3代目MR2「MR-S」アーカイブ

3代目MR2「MR-S」アーカイブ

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4代目MR2が発表間近?


トヨタがGRヤリスやGRカローラのパワートレインを活用して、300ps越えの純ガソリン・ミッドシップスポーツを作る・・・名車「MR2」の名前を冠するかもしれない・・・価格は800万~1000万円。

とても夢のある、そしてある意味では「夢のない」噂が、まことしやかに流れているようです。セットで「セリカ」の復活も流れていますので、この時代に趣味性の高いプロダクトが市場投入されることは、単純に嬉しい企画であると感じます。ただ、繰り返しますが「MR2」の復活とうたわれているようなので、「MR-S」のキャラではないことが示唆されています。

初代「MR2」は、国産車初のミッドシップスポーツとして「トヨタでしかできないクルマ」を志して開発されました。熟成していない市場にいきなりガチスポーツを投入するとコケる可能性もあることから、あえて誰でも気軽に扱える(アフォーダブルな)ライトウェイトスポーツカーとしてデビューしました。そのヒットを横目にして、初代ロードスターはMR2の開拓したセクレタリーカー市場を後追いするためのフォロワーの役割を担っていました。MR2の成功がないとロードスターも存在しなかったかも知れないのです。

しかし、MR2は初代のマイナーチェンジや2代目のフルモデルチェンジにおいてパワーアップを重ねていきます。それは当時の日本車が「全ての分野で世界一を目指した」ことによる影響であり、ことスポーツカーにおいてはモアパワーなことが正義だったからです。当時の自動車は環境規制や安全規制が緩いなかでエンジンがどんどんパワーアップしていき、素人が手に負えないレベルにまで進化したじゃじゃ馬ぶり。そんな当時のMR2にトヨタのエンジニアは「先がない」と判断しました。


そこでミッドシップスポーツの火を消さないために選んだのは、3代目MR2をライトウェイトスポーツとして原点回帰させることでした。ヤマハ製ターボエンジンから量販車NAエンジン、セリカのシャシーからヴィッツのシャシーへ。(適切な表現ではないかもしれませんが)車格を下げるフルモデルチェンジは当時異例中の異例であり、商品性を高めるためにオープンモデルとなりましたが、MR2の名称では国内市場では受け入れられない可能性を危惧して、国内では「MR-S」と名を変えて1999年にデビューを果たします。※海外では「MR2 Roadster(MR2 3rd GN)」

そこで迎え撃つのは、かつて初代MR2が開拓した市場をかっさらっていたマツダの2代目ロードスター(NB)。近しい馬力、後輪駆動、オープンカー、価格帯・・・分かりやすい異なる要素は、駆動方式とデザインくらい。本当に分かりやすいライバル関係でした。

あれから約25年、振り返れば「MR-S」はビジネス的な観点では厳しい面もありましたが、クルマ自体の評価があまり語られていないことが勿体なく思い・・・有志にご協力を賜っていく代ものMR-Sのステアリングを握らせていただきました。今回はMR-SのガチライバルだったNBロードスター乗りとして、彼らに触れたアーカイブを敬意を持ってご紹介します。

MR-S開発背景


MR-S① 日本初のミッドシップ「MR2(AW型)」
https://mx-5nb.com/2023/08/14/mrs_1/
初代「MX-5(NAロードスター)」の企画は、国産車として「MR2」やホンダ「CR-X」が開拓した、北米向けセクレタリーカー市場に切り込む【名目】がありました。したがって、ライバル対決として捉えると、チャレンジするのは「MR-S」ではなくロードスター側だったのです。


MR-S② ミッドシップ継続のために「MR2(SW型)」
https://mx-5nb.com/2023/08/21/mrs_2/
初代「MR2(AW型)」の販売7割がスーパーチャージャー仕様だったことから、フルモデルチェンジにおいてモアパワーがユーザーニーズに応える正解とされ、2代目「MR2」はライトウェイトから脱皮してミディアムスポーツカーへ進化する道を選びました。具体的な目標スペックはMRレイアウトのトラクションを武器にした「日本一の加速力」へ挑戦することです。


