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自宅のアーカイブを整理していたところ、約25年前の「新聞記事」と「織り込みチラシ」が挟まれたスクラップブックを発見しました。まさに、当NBロードスターアーカイブのための情報であり、よくぞこんなものを残していたものだと、我ながら感心せずにはいられません・・・
2000年当時、インターネットはADSL回線がようやく普及を始めた頃。ISDN回線もまだまだ現役で、情報化社会が加速する、まさにその直前の時代でした。したがって、我々のようなクルマ趣味人の情報源は、自動車専門誌などが中心だったのです。それゆえに、新聞やテレビといった一般媒体に、たとえ小さな記事でもロードスターの名が載るだけでも、我がことのように嬉しい時代でした。
正直に申し上げますと、残っていた記事の保存状態は決して良いものではなく、ノイズ交じりでお見苦しい点はご容赦ください。しかし、この紙の質感とインクの匂いから、当時の雰囲気が少しでもお伝えできれば幸いです。
~1999年代 コミュニティ成熟と世界的評価の確立
ロードスター10周年記念MTG記事
当時は全国各地にオーナーによるクラブチーム(愛好会)が設立され、ロードスターを中心としたミーティング文化がまさに花開いていた時期でした。その集大成ともいえるのが、この10周年記念ミーティングです。全国の主要クラブとマツダ自身が連携し、桁違いの約1000台という、同一車種でありながらロードスターがマツダ三次事業所に集結したことは、自動車史に残る壮挙といえるでしょう。
記事にはロードスター開発主査の平井氏や貴島氏だけでなく、当時マツダの社長であり、のちにフォードCEOに就任するマーク・フィールズ氏や、マツダの欧州部門を率いたマーティン・リーチ氏(のちにマセラティCEO、2015年没)の名が連なっていることからも、このクルマがメーカーにとっていかに重要であったかが窺えます。
ロードスター ギネスブック認定
今や累計生産台数100万台を超え、あらためてギネス世界記録を更新したロードスターですが、その第一歩はNB1ロードスターの時代にありました。科の名車MGBを抜いて「世界で最も多く生産された2人乗り小型オープンスポーツカー」としてギネスブックに登録されることが決定したのです。このクルマが世界中のファンに愛され、ライトウェイトスポーツのベンチマークに認定された、記念すべき瞬間でした。
2000年~ 深化するNBロードスターの世界
NB2デビューチラシ
新聞の折り込み広告として配布された、NBロードスターのマイナーチェンジモデル「NB2」のデビューのチラシです。それまで見たことのなかった鮮烈な「クリスタルブルーメタリック」のボディカラーは、先進的かつスポーティさを巧みに表現しており、フェイスリフトして精悍になった顔つきとともに、かなりのインパクトがありました。そして驚くべきは、その価格。183.9万円からという、今では考えられない戦略的な価格設定でした!
参考)https://mx-5nb.com/2019/11/28/crystalblue/
RX-7&ロードスター紹介チラシ
当時のマツダはスポーツカーを2台提供していた、驚きのラインナップ掲載広告です。ロードスターもさることながら、新車のRX-7(FD)が300万円を切っていたいい時代でした。なお、ロードスターはあくまでライト層向けで、本当のマツダ乗りはロータリーであればこそ・・・という風潮がありました。
当時のマツダはスポーツカーを2台も提供しており、今思えば夢のようなラインナップ掲載の広告です。ロードスターもさることながら、孤高のロータリースポーツ、新車のRX-7(FD3S)が300万円を切っていたという事実に、改めて驚かされます。なお、当時は「真のマツダ乗りはロータリーエンジンを選んでこそ」という、ある種のヒエラルキーが存在したことも、懐かしい記憶です。ロードスターはエントリースポーツ扱いだったんです!
参考)https://mx-5nb.com/2019/12/21/second-flag/
NBロードスター YSリミテッドチラシ
若者にも手が届きやすい「Youthful Sports」というコンセプトで販売された限定車「YSリミテッド」は、これまた驚きの価格である179.7万円。かなり安価な設定でありながら、専用装備として与えられたブラックアウトベゼル加工のヘッドランプは、現在でも定番のNBモデファイパーツとして人気を博すことになります。メーカー自らがカスタマイズの方向性を示唆した、興味深い一台です。
NBロードスター「MVリミテッド」記事
「MVリミテッドは」内外装のデザインに針を振った限定車です。その特徴でもあるチタニウムグレーメタリックとブラウン内装をカラー写真で掲載している秀逸な記事になります。なお、この洗練された色味は、後のNCロードスターのテーマカラーとなり、さらにはNDロードスターRFのテーマカラーにも引き継がれた、まさに王道なコーディネートの源流といえます。
参考)https://mx-5nb.com/2020/02/04/mx5-gray/
マツダスピードロードスター記事
一度は表舞台から消滅したかに思えたものの、ファンの熱い要望に応えてブランド復活を遂げたマツダスピード。その名前を冠して、ファミリアセダンとNBロードスターのチューニングモデルが発表されました。なお、マツダスピードロードスターが正式名称ですが記事では「マツダ」が省かれて、「スピードロードスター」と記載されているのが面白いところです。このネタを知っている方は、相当なマツダ通でしょう・・・
参考)https://mx-5nb.com/2020/04/06/mps-all/
