無駄でより良いものを使おう。

・お茶で十ぺん、酒で一ぺん
→何度もお茶を飲んで話をするよりも酒を飲んで腹を割って一度話した方がお互いになんでも話しやすく交渉しやすい。

・自分を信じ、相手を信じ、天を信じる

話をロードスターに戻します。感性価値を持ったNAロードスターも自動車という商品の特性上「新たなモデル」にバトンタッチする時期がやって来ました。当時のマツダは、バブル経済の波に乗りシェア拡大をもくろんだ「多チャンネル戦略」で新たな車を開発・販売に多額の資金をつぎ込んでいた所、バブルが崩壊。車が全く売れずマツダは倒産寸前まで追い込まれます。そんなマツダの経営再建に乗り出したのがアメリカの自動車会社フォードです。

新たな外国人社長や役員がマツダに送り込まれ、ヘンリー・ウォレス、ジェームズ・ミラー、マーク・フィールズ社長などの”Change or Die(変革か死か)”の号令の下、厳しいコストカット、仕事の進め方の変革、同時通訳による会議など様々な変化が起こっていました。

そんな荒浪の中、貴島氏は45万台売り上げた初代ロードスターの2代目主査を任される事となりました。主査になった当時の回想をされてましたが・・・下記のように、当初からできるだけNAを変えないような方向で考ていたそうです。

・売れた次の世代は失敗することが多く正直何も変えたくない。

・リトラクタブル式ヘッドライトは新たな法規である視認性要件のある国(注:簡単にいうと運転席からの視界でライトが邪魔ですよという法律)の法規制向けのみ作り分けて、固定式と併売したらどうか?

・韓国で作ろうか。(その当時関係のあった起亜産業(現KIA)の事だと思われます。)

その上で貴島氏はNBをこんな車にしようと考えました。

・まずは数値目標としてNAの7割(28万台)売ろう。

・NAをベースとして進化を行い、より楽しい+〇〇を実現させよう。
→例:NAのトランクルームは応急タイヤとバッテリーがあって旅行の際荷物が入っても+アルファでお土産が入らない。だからバッテリーや応急タイヤを隠してお土産を入れられる様にして、より楽しいトランクルームを作ろう! 

・運転する楽しみ、所有する楽しみ、使用する楽しみこれらを”Lots of Fun”として実現させよう。

・楽しい車はリピートしたい。
→NAが20年間乗れるとした時にNBで頑張ってシリーズを続け、7年サイクルで3世代21年続ければ楽しさの”おかわり”ができる。(後年NDで実現する)


そして開発されたNBですが、完成を記念して開かれたパーティーにて、当時かなり厳しいことで有名だったフォードから来た財務担当ゲイリー・へクスター氏から下記のように絶賛されたそうです。

顧客は自分の買える車の上限が、例えば300万円だとするとその中で車種を選択する傾向がある。そこに世間の相場観が300万円の車にアルミのボンネットを採用したので350万円に成りました!というのは自動車会社のエゴだ!しかしNBはそこをうまくやっている。

NAをブラッシュアップし、足掛け16年間のロングランとなったNBロードスターはまさに、”無駄を省いて贅沢”な車だったのです。

トークショーの終わりに


これはNC開発時の話ですが・・・と、エピソードを披露されました。

日本カーオブザイヤーを取った際にわざわざトロフィーをもって委員の方が広島まで来られたそうです。その際「原爆から復興を遂げたこの広島という平和都市から、平和じゃないと乗れないオープンカーが誕生したことが素晴らしい。」委員の方がそうおっしゃったそうです。

その言葉を聞いて携わってよかったと感じられたと同時に”広島から幸せを世界に!”と思われたそうです。

最後は「毛籠代表取締役社長兼CEOの「走る歓び」を進化させ続け、お客様の「生きる歓び」を通じて社会に貢献してまいります」という言葉で、NBの開発秘話だけで無く、感性価値の高い車の開発を通じてマツダの過去から未来へという所に結びつけられて、トークショーを締められていました。