MR-S③ 原点回帰、ライトウェイトスポーツへ
https://mx-5nb.com/2023/08/28/mrs_3/
ミッドシップスポーツが生き残るためにはどうすればいいか。導き出された結果は、「ハイパワーはスープラに任せればいい。スペシャリティはセリカがある。MR2は原点に立ち返ろう」というものでした。営業的な都合でいえば、フルラインナップメーカーであるトヨタにおいて、実質最後のセクレタリーカーとなったサイノスコンバーチブル(1995)とラインナップ統合する意図もあったでしょう。


MR-S④ 新世代LWS、評価は二分した
https://mx-5nb.com/2023/09/04/mr_s4/
軽量化、必要十分なパワー、ライトウェイトスポーツ(オープンカー)、ユーザー層、そして近しい価格帯だったNB型「ロードスター」が相対評価のベンチマークに。しかし、そもそもNBロードスター自体が不人気だったことから「MR-S」は想定外の流れ弾を受けてしまいました。


MR-S⑤ 検証、なぜ売れなかったのか?
https://mx-5nb.com/2023/09/11/mrs_5/
クルマは所有してみないと分からないし、オーナーであれば不便を乗り越えて愛車にするので、当時も今も間違いなく根強いファンは存在しています。それでも商業的に厳しかったのは、いくつかの複合的な要因が類推されます。

MR-Sインプレッション


トヨタ MR-S最終型(ZZW30)試乗記
https://mx-5nb.com/2023/09/18/zzw30_impression/
2007年7月末の「MR-S」生産終了に合わせて設定された特別仕様車「V EDITION・FINAL VERSION」(限定1000台)になります。つまり。「MR-S」の最終型となるこの仕様の特徴は、高級グレード「V EDITION」の装備(レザーパッケージ)とともに、追加架装による質感をバチバチに高めていることです。


トヨタMR-S中期型(ZZW30)SMT仕様 試乗記
https://mx-5nb.com/2023/10/09/zzw30smt_impression/
SMTとはシーケンシャル・マニュアル・トランスミッション(Sequential manual transmission)の略称です。「MR-S」の場合はクラッチ切替の動作が自動化された、いわゆる2ペダルマニュアル車になります。オートマチックトランスミッション(AT)との大きな違いは、基本マニュアル車と同じなので「自分で変速する」必要があります。


トヨタMR-S前期型(ZZW30)サーキット仕様 試乗記
https://mx-5nb.com/2023/10/02/zzw30rs_impression/
通常は最低限の普段使いをしながら、ホームとなるショートサーキットを月次で走り込み、地元の某有名なサーキットは仕上げに年数回走るそうです。基本、それに合わせたセッティングになっているのですが、流石に平日は車高調をソフト寄りの設定にしているそうです。


NBロードスターの競合車(ライバルたち)
https://mx-5nb.com/2023/09/25/nb-rival_all/
ロードスターの競合となるのはライトウェイト、小排気量、オープン、エントリースポーツといったジャンルが中心とされました。事実、当時の日本市場は各メーカーのスポーツ/スペシャリティカーは百花繚乱、ユーザーはいくらでも自分の好みを選択することができた幸せな時代でした。

冒頭に4代目(3代目)「MR2(仮)」のデビューに「夢のない」と書いたのは、ライトウェイトスポーツとして誰でも手が届く(アフォーダブル)に原点回帰したはずの「MR2(MR-S)」が、結局は自らを否定したスーパースポーツの道を選ぼうとしていることです。トヨタの根強いファンが「MR2(仮)」どう捉えるのかは気になるところです。

ただし、同じモアパワーの道を歩んで成功したロードスターの同級生には「シビックタイプR」さんがいます。今の時代、そこまで尖らせないと商品性を持たせることが出来ない可能性もあります。

トヨタの正式発表、楽しみですね・・・!

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