NB Roadster Meeting 貴島さん講演要約(2016)

NB Roadster Meeting 貴島さん講演要約(2016)

2016年1月10日にMRYで開催されたNBロードスターミーティング。そこでマツダロードスターの二代目主査、貴島孝雄さんに講演をいただきました。その内容を要約したものを掲載させていただきます。若干の意訳が入っているので「内容が違う」と思われた方はご指摘ください!

貴島さんは初代NA6ロードスターの開発からNA8、NB、NCの主査と、三世代続けてご担当されてきたので、とてもロードスター愛に溢れた内容でした。一部内容は今までのメディア等で発信されていた内容と重複する事はご了承ください。

人馬一体とは


人馬一体のルーツは1983年代に山本社長(当時)が発表した「感性エンジニアリング」にある。その意図は、機械をただの消費資材でなく、長く使って愛着の湧くような道具にする・・・という考え方である。使い捨ての製品には抱かない感情がわくような商品、形はなくてもいつまでも心に残るような製品、それらを生み出す技術。それがマツダの考え方、ひいてはロードスターの開発に理念として生かされている。

初代から続く「人馬一体」のコンセプトは、NBロードスターリリース当時に、それなりに有名な評論家の方から「もう古い」というご指摘もあったが、私たちは揺るがなかった。

ロードスターの操舵イメージは流鏑馬(やぶさめ)にあり、走る馬を操舵しながら矢を放つ、その姿にある。

後にデミオやアテンザの主査からも「人馬一体」をどうやって作り込んでいくか、相談をされていた。もちろんFFとFRでの挙動の違いはあれど、そのクルマの用途に準じた「人馬一体」が必ず存在する。そして、この考えは「Zoom−Zoom」や「Be a Driver」といった現在のマツダから発信される言葉に引き継がれる。(※魂動デザインのコンセプトは、まさに感性エンジニアリング)

昨年(2015年)トヨタとマツダの業務提携発表があったが、その際に豊田章夫社長から「マツダは人馬一体」の言葉をいただき、このコンセプトは外から見ても浸透されたのだと実感している。

NBロードスターの開発主旨


ロードスターは3代目RX−7の主査をしていた当時、向かいに席にいらした平井さん(初代ロードスター主査)から、ロードスターもよろしくと告げられ、NA8シリーズ2から担当した。当時、RX−7は三代目で終わることが決まっていてエイト(RX−8)の話があったのだが、それは興味がなかった。(※RX−8の最後に主査代行をされています)

また、その流れから二代目ロードスター(NB)を引き受けたのだが、最初の印象は「絶対失敗する、嫌なクジを引いた」だった。そこで迷走せずに立ち返るきっかけになったのが、初代が何故ヒットしたかを「感性エンジニアリング(=愛着を持つ商品をつくる)」に基づいて紐解いていったことだった。

一般的な二代目商品は、初代よりも馬力増強や空間確保、豪華装備などのデコレーションを行い失敗する事が多い。NAロードスターはライトウェイトスポーツの理論に基づいて、愛着が湧くデザインを始め、軽量化のためのアルミ採用や、重量配分の拘りでバッテリーをトランクに乗せるなどを行った。そう考えると、初代に勝つにはキープコンセプトを貫きつつ、より「楽しさ」を進化・追求していく方向性でしかないと考えた。

販売対象に関して、既にNAのファンになっている人は対象外、買い替えを促す必要はないと思った。ロードスターのそもそもの志は、旧ライトウェイトスポーツを、現在の技術で復活させること。レストアをするのが困難ならば、新車を・・・という想いから始まったからだ。したがって、レストアの必要ないNAオーナーに対してNBを購入してくれとは言ったことがない。

機械的な劣化、もしくは家族や彼女のために最新の安全装備が必要ならば選んでくださいとだけお願いしたのだが、そうしたら営業にとても怒られた・・・数字的なところでは、あれだけ成功した初代の7割売れれば成功だという目標を立てた。

NBロードスターの方向性


二代目ロードスターのフルモデルチェンジの理由は、当時のリトラクタブル・ヘッドライトが欧州の配光基準に適さなくなることを受けてだった。そのまま販売するために、中国に製造拠点を置いてコストを下げ、ヨーロッパでは売らないとか様々な案があったのだが、現実的でなかったので全て刷新した。

すると、アメリカから送られてきたのが2.5リッターのバカでかいコンセプトモデルで、これを林浩一デザイナーにNAロードスターと同じ寸法にリファインしてもらった。(※講演後にお聴きしたのですが、林浩一デザイナーとは同期入社で、戦友であったと仰っていました)

NAとNBは基本的なコンタクトライン(ボディ骨格)は同じであるが、とにかく作り込んだのは「日常の楽しさ」の部分。峠やサーキットだけではなく、使い勝手でも「楽しい」クルマにしたく、例としてはスペアタイヤをフロア下に移動して、ゴルフの43インチヘッドが入るようにトランクサイドの空間をへこませて確保した。実際にゴルフに一人で行くさびしい人はいないかも知れないが・・・

そして、紆余曲折の末完成したNB記念パーティの際に、こっそりとフォード資本側から「NCを作ることが決定した」と告げられた。(※その頃は、貴島さんが三代目を担当する予定はなかった)

NBロードスターの熟成


NBロードスターの想い出としては、モデルサイクル維持のために「10周年記念車」を発表したこと。これはエンジンのピストンを計量し、近似値のものを厳選採用するという作り込みを行い、エンジン屋に文句をいわれた。しかし、このわずかとも思える差がフィーリングを呼び起こす。こういった理論に基づいたものが感性エンジニアリングだ。しかし、厳選されなかったピストンはどこに行ったかというと・・・他のクルマに使用されている。(※エンジン調整をしているのは、国内仕様の10周年記念車のみです)

そしてNBロードスターは2003年、欧州でポルシェと競って「ベストハンドリングカー」を受賞した。理由は「ポルシェはサーキットや峠で確かに速いけど、MX−5はどんなステージで乗っても楽しい」という評価を頂いたからだ。それは当然の事で、NBロードスターの基本車体はNAロードスター由来のもので、普通車のモデルサイクルの倍以上、14年以上メカと走りを熟成させることが出来たからで、世界でもそんなことをしているクルマはポルシェかNBロードスターくらいだと思う。

また、NB時代に700,000台まで到達し、当初の目標であったNAからの7割の販売台数を達成する事が出来た。(※NAロードスターは約43万台、NBロードスターは約29万台販売されています)

ロードスターとは


感性という言葉を幾度か使ったが、愛着を持って乗ってもらうためのクルマが「ロードスター」。それはNAからNB、NC、NDとすべて変わらないし、これからもそうあり続けるだろう。

この後、質疑応答に続きます。(次回に続く)

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