トークショーこぼればなし①
毛籠氏、実はNBの副主査をやられていた人物で10周年記念車はこの方の発案。

バランス取りしたエンジンや特別製の時計を付ける、シリアルナンバーを付けてなど色々な特別感の演出を考えられたのはまさにこの方。しかし量産しているエンジンパーツからバランス取りしたエンジンを組上げるという、かなりハードルの高い企画に対し、のちにフォード傘下になって初めての社内生え抜き社長となる井巻氏(当時は生産技術)に「趣味でクルマを作るな!」と言われたそう。

トークショーこぼればなし②
最後の最後に司会の方からぽろっと「レストアプロジェクトも・・・」との発言がありトークショー後に突撃。結論から言うと、NBのレストアプロジェクトの構想はあり、現存台数の調査も行っているがNA・FDのレストアプロジェクトでリソースがいっぱいであり、今のところ難しいとの回答でした。

私の聞き及んでいるところによると、NAのレストアプロジェクトは総額400万程かかり14台程度が完成、FDのレストアプロジェクトについては現在価格等の検討中、その他熱狂的ファンのいる車種からもレストアプロジェクトの熱烈ラブコールがあるとのことでした。

あくまで個人的な意見ですが、企業としてバランスを取りながらの車種選定となるとは思いますが、NAからの”無駄を省いて贅沢”な車かつNBも25周年経過しシャキッと仕上げたNBで”喜びのおかわり”と行きたいところですね。

質疑応答でのやりとり


Q1.NBの無駄を省いて贅沢な部分は他にもありますか?
A.幌の窓をビニールからガラスにしたうえで軽量化をした事。


Q2.NBの負けないところを教えて
A.その質問待ってました!2003年イギリスの雑誌でベストハンドリング賞をポルシェGT3を抑えて受賞した事。理由がGT3はサーキットに持ち込まないと真価を発揮できないが、NBはお買い物のさえも楽しくさせるということが授賞理由なのが特にうれしかった。

参考→https://mx-5nb.com/2019/11/13/besthandling/


Q3.クーペとターボについて教えて
※実は午前回・午後回ともに出た質問。みんな気になる・・・

A.ターボについて
アメリカの販売担当者がレース好きでロードスターはパワーがないから勝てない、こちらで1万台売るのでターボを付けてほしい。というのが発端だったそうです。それではターボは付けるけどトルクはそのままパワーだけ上げるから、後は好きにしなさいとの返事をして開発されたんだとか。

結果7000台売れ (販売台数の予測からするとまさに7割なので善戦ですね)、さらにその後のNCの開発の際、2リッターに変更するにあたりノウハウを生かせたそうです。


A.クーペについて
正直私は関わっていないのでよくわからない(一瞬会場がどよめく)。マツダE&T(マツダのグループ会社)でNAのデザインに関わられていた福田さんがデザインして作られた。

・少量生産のノウハウに関するスタディ
・セキュリティーの強化

これらを検討をするのが主な目的だったそうです。本来ロードスターは屋根が無くても剛性が出る様に設計してあるのでオーバークオリティーともおしゃっていらっしゃいました・・・

あとがき


テンサンでございます。不慣れな文章だったのですが、少しは伝えることができましたでしょうか?改めてNBロードスターにお乗りの皆様25周年おめでとうございます!そして個人的なお話で大変恐縮なのですが、以前私もNB6シリーズ1のエボリューションオレンジに乗っていた時期(約7年間)がありました。

その購入に至ったきっかけというのが、幼稚園ごろに初めてのマツダミュージアム見学で新型車のNBロードスターを目にしたことであり、ハタチになったら乗ろうとせっせとお金をためて購入したのでした。なので今回25周年をまたマツダミュージアムで祝うことになったのは不思議な気持ちでした。

四半世紀が立ったNBとオーナー様の皆様にこれからもたくさんの思い出と幸多からんことを。次は50周年でお会いしましょう。以上広島からテンサンでした。

2023年10月7日土曜日 マツダミュージアムにて

Writing
.3(テンサン):@TI96973459
https://twitter.com/TI96973459

Special Thanks
deeplights(こー)さん:@DeeplightsR
はるすけさん:@haru0214suke

関連情報→

NB20周年ミーティング参加レポート(2018)

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