NBロードスター・ローンチラシ
憧れのロードスターが頭金なし・月1万円で乗ることができる!(ボーナス払いは別途)といった、時代を感じさせる内容です。実は当時、この広告を「テンロク(1600㏄)じゃないか」と冷ややかに見ていましたことを白状しますが、NBで一番売れたのはこの軽快なテンロクモデルであり、私自身も現在その恩恵を十二分に受けているので・・・見事にブーメランが突き刺さる、自戒の念を込めて見返す広告です。
2002年~ 熟成と挑戦
NB3発表・新聞記事1
排ガス規制に対応したNB3ロードスターのデビュー記事です。テーマカラーの「スプラッシュグリーンマイカ」がカラー掲載され、その鮮烈な色合いに心を躍らせたことが記憶に残っています。しかし、NB2で人気色だったクリスタルブルーメタリックとは正反対に、この個性的なカラーは市場では受け入れられず、結果的には超不人気色(レアカラー)になってしまいました。こんな色を選択するのは、よほどのモノ好きでしょう(私です)。
NB3発表・新聞記事2
同じくNB3のデビューの記事です。「VSコンビネーションB」といったグレード名が設定された記載がありますが、ロードスター乗りでなければ全くイメージが湧かないであろう、このマニアックな説明が逆に熱い内容です。なお、カタログのベースグレードは価格据え置きの183.9万円でした。企業努力に頭が下がる思いです。(※WebTunedはさらに安い)
NBロードスター「SGリミテッド」記事
走りのグレード(RS&NR-A)をベースに専用の内外装と装備を与えた、実はとってもお得な仕様で発表された限定車「SGリミテッド」のデビュー記事です。しかし、モデル末期、多数のライバル車種があるなかで地味なイメージからか、販売当時は苦戦を強いられ、のちにディーラーチラシの片隅に大特価で掲載される運命をたどります。ですが、その価値を理解したオーナーに愛された結果、存命率が高い面白い経歴を持つ限定車です。
2003年~ 伝説の終焉、そして新たな序章へ
マツダ・カスタムカー生産記事
今では絶対にありえない「大量生産は望めないが、ニッチな市場のためにカスタムカー事業を行う」という、自動車メーカーでは考えられないような内容が、この記事の衝撃を物語っています。それくらい、当時のカスタムカー文化には熱い火が付いていて、この勢いが、NAロードスターの時代からの悲願であった「ロードスタークーペ」の生産にGOサインが出ることになりました。
NB「ロードスタークーペ」デビュー記事
ついに販売開始した「ロードスタークーペ」。しかし、モデル末期だったNBロードスターの不人気と、強気な価格設定とにより結果は商業的には厳しいものでしたが、その極めて少ない生産台数ゆえに、今やクーペは中古車市場で高騰。唯一無二の美しいシルエットを持つ、伝説の一台として語り継がれています。
参考)https://mx-5nb.com/2020/08/10/coupe-all/
NB4ロードスター&クーペチラシ
最終型「NB4」ロードスターのテーマカラー「チタニウムグレーメタリックII」と、ロードスタークーペ(タイプA)が並んで掲載されている広告です。DHT(ハードトップ)はオプションという記載があるとはいえ、クーペボディっぽいロードスターが185万円と記載される横に、純然たるクーペが310万円というのは、あまり上手い掲載方法ではない気がします・・・なお、同時期にデビューを飾った新世代ロータリースポーツ「RX-8」は、約240万円から買えたという事実も、クーペの立ち位置を難しくした一因でしょう。
NB「ロードスターターボ」記事
モデル末期にてまさかの、そして待望の追加グレード!ロードスターMPSは実現しなかったけれど、ターボモデルの販売が行われました。しかも価格はRSグレード+αの257万円というバーゲンプライス!これは、量産効果の見込めないクーペとは違い、北米仕様「Mazdaspeed Miata」の恩恵によるものです。なお、マツダ謹製B型エンジンにターボが搭載されたのは、この「ロードスターターボ」のみです。
モデル末期にてまさかの、そして待望の追加グレード!コンセプトが発表されていた「ロードスターMPS」は実現しなかったけれど、マツダ自身の手によるターボモデルの販売が行われました。しかも価格はRSグレード+αの257万円というバーゲンプライス!これは少量生産のクーペとは違い、北米仕様「Mazdaspeed Miata」と共通モデルになった恩恵によるものです。なお、マツダ謹製B型エンジンにターボが搭載されたのは、WRCを狙っていたBDファミリア以来でした。ただ、この「ロードスターターボ」は新たに専用チューンされた歴史的価値を持っています。
ロードスターターボ&クーペチラシ
現在は両車ともレアすぎてなかなかお目にかかることがないですが、極上の状態であればこの広告価格をはるかに超え、現在はプレミアになっているのが恐ろしいところです。ロードスタークーペのキャッチフレーズ「世界でも希少な2シータースポーツクーペ。」はその言葉通り、国産最後の5ナンバースポーツクーペになりました。
マツダ宇品工場火災記事
マツダファン、そして自動車を愛する者すべてが衝撃を受けた工場火災の一報。幸い人的被害はありませんでしたが、生産ラインの再開は基幹車種を優先することから始まり、完全にモデル末期になっていたNBロードスターは、記事に掲載すらされていません。この火災の結果としてロードスタークーペは生産中止に追い込まれ、NBロードスター自体も静かにその歴史の幕を閉じていくのでした。
そんな歴史の狭間に咲いた、NBロードスターの勇士をご紹介させていただきました。
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